第5弾

ちばてつや × 車いすラグビー

ナレーション/ジェイ・ホーガン 役・安元洋貴さんインタビュー

“やられたけど「うれしい」 爽やかな感情を見ました”

「アニ×パラ」第5弾、「ちばてつや×車いすラグビー」の出演オファーを受けたときは、どんな思いでしたか。

安元 光栄だったのと同時に、不思議なご縁を感じました。ついこの間まで、「あしたのジョー」(原作・高森朝雄×画・ちばてつや)の連載50周年記念アニメ「メガロボクス」に参加していたので。「アニ×パラ」でも「メガロボクス」でも、圧倒的な力を持って主人公の前に立ちはだかるキャラクターを演じさせていただきました。

安元さんは個人的にも、ちば先生のファンだそうですね。

安元 うちの親父がちば先生のファンで、「紫電改のタカ」(1963~65年)から「あした天気になあれ」(1981~91年)まで、単行本が家にたくさんあったんです。僕も小さいころから読んでいて、自然とファンになりました。「あしたのジョー」は「メガロボクス」の出演に際して読み直したんですが、本当にかっこよくて、改めてハマりましたね。この作品が嫌いな男の子って、世の中にいないんじゃないかと思います(笑)。
今回の「ちばてつや×車いすラグビー」には、テレビアニメ版「あしたのジョー」を彷彿とさせる“ハーモニー処理”(印象的な一瞬を絵画のような止め絵で見せる演出技法)も出てきておもしろかったですね。昔からのファンも大切にしている作りだなぁと思いました。

今回のアニメでは、車いすラグビーのオーストラリア代表選手であるジェイ・ホーガンを演じましたが、いかがでしたか。

安元 ホーガンは、主人公である日本代表の陸(CV:玉山鉄二)とは敵どうしで、しかも“壊し屋”の異名を持つキャラクター。ですが、彼も一人のアスリートなので、悪者というより“大きな壁”として表現できればと思いました。たとえば、陸のタックルをターンして抜き去る場面では、息づかいの演技を「ハァハァ」ではなく「フンッ」と軽く鼻で笑うだけにしてみたり。ホーガンから余裕が消える後半の展開を印象的にする意味でも、これは採用されてうれしかったです。

後半では、陸がホーガンを抜き去り、さらに雄馬が足止め。ホーガンを焦らせていましたね。

安元 陸と雄馬が、ホーガンという大きな壁を超えた瞬間でしたよね。もちろん、これで勝負が決まったわけではないし、もしかしたらこの1回だけかもしれないけど、とにかく、陸と雄馬のプレーがホーガンに通じた。ホーガンは「負けるわけない」と思ってプレーしていたので、ちょっとあたふたした感じに、息も多めに入れさせてもらいました。5分という短い尺の中で、陸と雄馬が一生懸命に生き、試合の中で成長する様子まで見られてすばらしかったです。

陸にトライを決められたあと、ニッと笑うホーガンの表情も印象的でした。

安元 やられた瞬間は悔しかったと思いますが、「うれしい」に近い感情も芽生えたように見えますよね。陸と雄馬に背負うものや目指すものがあるように、ホーガンにもそれに負けない何かがあるはず。自分に太刀打ちできそうな選手がようやく現れた、と感じ取ったのかもしれません。そのあたりは、スポーツだからこそ生まれる爽やかな感情だなと思い、大事に演じさせてもらいました。近い将来、陸とホーガンはライバルになるかもしれませんよ。

今回のアニメを通じて、安元さんは車いすラグビーにどんな印象を持ちましたか?

安元 まず何より、魅力的なスポーツですよね。そして、普通のラグビー以上に激しい部分もあるなと。この世界に飛び込んだ方は、本当に勇気があると思いました。中にはきっと、陸や雄馬のように交通事故に遭って障害を負った方もいるはずで、車いすをぶつけ合うのはすごく怖かったと思うんですよ。

たしかに、事故のことを思い出すかもしれないですし。

安元 その恐怖を乗り越えてプレーしているのがすごいなと思います。実際には交通事故だけじゃないけど、とにかく、選手一人ひとりが大変な過去を持っている。大きな壁を乗り越えて車いすラグビーをしているというドラマがあるんですよね。そう考えると、ものすごい感動があります。僕は車いすラグビーをすごく見てみたくなりました。

本日は、ありがとうございました。