2009年10月05日 (月)子どもに「本を読め」と言うけれど


「読書の秋」。近ごろの子どもたちは本を読まなくなったという嘆きをよく耳にしますが、それはどうやら子どもたちだけではないことがわかりました。今回は、そうした気になる調査結果を取り上げます。
   
■この調査は

文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」です。ことしの3月に全国の16歳以上の男女3480人を対象に行ったもので、その56%にあたる1954人から回答を得ました。例年、言葉の使い方の誤りが話題になりますが、今回はどんなものがあったのか、代表的なものを二つあげたいと思います。
   
■一つは「敷居が高い」

「(ア)相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」という意味なのか、「(イ)高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」という意味なのかを尋ねました。本来は(ア)の意味ですが、(イ)を選んだ人の方が46%と上回りました。50代以上では本来の意味を理解している人が多いのですが、40代以下では逆転します。若い人の間では「あそこは高級過ぎて敷居の高いお店だ」といった間違った使い方をする人もいるようで、ある新聞のコラムは「一度でいいから高級料亭で食事をしてみたい」という若いサラリーマンの悲哀が感じられると評しています。

■もう一つは「破天荒」

「(ア)だれも成し得なかったことをすること」という意味なのか、「(イ)豪快で大胆な様子」のことなのかを尋ねました。辞書を引きますと「天荒」は「天地未開な時の混とん」という意味で、それを突き破るほどに「だれも成し得なかったことをする」という意味です。ところが、(イ)を選んだ人が64%と(ア)を選んだ人を大幅に上回りました。どの世代をみても(イ)が上回っていますので、誤った使い方が正しいとして広がっていることを示しています。言葉の意味は時代とともに変化しますが、テレビや新聞などのメディアを通して調査結果が伝わることで、本来の意味が見直され、今後また微妙に変化するのかもしれません。hayakawa.jpg

 

■今回のもうひとつの特徴は

「日本語を大切にしている」と考えている人が増えていることです。7年前にも同じ質問をしていますが、この時の69%から77%に増えています。世代別では16歳から19歳までの10代や20代、30代の若い世代ほど大幅に増えています。前回の調査時点から続いている「日本語ブーム」が影響しているという見方がある一方で、3年前の教育基本法の改正で伝統文化の尊重が強調されたことによる学校教育の指導の影響を指摘する声もあります。
また、今回の調査では「美しい日本語」というものがあると思うかを聞いています。「あると思う」人も88%と増えています。どのような言葉なのかは「思いやりのある言葉」「あいさつの言葉」などの順ですが、とりわけ3番目の「控えめで謙そんな言葉」が大幅に増えています。これと並んでいた「アナウンサーや俳優などの語り方」は大きく下がっています。アナウンサーや俳優がお笑い番組やバラエティーに出演する機会が増え、「多様な日本語」を話すようになったからではないかと文化庁は説明しています。控え目に「多様な日本語」と表現していますが、「日本語がお粗末」という批判にも聞こえます。

 

091005imadoki1.gif■読書についての結果は

雑誌や漫画を除いて「1か月に何冊ぐらい本を読むか」という問いに「読まない」と答えた人は6年前の38%から46%に増えています。1冊でも本を読んでいると答えた人たちに読書量の増減を尋ねたところ、65%が減っていると答えています。本を読まない人と読書量が減った人を合わせると8割を超える人が本から縁遠くなっています。読書量が減ったと答えた人に理由を尋ねたところ、「忙しくて読む時間がない」「視力など健康上の理由」「テレビの方が魅力的である」の順でした。世代別にみますと、40代までの働き盛りのうちは忙しくて読む時間がない、ようやく時間ができた60代を過ぎると今度は目が悪くなって本が読みにくくなると答えています。逆に、読書量が増えた人たちのうち若い世代の人は「読書の必要性を強く感じる」と答えています。若いうちからの積み重ねが、年をとってから大きな差になりかねませんので、自戒が必要かもしれませんね。

 

091005imadoki2.gif■「これでは日本語のこの先が心もとない?」

去年行われた全国学力テストについてお茶の水女子大学の研究グループが行った分析によりますと、小学校6年生の国語A(基礎知識を問う内容)の問題で成績最上位のグループにいる子どもの親のうち、「本を読む」という人は75%なのに対し、最下位グループでは59%にとどまっていました。本を読まない親が「本を読め」と言っても、子どもが読まないのは当然です。国際的な学力調査での日本の子どもたちの読解力の低下が課題になっていますが、本を読まなくなった大人が子どもたちに「本を読め」「読解力を上げろ」と言っても説得力に乏しいように思います。カラオケやパチンコに行くのも結構ですが、大人もしっかり本を読む習慣をつけることが必要ではないか、そんな思いを強くしています

hayakawa.jpg早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ

教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。

投稿者:解説委員 | 投稿時間:15:00

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

※コメントはありません

コメントの投稿

ページの一番上へ▲