早川解説委員の教育コラム

2016年11月28日 (月)小学校で何が・・・


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 ことし3月までの1年間のいじめや校内暴力、不登校についての調査結果がまとまり、10月27日に文部科学省から公表されました。いずれも小学校で前の1年間を上回っているのが大きな特徴です。いったい何が起きているのでしょうか。

■ いじめの件数は

 昨年度(去年4月からことし3月まで)1年間で、小中高とも増えていますが、小学校は15万1190人と前の年度を23%上回りました。子どもがいじめられたと感じていることを学校が認識したらどのようないじめであってもその内容にかかわらず件数として報告することにした2006年度以降で最も多くなりました。増加率をみてみますと、中学校は12%、高校は11%ですから、小学校でいかに増えているかがわかります。

■ 特徴は低年齢化の傾向

 小学校の学年ごとの増え方をこの調査方式になった10年前(2006年度)と比較してみますと、1年生が4倍に、2年生が3.5倍、3年生が3倍、4年生が2.3倍、5年生が1.9倍、6年生が1.6倍と学年が下がるほど増え方が大幅です。かつて、小学校でのいじめは学年が進むにつれて増える傾向でしたが、今ではどの学年でも同じようにいじめがあるようになりました。子どもの数全体に対する件数の割合は2.3%ですので、1学級を40人と考えると、1学級にほぼ1件の割合でいじめがあることになります。今は、小学校に入学した時からいじめがあるのが当たり前といった状態になっています。

■ いじめ発見のきっかけは

 アンケート調査だのみであることがわかりました。「アンケート調査などの学校の取り組み」が56%、次いで、「本人からの訴え」(15%)、「学級担任が発見」(12%)、保護者からの訴え(11%)の順になっています。この10年の変化をみてみますと、かつては24%もあった「学級担任が発見」の割合が半分近い割合に減って、「アンケート調査などの学校の取り組み」が27%からほぼ2倍の割合に増えています。かつては学級担任がそれなりに頑張っていたのに、今ではこどもにアンケートをしないとなかなかいじめに気づけなくなっている現実を示しています。
 それほどいじめが見えにくくなっているのかというと必ずしもそうではありません。いじめの内容(複数回答)をみてみると、「冷やかしやからかい」が依然として多く(10年前68%→今回62%)、次いで「軽くぶつかられたりする」(19%→26%)、「仲間はずれ、集団による無視」(27%→19%)の順で、ほかには「嫌なことや恥ずかしいことをさせられたりする」が5%から8%に増えています。このように、大人の目に見えにくい陰湿ないじめはやや減る傾向にありのに、行動に表れやすいいじめが増える傾向にあり、全体としては大人の目につきやすくなってきているのに先生は気づいていない現実を示しています。

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2016年10月31日 (月)全国学力テスト10年目の課題


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 国語と算数・数学について、小学6年生と中学3年生を対象に毎年行われている全国学力テストの結果が9月29日に公表されました。今回で10年目を迎えた学力テストの課題について考えます。

■ 今回の結果をみると

 国語、算数・数学とも、基礎的な知識を問うA問題の平均正答率が高く、知識を使って考える活用力を問うB問題の平均正答率が低いという例年通りの傾向を示しています。例えば国語では、目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、資料から情報を取り出して自分の考えを書いたりするといった問題の正答率が低い傾向がみられました。ことしも、子どもたちは従来型の知識中心の問題は得意だけれど、このところ文部科学省が力を入れている考えを深めて答えを出すような問題はまだまだ苦手にしていることがうかがえます。

■ 一方で、地域間格差は

 縮まってきているのではないかというが文部科学省の見方です。A問題を中心に、これまで都道府県別で正答率が低かった県が上位に食い込むようになったりして学力の底上げが進んだこと、正答率最上位の県と最下位の県の差が以前に比べ開いていないことを根拠にあげています。正答率が低いことに悩んだ県の担当者や先生たちが、上位の県を視察したりして、研修を重ねるなどして学力の向上に取り組んだ成果が表れてきたのではないかと文部科学省ではみています。一方で、テスト前に過去に出題された問題を繰り返し学習させたりするなどの過剰な学力テスト対策が指摘されたりもしていて、努力の成果と手放しで評価できるかどうかは疑問が残ります。

■ そもそもこのテストは

 12年前の2004年の暮れに2つの国際学力調査で日本の子どもたちの成績が下がったことが発表されたことがきっかけで実施されることになりました。当時の中山文部科学大臣が現場を競い合わせることで学力を向上させることが必要だと実施を求めたものです。しかし、競い合いの考え方に強い反発が起きたことから、学校がその結果を成果の検証に生かし、指導の改善に役立てるために行うという別の理屈を持ち出すことで、競争という色合いを薄め、実施に至ったいきさつがあります。

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2016年09月27日 (火)袋小路の大学入試改革論議


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 今の大学入試センター試験に代わる新しい大学入試改革案について、文部科学省は8月31日にこれまでの検討状況を公表しました。その内容と課題について取り上げます。

