2016年03月25日 (金)学力不足、どう脱する?


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 学校の授業についていけない低学力の子どもたちの学習支援をどうしたらよいのか、OECD(経済協力開発機構)は国際的な学力テストPISA(ピザ)調査の結果をもとに、2月に報告をまとめ、公表しました。

■ この報告は

 「低成績の生徒:何故成績が下がるのか、支援する方策は?」と題するものです。OECDが日本の高校1年生にあたる加盟各国の15歳の生徒を対象に行っている国際的な学力テストPISA調査の2003年から12年までの4回の成績をもとに分析したものです。この調査では、成績を数学的能力と科学的能力については7段階に、読解力を8段階に分けて分布を比較しています。そのうちの下から2段階を低成績と位置づけ、その推移と各国の対策を分析しています。この間、ほとんどの国が低学力の問題を抱えたままの状態が続いていますが、一方で、ブラジルやドイツ、イタリアなど一部の国は、数学的能力について成績の低い子を減らすことに成功したとしています。経済的にも文化的にも背景が異なる国が、低学力の子を減らしたことに、打つべき手のヒントがあるのではないかというのが、今回の報告です。

■ 日本の場合は

 PISA調査の成績は、全体として回復傾向にあり、低成績とされる生徒の割合は、数学的能力、読解力ともに10%程度にとどまっています。OECD各国の平均が4人に1人の割合にのぼるのと比べると、低学力克服に成功している国とは言えないまでも、そこそこにはがんばっていると言えます。とは言え、OECDは成績の差が将来の生活の格差につながると指摘していますので、放っておいてよいというわけではありません。

■ 成績が低いのはなぜなのか

 さまざまな要因を分析しています。一つは生徒の背景です。社会経済的に恵まれない生徒や就学前教育を受けていない生徒が、低い成績にとどまっている割合が高いとしています。つまりは、家計に恵まれないために就学前にそれなりの教育を受けていないとその後の成績にも影響してくることを示しています。二つめは、生徒の学習姿勢と態度です。数学に対して忍耐力や動機、自信に欠ける傾向があるため、成績のよい生徒に比べ授業をさぼるケースが多くなるとしています。鶏が先か、卵が先かという議論に似てきますが、授業がわからないから集中できないし、自信も持てない、だから授業から遠ざかるということなのかもしれません。三つめは、宿題との関係です。ある程度までは、宿題をする時間が多いほど低成績になるリスクは低いとしています。一つの目安として、週に6時間宿題をする生徒は、宿題をしない生徒に比べて成績が低くなる可能性が低くなるとしています。四つめは、先生との関係です。先生からの支援が乏しかったり、先生からの期待が低かったりする学校に在籍する生徒の成績が低くなる可能性が高いとしています。やはり、先生がどれだけ熱心に指導するかにかかっていることが、調査からも裏付けられた格好です。

■ では、どうすればよいのか

 報告では、いくつかの提言をしていますが、ここでは日本の参考になりそうな4点に絞って示します。一つは、成績の低い生徒を特定して、その生徒にあった戦略を練ること。二つめは、可能な限り早い段階で支援を開始すること。三つめは、保護者や地域社会との関係を強化すること。四つめは、社会・経済的に恵まれない学校や家庭に焦点を絞った支援を提供すること、などをあげています。分析にあたったシュライヒャーOECD教育スキル局長は「低成績に対応することから得られる社会的、経済的利益に比べると、それにかかるコストは小さい。教育政策とその実施こそがこの問題を乗り越える助けとなる」と述べています。つまりは、子どもが在学している間に様々な手立てを講じることで、その後、成長して社会人となった時の社会や経済への見返りが大きくなり、その一方で社会的なコストを低く抑えることができるということなのです。

■ 日本へのアドバイスは

 これらの提言は、OECD各国の分析に基づく世界共通のもので、必ずしも日本に特化したものではありません。そこで、シュライヒャー局長に、ネット会議システムを通じて日本について考えるべき点を尋ねてみると「日本の場合は、先生の支援や先生からの期待といった要因が生徒の成績とより強く関係している。政策的にクラスサイズを小さくすることを考えているが、学級規模と成績との明確な関係は見当たらず、むしろ困難な問題を抱える教室にこそ優秀な教員を、困難な問題を抱える学校にこそ優秀な校長を配置するなど、公平な資源配分をすることが必要だ」と指摘しています。日本の場合、ややもすると名門校とされる学校に優秀とされる先生や校長が集中するきらいがありますが、それよりも、むしろ困難校に優秀な先生や校長の配置を考えるべきだというのです。そうした場合の先生の処遇の問題など、クリアすべき課題はありますが、長い目で考えたときに、日本の教育現場に発想の転換を促すアドバイスとして耳を傾ける必要がありそうです。

 

hayakawa.jpg 早川信夫(はやかわのぶお) 

1953年福島県生まれ。教育・文化担当の解説委員。

臨時教育審議会以来、20数年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組 時論公論 や おはよう日本「ここに注目!」、「暮らし◇(きらり)解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。関西地方向けの番組 学校再発見バラエティーあほやねん すきやねん にも出演、“のぶにぃ”の愛称で若者に人気上昇中。

投稿者:解説委員 | 投稿時間:11:20

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