2015年02月12日 (木)小中学校 統廃合促進方針の波紋


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 少子化が進む中、小中学校の統廃合をより進めやすくするためとして、文部科学省はこれまでの基準をおよそ60年ぶりに見直し、手引きとしてまとめました。

■ 手引きの内容は

 少子化による人口減少によって1学年1クラス以下の小規模校になったような場合、すみやかに統廃合を検討するか、統廃合しないと判断した場合は、小規模校としての教育的なデメリットを解消するように工夫するか、選択を促すというものです。そうした判断をする際の基準をおよそ60年ぶりに見直すことにしたものです。

■ 見直しのポイントは

 1つは学校の規模、もう1つは通学の条件の2つです。
 まず学校の規模ですが、これまでは小中学校とも12クラスから18クラスの学校が適正な規模の学校とされてきました。つまり小学校の場合は2クラスから3クラス、中学校なら4クラスから6クラスあるのが適正とされてきましたが、実際にはこれに満たない規模の学校が、小学校で47%、中学校では52%にものぼっています。そこでどれぐらいの規模になったら統廃合の検討が必要なのか、クラス数によって指針を示しました。たとえば、1学年1クラス以下になったらすみやかに統廃合を検討するとしています。それ以外のケースでも、将来の人口減少を見込んで、対応をとるように求めています。

■ 通学の条件はどう見直す?

 これまでは子どもの通学の負担を考えて、▽小学校は4キロ以内 ▽中学校は6キロ以内 を統廃合の基準としてきました。今回の見直しで、この基準に加えてスクールバスなどを使って「おおむね1時間以内」という目安を示すことになりました。これまでは子どもが歩いて通える範囲、中学校の場合は自転車も使って通える範囲として4キロ、6キロと計算してきました。今は地域によってはスクールバスを使ったりしているところも多いことから、現状にそぐわなくなってきたと判断したものです。

■ 今なぜ統廃合を進めるのか?

 手引きの中で文部科学省は、子どもの学習に支障が出かねないことを理由にあげています。少人数の中では、社会性やコミュニケーションの力が身につきにくい、人間関係が固定化しやすいなどとしています。しかし、それだけではありません。
 ひとつは、地方の教育委員会からの要望です。少子化で小規模校を抱える教育委員会から、統廃合を進めたいのに地元の反対が強く踏み切れない、国からのお墨付きがあれば進めやすくなると要望があったということです。
 もうひとつは、国の財政事情です。国は先生の給料の3分の1を負担していますが、財政ひっ迫の折、機械的に計算した場合、統廃合によって先生を1万8千人減らせるとはじき出されました。そこで浮いたお金を別の予算に回せるという思惑があります。政府の本音は、予算を浮かせることができるというこちらにあるようです。

■ 現実はと言えば

 地域によって、学校を取り巻く様相はまちまちです。過疎地では、もともと小規模の学校だったのが、さらに子どもの数が減って統廃合が進んでいます。一方、都市近郊では、人口急増期に造成された団地に設置された大規模校に子どもが集まらず、その規模をもてあましている現実があります。また都心部では、人口のドーナツ化現象で地元の子どもたちがいなくなり、各学年1クラスを維持できるかどうかというところで、空き教室問題に頭を悩ませています。統廃合についていえば、1学年1クラスに満たない小規模校の統廃合はかなり進んできていますが、むしろ、1クラスから2クラスに満たない規模の学校の割合が高く、この規模の学校の統廃合が進んでいません。

■ 今回の手引きでどう進む?

 手引きでは、一律に統廃合を促すものではなく、工夫しながら小規模校として存続させる選択肢もあるとしています。しかしそうするにはお金がかかります。また、通学条件の見直し、つまり遠距離通学を認めることを強調したことから、むしろ過疎地での統廃合を促し、課題となっている都市近郊型や都心部型の小規模校の統廃合にはつながらないおそれもあります。最終的には自治体の判断で統廃合が決まりますが、この10年に限って言えばすでに1年に300校ずつのペースで学校がなくなっています。今回の方針は、統廃合を決めきれない自治体からすれば歓迎といったところでしょうが、一方で、「子どもたちに通学の負担をかけることになりはしないか」「地域のシンボルとしての学校が消えることでますます過疎が進むのではないか」と心配する声があります。また、東日本大震災で被害の大きかった地方では学校が避難所になるなど、防災拠点としての役割が見直されました。そうした役割の喪失も心配されます。過疎地ばかりで統廃合が進むとなると、今の政権が掲げる地方創生とは逆方向になりかねません。ここは財政の論理ばかりでなく、教育の論理、つまり子どもたちにとってどうすることが最も必要なことなのか、国から言われたからやるということではなく、現場、現場で議論を重ねることが求められます。

hayakawa.jpg 早川信夫(はやかわのぶお) 

1953年福島県生まれ。教育・文化担当の解説委員。
臨時教育審議会以来、20数年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」や おはよう日本「ここに注目!」、「暮らし◇(きらり)解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。関西地方向けの番組 週末応援ナビ☆あほやねん!すきやねん! にも出演、“のぶにぃ”の愛称で若者に人気上昇中。

 

 

投稿者:解説委員 | 投稿時間:15:35

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