■ 改革が検討されているのは

 センター試験から衣替えした「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」です。このテストは、大学に入学を希望する生徒が1次試験として受けるもので、2020年、今の中学2年生が受験年齢に差しかかる時期からの実施です。大きな変更点は、記述式問題の導入と英語の試験内容です。記述式問題は、将来役に立つ考える力、表現する力を測るには従来のマークシート方式だけでは限界があるとして導入の方針が示されました。また、英語は、グローバル化に対応するためとして、これまでの「読む」「聞く」力に加えて「書く」「話す」力も評価します。成績は一点刻みではなく、得点レベルごとに示すとしています。文部科学省の専門家会議の方針を受けて、具体的にどう実施するのかが非公開で議論されてきました。

■ どこまで煮詰まったのか

 記述式問題をめぐっては、まだ固まっていませんが、英語の試験内容については、方向性が固まりました。「読む」「聞く」「書く」「話す」力を大量に一度に行うには無理があるとして、英検やTOEFL、TOEICなどの民間の試験を活用するとしています。将来は、完全に民間の試験に移行しますが、当面は、「読む」「聞く」は現在のセンター試験と同じように行い、その成績を併用するとしています。将来は、英語は1次試験の日程では行わず、民間の成績だけを活用することになります。ただ、レベルに違いのある民間の試験の成績をどう使うのか、実施までに議論を詰めなくてはいけません。

■ 記述式問題をめぐる議論は

 3つの案が浮上しています。
 1つめは、これまでのセンター試験と同じ日程で行い、センターが一括して採点する方式です。混乱の少ない方式ですが、採点期間が短いために、記述式とは言っても短い回答しか求められない限界があり、考える力を測ったことになるのかが課題です。
 2つめは、実施時期を12月に前倒しし、こちらもセンターが一括して採点する方式です。採点期間を長く取れる代わりに高校の授業内容をこなしきれないうちに試験となってしまうため、影響が大き過ぎると高校側が反対しています。

 2つの案で行き詰っているところに
大学側から3つめの新たな提案が出されました。実施時期は変えずに、採点を各大学が行い、2次試験の成績に反映させるとする案です。考える力を測るには数十字程度の短い答えでは中途半端すぎると第1の案を退ける形で提案されたものです。ただ、この案は、受験生が大学選びの参考にする1次試験の成績としては評価されないため、受験生にはメリットの少ない形です。また、大学ごとに採点に人手をかける必要に迫られるため現場の理解が得られるかという問題があります。

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2016年09月07日 (水)21世紀型の学力 どう実現する


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 小学校から高校までの授業内容が2020年から順次新しくなります。子どもたちに21世紀型の学力をつけさせるにはどうすればよいのかを議論してきた文部科学省の審議会が8月26日にその方針をまとめました。今回は、全体像を概観します。

■ 授業内容を変えるのは

 ほぼ10年ごとに行われています。子どもたちが将来生きる社会に合わせて必要な内容に更新するためです。今回は、子どもたちが社会人になる2030年代には、AI(人工知能)の急速な発達で情報が地球的な規模でやり取りされる複雑で予想困難な時代がやってくると想定して、議論されました。そうした時代を生きるためには、知識を持っているだけではなく、未知の課題に向き合い自分で解決していく力が必要だとしています。つまり、①知識・技能に加えて、②どんな困難な状況にも対応できる思考力、判断力、表現力を身につけさせる。と同時に、③これらの力を支える自ら進んで学ぶ力、この3つの力をつけさせたいとしています。

■ こうした学力を育てる道筋として

 これまでの授業では「何を学ぶか」に重点を置いてきたのを「どのように学び、どのような力を育てるのか」といった点に配慮して考えさせる指導に変えるという方向性を打ち出しています。これまでは授業で先生が教えるべき内容を示していただけでしたが、今回は、指導方法や成績のつけ方にも踏み込んだのが特徴です。

■ 指導方法としては

 主体的・対話的で深い学び「アクティブ・ラーニング」を導入するとしています。子どもたち自身に考えさせることで質の高い理解に結びつけることをねらっていますが、一方で、知識の量は減らさないとも言っています。また、各教科をバラバラに指導するのではなく、互いに関連させながら学校ごとに工夫して教える「カリキュラム・マネジメント」を行うことも求めています。横文字だらけでわかりにくいのですが、知識一辺倒ではなく、子どもたちに主体的に学ぶ力をつけるために、先生どうし、工夫をして力を合わせましょうという、当たり前のことをもっともらしく言っているのです。

■ 成績のつけ方については

 これまでは「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の4つの観点ごとに目標にどれだけ近づいたのかを成績としてつけてきましたが、学力のとらえ方を見直すのに合わせて「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点から評価するとしています。ただ、「主体的に学習に取り組む態度」は一人ひとり違いがあることから、個人のよい点や成長の度合いについても見るように求めています。子どもの将来を考えれば、単に成績の順番をつけるのではなく、一人ひとりの成長を見守るように視点を変えてくださいと言っています。現場の先生からすると、もうそんなことはとっくにやっているということなのかもしれません。

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2016年09月06日 (火)TVシンポジウム「"働くこと"のために 大学は何ができるか」 (9/10)


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シンポジウムやフォーラム、討論会の様子を伝える番組 TVシンポジウム 。今回は、7月31日(日)に東京の実践女子大学 渋谷キャンパスで開催された、大学教育がテーマの公開シンポジウムの模様をお届けします。

