2009年10月19日 (月)日本の教育支出は世界の最低レベル


政権交代で、教育政策の動向が気になりますが、国際的に見て日本の教育の姿はどう見えるのか、今回は、OECD(経済協力開発機構)が9月に公表した2009年版の「図表でみる教育」に描かれた日本の教育像について、取り上げたいと思います。

■この報告は

091019imadoki1.jpgOECDが、国際比較が可能な指標に基づいて毎年分析を行っています。ほかの国々と照らし合わせて見ることで、それぞれの国の教育改革に役立ててもらおうというものです。8月に行われた衆議院議員選挙で、各政党がマニフェストで表現の違いこそありましたが、「教育への財政支出を先進諸国並みにする」とか「GDP(国内総生産)比5%まで引き上げる」などと掲げたのは、この国際比較のデータをもとにしています。去年秋以降の経済危機による影響が気になりますが、今回はおととし(2007年)までのデータによるもので、その影響は反映されていません。

■日本の教育の姿は

ひと言で言えば、公財政支出、つまり国や地方自治体からの教育への投資が少ない割に、子どもたちや現場の先生たちは案外頑張っている。そんな姿です。まず、公財政支出について、報告は「OECD諸国に比べ、低迷している」と結論づけています。2006年の小学校から大学までの教育支出は、日本はGDPの3.3%とOECD加盟国の平均4.9%に及びませんでした。データの比較の可能な28か国の中では、トルコに次いで下から2番目、世界の最低水準にとどまっています。少子化の影響も考えられますので、ほかの国と単純な比較はできませんが、上位の国々、トップのアイスランドが7.2%、次いでデンマークが6.7%、スウェーデンが6.2%など先進各国に大きく引き離され、低迷していることがわかります。

 

091019imadoki2.gif■一方で、家計の負担は大きい

OECDはこんなことも指摘しています。教育にかかる費用のうち家計が負担している割合は、日本は21.8%と韓国の31.5%に次いで22か国中2番目に高くなっています。これに次ぐのが、アメリカの20.3%ですので、この3か国が家計費負担の大きい国、御三家と言えます。日本の教育支出は、公的支出の面では、高福祉型の北欧諸国などには遠く及ばず、家計に負担を求める自由競争主義的なアメリカ型に近いことがわかります。それでも、アメリカは公財政支出が5%とOECD平均を上回っています。

■気になるのは・・

教育への投資が各国に比べて伸びていないことです。今回の報告では、1995年のGDPに対する支出の割合と今回のデータを比較しています。家計費などの私費を含めた総額でみても、日本は5%と変動がありません。ところが、教育改革に力を入れている国々ではこの間に教育支出の割合を伸ばしています。デンマークが6.2%から7.3%へと大幅なのを始め、イギリスが5.2%から5.9%へ、アメリカも6.6%から7.4%へと伸ばしています。とりわけイギリスは、14年前は日本とそれほど変わらなかったのに、今では日本に水をあけていて、手厚く教育改革に取り組んでいることがわかります。もうひとつ、日本の場合、大学の授業料が高いのに公的な補助を受ける学生の割合が低い、つまり奨学金などの恩恵を受ける学生が少ないと指摘されているのが気がかりです。

■その割には、現場は頑張っている

というのは、国際学力調査PISA2006の結果について、日本はほかの国々に比べて成績上位者が多いとして水準の高さが評価されているからです。国内では、国際的に順位が下がったことで学力低下が叫ばれ、03年の結果から全国学力テストの実施が検討されたいきさつがあります。ところが、国際的にみると、少ない投資にもかかわらず、よい成績を収めていると評価を受けているのです。また、教育環境についても、小学校の1クラス当たりの子どもの数が28.2人とOECD平均の21.4人を上回り、世界的にみても韓国と並んで学級規模が大きく、環境に恵まれていないと指摘されています。報告は、これらを総合して「教員の質の高さが教育水準の高さにつながっている」と評価しています。国内的にみるとこうした評価は意外に聞こえるかもしれませんが、どの国も教員の質の確保に苦労している中で、日本はまだまだ捨てたものではないといったところです。

■今後にどう生かすか?

この報告は、今回から教育が経済や社会に及ぼす効果についても調査しています。日本はこの調査には加わっていませんが、たとえば、男子学生一人が大学教育を終えるために必要な投資に対して、それが社会にもたらす経済的効果(所得税の増加をもたらす、社会保障費用の低下をもたらすなど)は、平均でその2倍以上にもなると分析しています。これまでも漠然とこうした効果が考えられてきましたが、各国の調査からデータで示されたことになります。未曾有の経済危機が世界を覆っている今、長い目で見たときに、教育への投資は経済対策のひとつといった側面を持っているのです。

hayakawa.jpg早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ

教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。

投稿者:解説委員 | 投稿時間:22:20

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