2009年09月07日 (月)学力テストでわかったことは・・・
2学期が始まるのに合わせて、ことしで3年目を迎えた全国学力テストの結果が文部科学省から発表になりました。今回は、その結果についてです。
■結果の特徴は?
4点あげたいと思います。
1つは、学力が上がったのかわからず。
2つめは、都道府県ごとの格差は相変わらず。
3つめは、知識の活用力に課題はありそうだけれど…。
4つめは、学校の指導の成果はハッキリせず。
■ポイント1 「学力は上がったのか、下がったのか」
この点が、最も関心が高いところだと思いますが、結論からいうと、上がったとも下がったとも言えません。
各教科の平均正答率をみてみますと、小中学校とも、従来の基礎知識を問うA問題は60~70%台、知識を活用する力を問うB問題は50~70%台と去年を上回っています。正答率だけを比べれば上向いたようにみえますが、そう簡単ではありません。問題の難易度がハッキリしないからです。たとえば、中学校の国語のB問題は数字の上では一気に上がっていますが、去年解答時間が足りなかったという割合が31%にのぼったことから、設問や問題文の量を減らしたのです。その結果、時間が足りなかったという答えは8%にまで下がりました。問題の量を減らしたら成績が上がったととらえることができ、学力が上がったと言い切るわけにはいきません。
■ポイント2「都道府県ごとの格差は相変わらず」
文部科学省は当初から「ばらつきは小さい」と格差には否定的ですが、平均正答率と±5%以上離れている府県はのべ29にのぼります。中学校数学のA問題ではトップが71%、最下位が51%と大きな開きがあります。一部下位から抜け出したところがあるなど順位に変動はありましたが、都道府県ごとの格差の現状が改まったと言えるところまでにはいたっていません
■ポイント3「知識の活用量力に課題はありそうだけれど・・・」
問題とB問題の正答率を比較しますと、B問題はA問題に比べ低くなっています。読み書き計算といった、繰り返し学習をすることで身につくような知識はそれなりにできるけれど、文章を読んでそこから読み取ったことをもとに考える活用問題となると正答率が下がってしまう傾向は今回も続いています。
ただ、活用問題が苦手と言っても、問題の量を減らしたら正答率が上がったことを考えますと、時間に制約がある中で解答させるこのテストの限界を示しているとも言えます。
■ポイント4「学校の指導の成果ははっきりせず」
小学校の算数で成績のよい学校ほど早い段階から少人数に分けて指導している割合が高いといったことなど、学校の取り組みによる成果を浮かび上がらせようとしましたが、結局は熱心に指導に取り組んでいる学校の方が成績がよいといった漠然とした結果に過ぎません。学校の指導のうちどの部分によってどれだけの効果が上がるのかといったことまでは示されていません。2回目までの詳細な分析から、成績は学校の指導よりも家庭学習や塾など家庭要因の影響を受けやすいとされています。今回の結果をもって、あれもこれも取り組みが必要だというだけでは、学校のお尻をたたくことにしかなりません。
■テストの成果は?
このテストは国の教育政策の検証と現場の指導の改善に役立てるためとして実施されてきたものです。しかし、この3年でのべ200億円近くをつぎ込んできたのに、子どもたちの学力が上がったのか下がったのか、わからない。国の教育政策の検証を掲げて取り組んできたのに、最も肝心なこの部分の検証に至っていないことが浮かび上がってきました。一方で、ハッキリしてきたのは、都道府県ごとに成績の格差があること。競争をあおるために実施するのではないとしてきましたが、結果として残ったのは、都道府県ごとに成績を競わせるという動きです。教育の機会均等が本当に実現されているのか、そのための効果的な手が打たれているのかという点は明らかになってはいません。
■積み残された課題は?
去年の学力テストについて追跡調査を行ったお茶の水女子大学の調査チームによると、親の年収とテストの成績との間に相関関係のあることがわかりました。
小学校6年生の算数で見ると、世帯年収が200万円未満の子どもの平均正答率が43%なのに対し、年収が上がるにつれて成績が上がり、年収1200万円を超えると66%になっています。家計が豊かだと成績が上がるという単純なものではありませんが、影響があることは見過ごせません。一方で、学用品を買ったり、修学旅行に行ったりするための費用を出すのが難しい家庭に対する支援策、就学援助を受けている子どもの数はこの10年で78万人から142万人へと2倍近くに増えています。去年の金融危機以降、その数はさらに膨らんでいるとみられます。もはやことは教育の分野だけでは解決しない問題です。福祉の世界、場合によっては労働の世界ともつなげて考えることが急がれます。どう取り組むべきなのか、真剣に議論しなければなりません。
早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ
教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。
投稿者:解説委員 | 投稿時間:15:00
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