かつては限られた者だけが入学していた大学。大学の数が増えたことや少子化などの影響で、えり好みしなければいずれかの大学に入学できる「全入時代」が到来し、私立大学を中心に、定員割れをする学校も相次いでいます。そのため、学習習慣が十分に身についていなかったり、学ぶことの意味などを十分に考えないまま、大学に進学する学生も少なくありません。
基礎的な学力や主体的に学ぶ姿勢、学習技術など、今、大学は、専門分野の学び以前に、多くのことを学生に身につけさせることまでも求められるようになりました。
一方で、検定や資格など、履歴書に書けるものだけでない、大学に行ったからこそ身に付けられる「能力」や「教養」とは何なのか。そしてそれらの力は、若者が社会に出たときどのように生かされるのか、という問題提起も続いています。
各大学のユニークな取り組みを映像で紹介しながら、社会を支える“人財”として若者を送り出すために、大学や社会に求められていることは何なのか、さまざまな分野で活躍するパネリストたちが徹底討論します。

※ コーディネーターとして、早川解説委員の教育コラム でおなじみの早川信夫解説委員が出演します!

〈パネリスト〉
濱名篤さん(関西国際大学学長)
井原徹さん(実践女子学園理事長)
濱中淳子さん(大学入試センター教授)
青木豊彦さん(株式会社 アオキ会長)

〈コーディネーター〉
早川信夫 (NHK解説委員)


TVシンポジウム 「“働くこと”のために 大学は何ができるか」
〈Eテレ 10(土) 午後2:00~2:59〉

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2016年06月08日 (水)大統領に届けた 女子高校生の思い


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 アメリカのオバマ大統領が、5月27日に現職大統領としては初めて広島を訪問し、原爆などで亡くなった人たちに花を捧げ、慰霊しました。その来日を前に、大統領宛てに手紙を書いた女子高校生がいます。そこに込めた思いとそこから見える学びの意味について考えます。

■ 手紙を書いたのは

広島県福山にある私立盈進(えいしん)中学校高校の高校2年生作原愛理(さくはら・あいり)さんです。作原さんは、学校の部活動「ヒューマンライツ部」で被爆者からの聞き取りや核廃絶のための署名活動をしてきました。

■ 「ヒューマンライツ部」は

 全国的には数は少ないのですが、各地のいくつかの高校で取り組まれています。ヒューマンライツというのは、「人権」という意味で、部活動として、差別がもたらす人権の問題を掘り下げて考えようというものです。作原さんは、その活動を通して、被爆者の声に耳を傾け、核の問題に関心を持つようになったということです。そして、去年ニューヨークで開かれたNPT・核拡散防止条約の再検討会議にも、外務省から「非核ユース特使」として派遣され、NGOが開いた市民フォーラムに招かれてスピーチをしています。

■ 手紙の内容は

 被爆者に直接会って話を聞いてほしいと訴えています。作原さんの個人的な思いを述べたものではありますが、松井広島市長や被爆者団体の人たちも期待感を表明するなど多くの広島の人たちの願いでもあります。手紙にはこうつづっています。「自分自身、被爆した人たちから直接話を聞いたことで核兵器の恐ろしさを肌で感じた。しかし、被爆者の平均年齢が80歳を超え、いつまでも話を聞くことはできない。だから、オバマ大統領にも今のうちに会って話を聞いてほしい」。

■ オバマ大統領の母校との交流も

 さらに手紙では「自分たちはハワイにあるプナホウ高校と毎年平和交流を続けている。大統領の後輩たちは、父が被爆者の日本語の先生が英語圏に住む中高生に向けて作ったテキストで学び、自国の加害の側面を理解しようとしている。だから、自分も彼らと同じように他国のことに目を向けたい」と述べています。
 そして、最後は「核廃絶のための街頭署名活動をしていると“実現は不可能だ”とか“高校生は家で勉強しろ”といった言葉を投げかけられることがある。しかし、オバマ大統領が7年前にプラハで行った核廃絶への決意を示した宣言の中の“Yes, we can”という言葉に勇気づけられ、核兵器をなくせると信じて自分なりに努力したい」と締めくくっています。

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2016年05月20日 (金)熊本地震 被災地の子どもを守るために


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 熊本地震の被災地では、地震直後から休校になっていた学校が、大型連休明けに再開しました。新学期が始まって早々の災害でしたので、学校は改めてスタートを切ることになります。

■ 揺れが続く中での学校再開

 今回の地震は、身体に感じる揺れが続いているのが特徴です。避難所の子どもたちを見回っている学校心理士会熊本支部長の緒方宏明尚絅大学短期大学部教授によりますと、被災地のどもたちの多くが、最も大きかった二度目の揺れを避難所や車の中で感じたこともあって、中には、避難先でも安心感が得られず、不安に感じている様子がうかがえるということです。たとえて言うと、家族という小舟の中で、揺れの恐怖におびえている状態が続いているということです。

■ 子どもたちのために必要なこととは

 「心のケア」が言われていますが、周りの大人が過剰に反応して、働きかけ過ぎないことが肝心です。過剰な働きかけはどもにとってはかえって負担になることが多いということで、専門家は「大人の安心感が、どもの安心感につながる」ことを基本に考えてほしいと言っています。身体の病気なら「早期発見、早期治療」が基本ですが、震災後の心のケアに限っては「早期発見、適切なタイミングの支援」が原則だということです。

■ どう気をつければよいのか?

