2011年07月26日 (火)被災地の子どもたちに遊びを
今回は、震災による原発事故の影響で、自由に遊べない状況が続いている子どもたちのための支援の動きについてとりあげます。
■ 原発事故の影響で
福島県内では校庭の使用を自粛する学校が相次ぎました。継続的に放射線量の測定を続けている55の学校についてみてみますと、6月末現在44%にあたる24校が活動を自粛しています。すでに、国が校庭での活動を制限する基準としている1時間当たり3.8マイクロシーベルトを超える学校はなくなりましたが、保護者からの要望などを踏まえ学校独自の判断で校庭を使わないようにしているところも多いようです。1か月ほど前には6割の学校で自粛していましたので、それから比べると徐々に活動を再開しつつありますが、全体としては、一気に再開とまでは至っていません。
■ 子どもたちは不自由な生活を
30度を超える真夏日になる日もある中、長袖にマスクをして通学する子どもたちの姿が数多くみられます。教育委員会では、熱中症やインフルエンザなどの感染症を予防する意味からも、風の強い日に土埃が教室に吹き込まないように配慮さえすれば、例年通り夏服で通学したり、教室の窓を開けて授業をしたりしても構わないと呼びかけています。しかし、まだ窓をあけるのは換気程度にとどめたり、体育の授業を屋内でしたりする学校も多いということです。
■ ストレスのたまる日々を過ごしている子どもたちのために
せめて夏休みぐらいは、精一杯手足を伸ばして遊べるようにしようと支援する動きが広がり始めています。たとえば、子どもたちに夏の間も涼しい北海道で過ごしてもらおうという「ふくしまキッズ」という取り組みは、6月初めに小中学生を対象に200人募集したところ、開始から1時間半で定員に達するほどの人気ぶりでした。この取り組みは、もともと東京のNPOが電力不足が心配される都会の子どもたちに夏休みに北海道で自然体験をしてもらおうと企画していたものですが、原発事故の影響で遊ぶこともままならない子どもたちを支援してほしいという福島のNPOからの働きかけで実現したものです。
■ 200人の募集では、まだ少ない?
福島県にはおよそ17万人の小中学生がいますので、それに比べると少ないと言えます。今回はウエブ上でパソコンや携帯から申し込みを受け付けたのですが、締め切ったあとも申し込みが相次ぎ、600人が順番待ちの状態になっています。北海道南部の大沼公園にあるリゾートのコテージを借り切って1週間単位で、最長5週間まで受け入れる、往復の旅費3万円の負担だけですむ、というのが保護者の気持ちを動かしたようです。運営費は市民からの寄付と受け入れ先となる北海道の七飯町などからの支援でまかなわれますが、寄付の集まり方次第で、200人に限らずできるだけ多くの子どもたちを受け入れたいとしています。
■ 夏休みの企画に参加させたいとき
どうすれば情報が手に入るかが最大の課題です。
「ふくしまキッズ」以外にも、夏休みに被災地の子どもたちを受け入れる企画が相次いでいます。そうした情報を知りたいという人たちのために、文部科学省がようやく重い腰をあげて、ホームページで情報の提供を始めました。福島を中心に被災地の子どもたちを対象にした企画を紹介しています。ホームページには6月末現在60以上の情報が寄せられていて、民間団体が新地町の小学生30人を長野の野尻湖のキャンプに招待したり、京都府が福島の60人の小中学生を無料で招いて京都の文化に触れてもらったりと様々な企画があります。それぞれ家計に負担がかからないように無料にしていたり、往復の交通費だけで受け入れたりしているのが特徴です。ただ、このホームページは、自治体からの情報がおもで、民間団体の情報が網羅されているとは言えません。保護者のニーズに応えるためにもっと積極的に情報を集めてほしいと思います。
■ インターネットが使えない人からすると
どうやって情報を手に入れたらよいのか、その手段がないのが現状です。パソコンがないために情報が手に入らない、申し込みもできないということにならないよう、行政の側には、学校や市町村役場など保護者の立ち寄りやすい場所でプリントアウトしたものが見られるようにしたり、申し込みの手伝いをしてあげたりするなどパソコンの有無で格差が出ない工夫をしてほしいと思います。
子どもたちが、外に出て放射線量を心配せずに自由に遊べるようになるのが本来の姿ではありますが、そうなるまでには時間がかかりそうです。そうした中、ストレスをためているのは原発事故の影響に不安を抱きながら被災地に住み続けることを選んだ家庭のこどもたちです。保護者の中には「子どもだけでも疎開させてほしい」という声が聞かれます。それができないなら、夏休みぐらいは精一杯手足を伸ばして遊べる環境をつくってあげて、リフレッシュして2学期を迎える。せめてそれぐらいのことは、待ちの姿勢ではなく、積極的に、より主体的に取り組むのが国や自治体の責務ではないかと思います。
早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ
教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。
投稿者:解説委員 | 投稿時間:19:00
トラックバック
■この記事へのトラックバック一覧
※トラックバックはありません
コメント
※コメントはありません
