2013年12月13日 (金)国際学力テスト 日本の高校生は


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 世界65の国と地域が参加して2012年に行なわれたOECD・経済協力開発機構による国際学力テストの結果が12月3日に世界同時に発表になりました。日本の高校生の成績はどうだったのでしょうか。

■ このテストは

 OECDが2000年から3年ごとに行っているもので、今回が5回目です。義務教育を終えた段階にあたる15歳、日本の場合は高校1年生が対象です。去年は世界65の国と地域が参加しました。「国際学習到達度調査」という正式名称の英語の頭文字をとってPISA(ピザ)テストと呼ばれています。単に知識の量を競うのではなく、自分の得た知識を使って生活の中で使いこなす力、日本流にいえば「生きる力」を測ることが目的です。

■ 日本の成績は

 数学力、科学力、読解力の3つの分野すべてで3年前の前回と比べて、順位が上がりました。6年前の3回目まで下がり続けていたのが、それ以降2回連続して上昇したことになります。順位だけでなく、平均得点も3分野とも上がりました。
 文部科学省は「2003年の2回目のテストで学力低下が言われ、その後2007年から全国学力テストを実施し、国際学力テストと同様な“活用力”を問う問題を出して取り組んできた成果だ」と分析しています。

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■ 出題されたのはどんな問題?

 毎回同じ問題を使ってテストが行われますので、問題は一部しか公表されません。その中から数学力の問題を一つ紹介します。マンションの間取り図を見て、総床面積を見積もるのに必要な測定か所を4つ示しなさいという問題です。全体の大きな長方形から窪んだ部分に当たる小さな長方形を引けば計算できます。解き方を思いつけば案外簡単な問題ですが、どの辺を組み合わせるかは9種類の正解があります。日本の高校生は、正答率が52%。一見低くみえますが、OECD平均の45%を上回っていて、それなりに対応できていることがわかりました。

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■ 世界的な順位は

 前回から参加した中国・上海が3つの分野すべてで前回に続いて世界のトップに立ったのが大きな特徴です。続いて、シンガポール、香港、台湾、韓国など東アジア勢が上位に連なっています。一方、常に上位に位置してきた北欧のフィンランドが数学力で12位と初めてトップ10から落ちたほか、全体に低下傾向がみられました。上海が連続トップだったことについて、OECDの分析担当者は「知識重視型の授業から知識活用型の授業に転換して取り組んだ成果が表れたためではないか」とみています。一方で、「テスト対策に生真面目に取り組んできた東アジアの国々の成績が上向き、無理に対応をしたわけではないフィンランドなどの成績がたまたま落ちただけ。テストの性格が、“現状分析のためのものさし”から“成績向上のための目標”に変わってしまった」とする見方もあります。

■ 日本の高校生の課題は

 成績はよいのに意欲に欠ける、こんなことが浮かび上がりました。
 数学力テストと合わせて行われたアンケートの結果、数学への興味・関心の高さが世界の60位、下から数えて6番目。数学への苦手意識や成績がよいとは思わないというとらえ方は65位、最下位にとどまっていることがわかりました。OECDの担当者は「数学を学ぶと将来にどう役立つのかを先生が十分に伝えきれていないのではないか。自ら進んで学びたいという意欲を引き出してほしい」と話しています。「何のために学ぶのか」をうまく伝えきれていないことが、成績はそこそこ、意欲はまだまだという傾向につながっているのではないかと思います。

■ 今回の結果を今後にどう生かす?

 3点あげたいと思います。
 1つめは、先生は生徒の満足度に目を向けて。先生は生徒が授業に満足しているか関心があるかという質問に対し、そう思うと答えた生徒の割合が59%とOECD平均の77%に比べかなり低くなっています。先生は生徒が授業に満足しているかどうかにもっと目を向けてほしいと思います。
 2つめは、ICT化への対応を急げ。次回2015年のテストからコンピューターで出題された問題を解く形式に変わります。先ごろ発表になった大人を対象にした国際学力テストでは、日本の大人はコンピューターの扱いが苦手なことが浮かび上がりました。コンピューターを使いこなせるかどうかは当たり前の時代。対応を急ぐ必要があります。
 3つめは、さらなる底上げを。日本の学校は地方によって名門校とされる学校があって、そこの校長や先生になると出世コースに乗ると言われます。しかし、課題を抱えている困難校にこそ力のある先生の投入が求められます。成績の伸び悩んでいる子どもたちの背景にどんなことがあり、どう対処することが適切なのか、そうしたことまで配慮して取り組んでほしいと思います。
 いずれにしても、結果の上下だけに一喜一憂せず、子どもたちにとって必要な教育環境を整え、現場を後押しすることが必要ではないかと思います。

hayakawa.jpg 早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ

教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。

投稿者:解説委員 | 投稿時間:10:00

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