 まずはどもの変化にあわてないことです。震災直後から2~3か月程度の「急性期」と呼ばれる時期には、どもによっては「退行現象」、俗にいう「赤ちゃん返り」の現象がみられます。小さい子の場合は、急におねしょをするようになったり、親にしがみついて離れなかったり、聞き分けが悪くなったりしがちです。小学生ぐらいになりますと、イライラしたり、攻撃的になったり、ボーっとして集中力がなくなったりしがちです。中学生以上では、睡眠や食欲の衰え、いさかいの増加、非行などとなって表れがちです。年齢が上がると、妙にはしゃぎまわったり、いさかいが激化したりするなどの高揚感がみられる場合もあります。
 大きな揺れの恐怖に加えて、避難生活で非日常的な生活環境に置かれ、我慢を強いられていることなどがその背景にあります。そんなとき、必要以上にしかったりせず、とりわけ小さい子の場合は、一度しかったら、ぎゅっと抱きしめてあげたりして、安心していいんだよというメッセージを送ってほしいと専門家は言います。

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2016年03月25日 (金)学力不足、どう脱する?


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 学校の授業についていけない低学力の子どもたちの学習支援をどうしたらよいのか、OECD(経済協力開発機構)は国際的な学力テストPISA(ピザ)調査の結果をもとに、2月に報告をまとめ、公表しました。

■ この報告は

 「低成績の生徒:何故成績が下がるのか、支援する方策は?」と題するものです。OECDが日本の高校1年生にあたる加盟各国の15歳の生徒を対象に行っている国際的な学力テストPISA調査の2003年から12年までの4回の成績をもとに分析したものです。この調査では、成績を数学的能力と科学的能力については7段階に、読解力を8段階に分けて分布を比較しています。そのうちの下から2段階を低成績と位置づけ、その推移と各国の対策を分析しています。この間、ほとんどの国が低学力の問題を抱えたままの状態が続いていますが、一方で、ブラジルやドイツ、イタリアなど一部の国は、数学的能力について成績の低い子を減らすことに成功したとしています。経済的にも文化的にも背景が異なる国が、低学力の子を減らしたことに、打つべき手のヒントがあるのではないかというのが、今回の報告です。

■ 日本の場合は

 PISA調査の成績は、全体として回復傾向にあり、低成績とされる生徒の割合は、数学的能力、読解力ともに10%程度にとどまっています。OECD各国の平均が4人に1人の割合にのぼるのと比べると、低学力克服に成功している国とは言えないまでも、そこそこにはがんばっていると言えます。とは言え、OECDは成績の差が将来の生活の格差につながると指摘していますので、放っておいてよいというわけではありません。

■ 成績が低いのはなぜなのか

 さまざまな要因を分析しています。一つは生徒の背景です。社会経済的に恵まれない生徒や就学前教育を受けていない生徒が、低い成績にとどまっている割合が高いとしています。つまりは、家計に恵まれないために就学前にそれなりの教育を受けていないとその後の成績にも影響してくることを示しています。二つめは、生徒の学習姿勢と態度です。数学に対して忍耐力や動機、自信に欠ける傾向があるため、成績のよい生徒に比べ授業をさぼるケースが多くなるとしています。鶏が先か、卵が先かという議論に似てきますが、授業がわからないから集中できないし、自信も持てない、だから授業から遠ざかるということなのかもしれません。三つめは、宿題との関係です。ある程度までは、宿題をする時間が多いほど低成績になるリスクは低いとしています。一つの目安として、週に6時間宿題をする生徒は、宿題をしない生徒に比べて成績が低くなる可能性が低くなるとしています。四つめは、先生との関係です。先生からの支援が乏しかったり、先生からの期待が低かったりする学校に在籍する生徒の成績が低くなる可能性が高いとしています。やはり、先生がどれだけ熱心に指導するかにかかっていることが、調査からも裏付けられた格好です。

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2016年02月25日 (木)家で勉強するようになったけれど


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 「今どきのこどもたちは勉強しない」と言われ続けてきたこどもの家庭での学習時間が増加傾向にあることが民間の教育研究所の調査から浮かび上がりました。

■ この調査は

 こどもたちの学習への意識やその実態を調べようと、民間の教育研究機関、ベネッセ教育総合研究所が1990年からほぼ5年ごとに行っているもので、今回が5回目です。今回は、全国の71校の小中学校と高校を通じて去年の6月から7月にかけて行い、小学校5年生と中学校2年生、それに高校2年生の合わせて9726人から回答を得ました。前回からの間に東日本大震災が起きたこともあって、9年ぶりに行われました。

■ 調査から浮かび上がったのは

 おもに3点です。一つは、家庭での学習時間がいずれの学年でも伸び、全体として増加傾向にあること。二つめは、中学校の理科を除いて各教科とも軒並み「好き」の割合が増え、授業の理解度も高まっていること。三つめは、勉強をすることを将来「お金持ちになるため」や「幸せな生活を送るため」に役に立つと考える子が増えたこと。これらの結果から、調査にあたった専門家は「学習離れを起こしていたこどもたちの学びの回帰がみられる。90年代初頭レベルに回復した」としています。保護者や学校の先生たちが聞いたら喜びそうな結果かもしれません。

