2014年04月11日 (金)広がるか?土曜授業


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 新学期が始まりましたが、今後、広がりをみせるかどうか注目されているのが土曜授業です。今回はこの問題を取り上げます。

■ どうして注目されるのか?

 文部科学省が去年(2013年)11月に「学校週5日制」に関する規則を変更したからです。公立学校の場合は、02年に毎週土曜日が休みになる完全「学校週5日制」が始まり、土曜日は原則として休みです。授業を行うことについては、変更前までは、「特別の必要がある場合は、この限りではない」という例外規定が設けられていましたが、これを「学校を設置する地方公共団体の教育委員会が必要と認める場合は、この限りではない」と変更しました。つまり、変更前までは、土曜日に授業ができるのは、保護者や地域の人たちのために授業公開をしたり、運動会や学芸会などの学校行事を行ったりするためなど特別の事情があるケースに限られていましたが、こうした事情に縛られずに、教育委員会が授業をする必要があると判断しさえすれば、土曜日に授業をやっても差し支えないと、原則を少し緩やかにしたのです。

■ なぜ、変更したのか?

 文化やスポーツ、体験活動など子どもたちにとって豊かな学びの場を提供するためだとしています。ただ、こうした建前とは別に、学校週5日制の実施で学力が低下したと議論されたことが背景にあります。各メディアが行った調査で保護者の多くが土曜授業の復活を望んでいることを理由に、自民党が政権公約に掲げてきたからです。学力向上策の一つと位置づけてのことです。授業時間数をどうするのかは、本来なら、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)で議論し、制度改正をする手順を踏みますが、下村文部科学大臣は「すでに第一次安倍内閣当時の教育再生会議で十分議論した」として、中教審に諮ることなく文科省内部の議論だけで規則を変更しました。東京都などはすでに月に2回まで土曜日に市区町村の判断で授業を行えると現場を指導してきましたので、こうした実績を追認したと言えなくもありません。

■ どんな授業を想定しているのか?

  「土曜授業」という言葉が使われていますが、文部科学省は3つの形を考えています。
 一つは、文字通りの「土曜授業」。学校が正規の授業として行うもので、子どもたちには土曜日に授業を受けた分の代休はありません。今、学校では授業時間数の割に学ぶ内容が増えていますので、月曜日から金曜日までを知識や技能の従来型の授業に充て、土曜日は地域の協力を得ながら野外観察や科学実験教室、キャリア教育などの体験的な活動に充てるといったことが考えられます。
 二つめは「土曜の課外授業」。学校が正規の授業以外に行うもので、子どもたちは任意参加です。授業についていけない子たちに遅れを取り戻してもらうための補習をしたり、英語や漢字などの検定試験を受けたい子たちのために通常の授業にプラスした学習をしたりすることが考えられます。
 三つめは「土曜学習」。何が違うかというと、学校が行うのではなく、たとえば教育委員会がさまざまな学びのメニューを用意したり、またPTAや地域の団体などが学校や教育委員会に協力する形で行ったりすることが考えられています。たとえば、海外経験のある人が英会話やマナーを教えたり、研究者やエンジニアがその経験を活かして実験の仕方やものづくりについて教えたりするといったことがあるかもしれません。

■ どれだけ広がるのか?

  「土曜授業」と「土曜の課外授業」の二つはそう簡単には広がりそうにありません。というのも、授業の担い手となる学校の先生の勤務とかかわるからです。先生の多忙化が叫ばれる中、土曜日に出勤した分の休みをどう確保するのかという問題があります。自治体によっては、夏休みや冬休みに休みをまとめて取れるようにする工夫をし始めていますが、すでに長期休業は研修などで埋まっていて一気に拡大とまではいきません。いずれにしても、学校での授業内容を規定する「学習指導要領」の見直しの論議がことし中に始まる見通しです。その際に改めて、先生の働き方と土曜授業との関係を整理する必要があります。

■ 「土曜学習」は少しずつ広がりも

 文部科学省は、当面は、こちらに重点を置いて地域ごとの活動を後押しする方針です。たとえばPTAの役員が有志を募って土曜日に「寺子屋」授業を行っているケースがあります。公民館を借りて、保護者やボランティアの人たちが補習授業をしています。また、同じように教育委員会主催で土曜日に補習のほか英会話やそろばん、パソコンなどの教室を開いている地域もあります。文部科学省は、専門家による会議を設けて、推進方策の検討を進めていますが、学校との連携をどうやって取るのか、安全上の問題など誰が責任を持つのかといったことなど、実際に進めるとなると課題も多く、解決策を検討する必要があります。
 建前ではなく、子どもたちの学びを豊かにするために、どれだけ知恵を集められるのかが、今、問われています。

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hayakawa.jpg  早川信夫(はやかわのぶお) 

1953年福島県生まれ。教育・文化担当の解説委員。
臨時教育審議会以来、20数年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」や おはよう日本「ここに注目!」、「暮らし◇(きらり)解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。関西地方向けの番組 週末応援ナビ☆あほやねん!すきやねん! にも出演、“のぶにぃ”の愛称で若者に人気上昇中。
 

投稿者:解説委員 | 投稿時間:11:00

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