2010年09月27日 (月)増額を実現できるか教育予算


民主党の代表選が終わり、新しい内閣のもとで、年末の予算編成に向けての動きが今後活発化します。今回は、教育予算の中身とその行方について取り上げます。

■来年度の概算要求は

 各省庁からの提出が8月いっぱいで締め切られ、その内容が財務省から9月1日に発表されました。概算要求というのは、各省庁が政策に必要な経費を要望書としてまとめるもので、例年8月ごろに財務省に提出することになっています。これをもとに財務省による査定が行われ、最終的には大臣間の折衝を経て年末に政府案として取りまとめられます。ことしは、社会保障費などをのぞいて今年度予算から一律10%削減の方針が決められ、その枠に従うことを求められました。しかし、政府の経済対策の一環で「元気な日本復活特別枠」が別に設けられ、ムダ使いの削減努力に応じて新たな予算を「要望」できるとされましたので、結局、各省庁からの要求は、この特別枠を使って総額で96兆円あまりと今年度予算を1兆円あまり膨らむ結果となりました。

■そのうちの教育予算は

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 4兆4千億円あまりと2千億円あまり、率にして4.7%の増額要求となりました。縮減が求められた中では大幅とも言える増額です。特別枠をめいっぱい使ったその理由を文部科学省は、「成長の原動力となる『強い人材』を育てることは未来への希望につながるから」と説明しています。また、「人生前半の社会保障」論、つまり若い人たちに向けた投資が若い人たち自身の雇用の確保につながり、その人たちが成長することでよりよき納税者となって、将来の高齢社会を支えることにつながるとする考え方をアピールして、予算を獲得するねらいがあるものとみられます。

■政策の柱は4つ

一つは、少人数学級のスタート。少人数学級への手始めとして、来年度は小学校1・2年生のクラスを今の40人学級から35人学級にするとしています。そのために、全国で8300人の先生を増やす計画です。
二つめは、子どもや若者が安心して学べる環境づくり。教育費負担の軽減策の一環として、高校生への給付型奨学金を新たに設けることにしています。具体的には、家庭の年収が350万円未満の生徒を対象に年額1万8300円を支給する予定です。この額は、生徒一人が教科書を買うための費用に当たるということです。大学生についても、奨学金を受けられるはずなのに受けられない学生の解消をめざすことにしています。
三つめは、大学教育の基盤の充実。経営の基盤となる経費を充実させるとしています。また、政府の新成長戦略で示された「厚みのある人材層の形成」のためとして学生の授業料免除の枠を広げる予定です。
四つめは、安全な学校施設の整備。学校の安全性を確保するために、耐震化を進めるとしています。来年度は5200棟を耐震化し、全国の学校の耐震化率を85%にまで高める計画です。

■このうち、少人数学級については

 予算要求を前に、文部科学省が見直しの計画をつくりました。7月5日のこのコラムでも取り上げましたが、中央教育審議会の提言を受けての対応です。
 この計画は、来年度をスタートに8年間かけて実現をめざすものです。今の40人学級を段階的に少人数化して、最終的には、小学校1・2年では30人学級に、小学校3年以上中学校3年生までを35人学級にするとしています。そのためには、先生の数を5万1800人増やさなければいけませんが、少子化が進むことで、今後、小学校に入学する子どもたちの数が減ることから実質的には2万人程度の増員ですむ計算になります。
これとは別に、4年後から新しい学習内容や授業時間数の増加に対応するためとして、財源が確保されれば5年かけて4万人の先生を増やすとしています。本来なら来年から小学校の学習内容が新しくなるのに合わせて増員を求めたいところでしたが、厳しい財政事情から、民主党がマニフェストで示した少人数学級化を優先させ、新しい教育内容への対応は後にずらした格好です。

■予算の確保はできる?

 その点は、これからが正念場です。来年度予算は「予算編成の透明化」を掲げて10月に行われる予定の事業仕分けを経て編成されます。また、「元気な日本復活特別枠」については、公開で政策コンテストが行われ、その採否が決まります。文部科学省は、省庁の中でもっとも多くこの特別枠を使っていますので、予算が確保できるかどうかは、いかにアピールし、広く理解してもらえるかにかかっています。とりわけ、少人数学級化については、先生の増員自体は歓迎だとしても、都道府県にとっては給料の3分の2を負担する仕組みですので、財政負担をしてまで歓迎となるのか、その支持の強弱によっても影響を受けることになります。

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9月7日に発表になったOECD・経済協力開発機構の調査では、日本は教育への公的な財政支出のGDP・国内総生産に占める割合が3.3%(2007年)とデータの比較可能な28か国中もっとも低かったことがわかりました。財政の上からも教育を大切にしているかどうかが問われています。

hayakawa.jpg早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ

教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。

投稿者:解説委員 | 投稿時間:12:05

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