■ 家庭の学習時間の増加について

 今回は、この点にこだわってみていきます。学習時間の平均の推移をみると、小学生の場合は、90年の第1回には87.2分だったのが、2001年の第3回で底を打ち、今回は95.8分と大幅に伸び、調査開始以来最長になっています。中学生の場合も、小学生と同じように第3回で底を打ち、前回の87.0分から90.0分に伸びています。これは、第2回目の96年調査と同じ長さです。高校生の場合は、第1回の93.9分以来、これまで4回の調査とも減り続けてきましたが、今回は前回の70.5分から84.4分と初めて増加に転じました。

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2016年01月29日 (金)発達障害という"個性"に理解を求めて


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 発達障害という言葉を聞く機会が多くなったと感じる方も多いと思いますが、今回は、私が番組を通じて出会った二人の若者を通して、発達障害への理解の大事さについて考えたいと思います。

■ 出会ったのは

 音楽を通じて発達障害について理解を広めようと活動している双子の兄弟、その名も「発達インズ(はったついんず)」。ノブさん、アキさんの兄弟です。二人とも広汎性発達障害と診断されています。アマチュアのミュージシャンとして、ギター1本でデュオを組んで自分たちの経験をユーモラスに歌っています。

■ その歌詞を紹介しましょう

 「広汎性発達ショータイム」(一部省略)

 レジのバイトしてるとき
 やたら僕に並ぶ人が居る
 後から知ったことだが
 いつもオツリが多めだった
 店に自腹切る

 “ 真面目・天然・大人しい ”
 職場の人によく言われる
 それを皮肉と気付かず
 真に受けしかもちょっと照れてる
 裏を読めないから
 拍車かかっちゃう

 バリアフリー、労働のバリアフリー
 バリアフリー、会話のバリアフリー
                     (ISRC:TCJPB1481105)

 この曲は、アキさんの実体験に題材をとったものだということです。
 アキさんは、もともと計算は得意な方だと言います。しかし、二つのことを同時にこなすのが苦手。バイト先で、忙しくなってくると混乱してしまい、つい釣り銭を間違えてしまう。差額は月に数千円にもなり、自腹で支払っていたという体験談に基づいています。お客さんは、オツリを多めにもらえるから、アキさんの方に好んで並んでいたというわけです。発達障害ではない人にも理解できて笑える、そして発達障害の人にも「あるある」と思ってもらえるような失敗談を選んで歌詞にしたのだということです。

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2016年01月15日 (金)先生をどう育てる?


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 学校の先生の若返りが進んでいる中で、先生をどう育てるのかが大きな課題になっています。文部科学省の中教審・中央教育審議会は、自ら学ぶ姿勢を持ち続ける先生を育てようという提言をまとめました。

■ 先生をとりまく環境は

 第2次ベビーブーム世代の教育のため大量に採用された先生たちが定年の時期を迎えていることで、全国的に急速な若返りが進んでいます。このため、管理職になる先生の不足が起き、これまで当たり前に行われてきた先輩が後輩の面倒をみるという教育内容や指導方法の伝承が難しくなってきています。一方、授業ではアクティブ・ラーニングという課題解決型の学習方法の導入が進められていて、力量の向上も問われます。中教審は、これらの課題に対応するための提言をまとめ、12月21日に馳文部科学大臣に提出しました。

■ 提言の柱は

 「教員養成」、「教員採用」、「教員研修」、これら3つの段階ごとの改革とそうした段階をつなぐ改革の4点に集約されます。具体的には、①「教員養成」の改革としては「学校インターンシップ」の導入を、②「教員採用」の改革としては都道府県ごとに作成してきた採用試験問題を国が作ることを、③「教員研修」の改革としては校内研修を充実させるため指導的教員(メンター)の配置を、④養成に取り組む大学、現場の学校、採用・研修を担う教育委員会をつなぐ協議機関として「教員育成協議会」をつくり、どんな先生を育てたいのか「教員育成指標」を設けることなどを求めています。

■ 「学校インターンシップ」とは

 これまでの教育実習に加えて、大学1年に入った時点から就業体験として行うものです。教育実習は教員免許状をとるための条件として、多くは4年生の春に4週間(高校の場合は2週間)程度行いますが、期間が短いこともあり、教科指導に偏りがちで、部活や事務などの実務を経験する機会に乏しいことが指摘されてきました。そこで先生をめざす学生に長期間にわたって学校に定期的に通い、子どもたちの遊び相手や先生の授業の補助、部活指導の手伝いなどを経験してもらおうというものです。就業体験を重ねることで、先生という職を選ぶことが本当に自分に合っているのかを考えてもらおうというのです。大学の判断によっては単位として認めたり、教育実習の一部に繰り入れたりすることもできるようにするとしています。ただ、多忙化が叫ばれている中、現場の受け入れ校や指導教員の負担が重くなり過ぎることはないのか、その点が大きな課題です。

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2015年11月26日 (木)高校に新設される「歴史総合」とは


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 学校での授業内容の見直しを検討している文部科学省の中教審・中央教育審議会は、7年後の2022年をめざして高校に日本史と世界史を組み合わせた「歴史総合」という新しい科目をスタートさせることになり、その具体的な内容について検討を進めています。
 
■ 新科目を作る意味とは
 
 高校の歴史教育を大きく転換しようというものです。これまでは、地理歴史科のうち、歴史は、小中学校で日本史を中心に学んでくることから、世界史が必修になっていて、日本史は選択科目になっています。これを改め、世界史の必修をやめる代わりに、日本史と世界史を組み合わせた新しい科目「歴史総合」を設け、必修にしようというものです。近現代を中心にこれまでのような年号を暗記するような教育から、自分たちで調べたり、議論したりして歴史の流れを大きくつかめるようにしようというのです。
 
■ どうして新設されるのか?
 
 それには、教育的な側面と政治的な側面の2つがあります。
 まず、教育的な側面ですが、必修になっている世界史に対して、日本史の場合は高校の3年間で学ばずに卒業する生徒が4割にのぼり、自分の国の歴史を知らずに社会に出るのでは歴史的常識が育まれないと批判されてきました。また、時代の古い順に学んでいくので、近現代史がおろそかになっているとの批判もあります。文部科学省が行った調査で、ほかの時代に比べて近現代史の成績が低いという結果も出ています。さらには、授業の仕方が暗記中心になっていて、生徒たちの興味や関心を引かなくなってきているのではないか、とも批判されてきました。そうした中、歴史教育の専門家からなる日本学術会議の分科会も、去年、日本史と世界史を融合し、近隣諸国との関係を学べる「歴史基礎」を新設するよう求める提言をまとめ、文部科学省に要望していました。
 
■ 政治的な側面とは
 
 一部の保守的な立場の人たちの間からは、歴史教育を、日本人としての誇りを取り戻すような内容にすべきだという動きが活発化していました。こうした流れを受けて、与党・自民党も、高校での日本史必修化を選挙公約に掲げてきました。また、一部の地方議会からも、求める声があがっていました。
 教科としての社会科は、戦前の国家主義への反省から戦後民主主義の象徴として誕生しました。これに対して、社会科ができた当時から見直しを求める声がありました。さかのぼると27年前、3回前の授業内容の見直し(学習指導要領改訂)にあたり世界史の必修化を理由に社会科を地理歴史科と公民科に分け、高校から教科としての社会科をなくした時から、そうした流れが目立ってきました。その後は、必修化された世界史に日本史的なものの見方を取り入れるなどして、日本史必修を求める声との調整がはかられてきました。そして、今回、歴史の専門家からの要望をおおむね受け入れる形で、日本史は必修ではないものの、世界史から日本史に軸足を移した歴史総合を作ることで議論を落ち着けたというわけです。
 

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2015年11月12日 (木)深夜に出歩く子に 大人は


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 前回 に引き続き、深夜に出歩きたくなる子どもたちの問題を取り上げます。深夜の町で子どもたちの姿を見かけたら、大人は何ができるのか。声をかけたいけれど、どう声をかけたらよいのかわからない、というのが正直なところではないでしょうか。その疑問について探ります。
 
■ アンケートの第2弾として
 
 学校再発見バラエティー あほやねん すきやねん では、大阪の中学校、高校合わせて6校で、こんな問いを投げかけました。「あなたはある悩みをかかえていて、家にも友だちの家にも居場所がなく、町をうろうろしています。だれかから『なにしてんの?』『どうしたん?』などと声をかけられるとしたら、どんな人なら心を開けると思いますか?」。合わせて3065人から回答がありました。最も多かったのが同世代に声をかけてほしいという答えで37%にのぼりました。次いで、祖父母の世代の23%、大学生など少し上の世代の12%の順で、親の世代は8%にとどまりました。中高生が心を開けるのは同世代であって、親世代にあたる大人は頼りにされていないことが浮かび上がってきました。
 
■ どんなやりとりを期待しているのか
 
 生徒たちに「理想とするやりとり」について自由に書いてもらいました。
同世代に声をかけてほしいという生徒は「どこかの明るいお店で悩みを聞いてもらって、少しすっきりしたくらいのときに、相手にも悩みがあれば聞いて、相手の意見と自分の意見の正しいところをあわせて、悪かったこと、よかったことをきっちり区別する」(中1女子)とか、「同年代の子に『どうしたん?』と声をかけられる。私は『ちょっと悩んでるねん』と答える。その子は『私も一緒に行くから、親に相談したら?』と言い、私はその子と一緒に親に相談する」(中1女子)、「黙って隣にいてくれる。あーした方がいい、とか言わずに無言でいてくれる」(中2男子)などの答えがありました。
 また、大学生など上の世代に話を聞いてもらいたいという生徒は「声をかけられてもすぐには心を開けないと思う。それでもイスなどに座ってゆっくり話を聞いてくれたらうれしいと思う。ゆっくりでも話を聞いてくれたら心が軽くなって家に戻る勇気が出るかもしれない」(中1女子)とか、「相手『どうしたん?』私『べつに・・・』『なんかあったん?』『・・・・・』『なやんでんの?はなしきくで!カフェでもいってきく!』そんな感じできいてほしいです」(中2女子)などと答えています。
 

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2015年10月23日 (金)深夜に出歩きたいのはなぜ?


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 この夏休み、大阪・寝屋川市の中学校1年生の男女生徒が、相次いで遺体で見つかる事件が起きました。今回は、私が出演している番組 学校再発見バラエティー あほやねん すきやねん (近畿圏のみ・ 総合  土曜日 午前10:50~午後0:00)が中高生を対象に行ったアンケート調査を手がかりに、この問題について考えます。
 
■ 子どもの声に耳を傾けて
 
 寝屋川の事件で亡くなった2人は、明け方近くまで駅前の商店街を歩いている姿が防犯カメラに映っていました。子どもたちだけで夜明かししていたことにとまどった方も多いのではないでしょうか。警察庁の統計では、深夜に町をうろついていて補導された少年は、去年(平成26年)1年間では43万人近くにのぼっています。深夜出歩くことについて、子どもたち自身がどう思っているのかを知りたいと、夏休みが明けた9月に大阪の中学校、高校を通じて調査をお願いし、4校の生徒合わせて1808人に回答をもらいました。
 
■ 深夜に出歩きたいかどうか
 
 「あなたは夜中に『家にいたくない』『友達と朝まで家以外の場所で一緒にいたい』と思ったことがありますか?」と尋ねました。すると、全体の29%にあたる中高生が「はい」と答えました。回答したのが学校を休んでいるわけではない生徒たちであることを考えると、これだけの割合にのぼることは、私はそれなりに多く、重みをもって受け止める必要があると思います。
 どんな時にそうした気持ちになるのか、「はい」と答えた生徒に自由記述で書いてもらいました。親子関係をあげた回答が最も多く、友人関係をあげる生徒もいました。
 親子関係をあげた中には「親同士がもめていて、家の中で居場所がないと思う時」(高2女子)、「親とケンカとかして、帰ってくんなみたいなオーラを出された時。そんなオーラ出してへんかもしらんけどそう感じる」(高2女子)、「お母さんとケンカした時とか、言いたい思いが言えない時とか」(中1女子)という答えがありました。家に居場所がないと感じた時、それを言葉に出せない時に夜の町に出たくなるということなのでしょうか。
 友人関係を上げた子からは「友達と親の前で話せないような話で盛り上がってしまった時」(高校生)とか、「学校とかで嫌なことがあった時。母に心配させたくないので」(中1女子)という回答がありました。友人と心ゆくまで話し込みたい、友人関係の悩みから自分を孤独に感じたりしていて心に空白ができている、といった時に出歩きたくなるのかもしれません。
 それだけに、子どもたちは心の居場所を埋めてくれる存在に引き込まれやすく、犯罪に巻き込まれやすいことがうかがえます。
 
■ 大人は何ができるのか
 
 その一つは子どもたちの声を受け止めることであり、もう一つは不審な人物から逃れるすべを伝えることではないでしょうか。二律背反にも思えることではありますが、子どもの命を守るためには、いずれも必要なことではないでしょうか。
 今回は、このうち子どもたちが自分で身を守る方法のヒントを紹介します。
 
■「逃げろ」と伝えるのはつらいけれど
 
 そうした活動に取り組んでいるのが西宮のNPO法人CAPセンター・JAPANです。声をかけられて「変だな」「嫌だな」と感じたときの危険回避のポイントとして4点あげています。
 
① 声をかけられても、おかしいと感じたら答えなくていい。
 子どもたちは「大人から話しかけられたら、答えなくてはいけない」と思っているかもしれないけれど、「嫌だな」と感じたら話さなくてもよいと伝えておこうというのです。
② 知らない人と話さなくてはいけないときは、手をつかまれない距離を保つ。
 相手が手を伸ばしてもつかまれない距離、相手と自分の手を伸ばしたぐらいの間隔をとって話を聞くようにする。この距離を保っておけば、相手がつかもうとしてもとっさに逃げられるのだと言います。
③「変だな」「嫌だな」と感じたら話の途中でも話すのをやめ、その場を離れる。
 たとえ話の途中であったとしても、「知らない人と話してはダメと言われています」などと話を打ち切って、その場を離れてもいいと教えておくことが大事なのだと言います。
④ 安心できる場所まで走って逃げる。
 安心できる場所とはどこか、あらかじめ確認しておくことが必要で、避難場所としてはコンビニエンスストアや公共施設、「こども110番の家」などが考えられるということです。
 
■ 深夜だけが危ないわけではない
 
 寝屋川の事件では、夜が明けて以降に事件に巻き込まれています。そう考えますと、夜の時間帯ばかりに子どもが連れ去られる危険があるわけではありません。警察庁の調べによりますと、子どもの連れ去り事件の83%が日中の時間帯に起きていて、しかも74%が自宅から1キロ未満で起きています。そうした意味からも、日頃から心構えをしておくことはたしかに有効だし、学校で折にふれて子どもたちに話をしておくことは必要なことではないでしょうか。
 
 次回は、町中で、子どもたちにどう声をかけたらよいのかを考えます。
 
hayakawa.jpg  早川信夫(はやかわのぶお) 
 
1953年福島県生まれ。教育・文化担当の解説委員。
 臨時教育審議会以来、20数年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組 時論公論 や おはよう日本「ここに注目!」、「暮らし◇(きらり)解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。関西地方向けの番組  学校再発見バラエティーあほやねん すきやねん にも出演、“のぶにぃ”の愛称で若者に人気上昇中。
 
 

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2015年09月04日 (金)大学入試"新"テストの行方と課題


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 今の大学入試センター試験に代わる新しい大学入試の基本的な考え方が、8月27日に開かれた文部科学省の専門家会議でまとまりました。思考力や判断力を重視し、一点刻みの得点争いをやめようというもので、25年前、共通一次試験から大学入試センター試験に切り替わって以来の大きな転換です。

■ 今なぜ、大学入試改革なのか?

 それは、教育現場の事情と政府の思惑とが背景にあります。
 教育現場は2つの悩みを抱えています。受験生に人気があり、偏差値が高いブランド型の難関大学は、受験勉強で力を使い果たし、勉学意欲に乏しい学生の存在が悩みです。東京大学や京都大学が来年から定員の一部で推薦入試を実施するのも、そうした危機感の表れです。一方、受験生が選ばなければだれでも入りやすい大衆型の大学では、推薦や自己推薦型のAO(アドミッション・オフィス)入試など学力テストを経ないで入学してくる学生の学力の底抜け、つまり、大学の授業についていけるだけの学力のない学生の存在が悩みです。私立大学に限ってみると、一般入試を経ずに大学に入学する学生は、ほぼ半数を占めるまでになっています。学生の学習意欲の低下と学力の底抜けが、大学全体を覆う課題として意識されているのです。

■ 政府の思惑とは

 日本の産業を支える人材の育成です。経済再生を掲げる今の政権にとっては、グローバル経済を担う人材の育成が欠かせません。産業界からの要請もあって、自分の意見を持って海外の人たちと渡りあえる、そんな人材像が意識されています。社会の中には答えのない問題がたくさん転がっていて、入試で答えのある問題に労力を使い果たしている場合ではない、そんなところでしょうか。

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2015年08月21日 (金)課題は山積 高校版「学力テスト」


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 高校と大学をつなぐ2つのテストについて議論している文部科学省の専門家会議は、高校版の全国学力テストとも言える新しいテストについての基本的な考え方をまとめ、8月5日にその内容を示しました。まだ議論の途上ですが、どんな方向性が示されたのか、その内容と今後の行方について考えます。

■ 今議論されているのは

 大学に進学を希望する高校生を対象にした「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と、高校生の基礎的な学力を判断するための「高等学校基礎学力テスト(仮称)」(以下、基礎テスト)の2つのテストの具体的な枠組みについてです。文部科学省は、年内に検討結果をまとめる方針ですが、この夏に予定している中間報告を前に、会議に基礎テストについての考え方を示しました。

■ 高校版「学力テスト」は

 高校生自身が学習の基礎的な達成度をつかむために行い、このテストを受けることで、学習意欲を呼び起こし、学習の改善を図るために行うとしています。卒業後、大学や社会に出た時に困らないだけの基礎的な力がついているかどうか、自分で確認してもらおうというのです。小中学校の全国学力テストと違って、対象の学年全員に受けさせるのではなく、希望する学校ごとに受けられるようにするとしています。大学入試用にはもう一つのテストが検討されていますので、こちらの基礎テストは、それほど学力を問わない大学の推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試で大学に進学したり、就職したりするためのものという位置づけです。会議で具体的に示されたわけではありませんが、平均的な学力層とそれより学力の低い層の生徒を対象にしたものと言えます。

■ 実施時期は

 本格実施は、8年後の2023(平成35)年からです。現在、高校の授業内容が新しい内容に切り替わったばかりですので、当初予定していた4年後の2019(平成31)年からの実施は見送り、次に新しい授業内容に切り替わる23年までは、試行期間にとどめるとしています。試行期間中は、テストの結果を入試や就職に活用はせず、本格実施まで待つことにします。このテストの実施回数は、当初は高校2・3年生の夏から秋にかけて年に2回程度ですので、試行の対象になるのは今の中学校1年生、本格実施になるのは今の小学校3年生からになります。

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2015年07月16日 (木)新科目「公共」で進むか「主権者教育」


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 選挙権が得られる年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が6月17日に成立し、「主権者教育」の充実への関心が高まっています。今回は、「主権者教育」をめぐる学習指導要領改訂の動きと学校の対応について考えます。

■ 動き出した高校の新科目「公共」

 選挙権年齢引き下げの動きを受けて、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)で、高校の「公民科」の中に「公共」という新科目の創設が議論されています。まだ議論が始まったばかりで、科目のイメージはおぼろげですが、生徒が「政治的主体となること」「法的主体となること」「倫理的な主体となること」「地域社会の構成員となること」など8項目を例として示し、これまでの「公民科」だけでなく、各教科にまたがる内容を含むものとして検討されています。また、学習指導の例として、討論やディベート、模擬投票・模擬選挙、模擬裁判などをあげ、それらの活動を進めるために選挙管理委員会や弁護士など外部の専門家を招き入れるとしています。

■ なぜ新科目創設か

 もともと自民党が子どもたちの公共心や社会性を育むためとして公約に掲げてきたもので、小中学校で道徳を「特別の教科」に格上げしたのと連動した形で議論されてきました。去年の11月、選挙権年齢引き下げの動きを受けて、下村文部科学大臣が、中教審に対して創設の検討を求めたものです。そのねらいとしては、生徒たちに国や社会に責任を果たせるような教養や行動規範を実践的に身につけさせるためとしています。

■ 検討にあたっては

 「主体的に社会に参画し自立して社会生活を営む」とすることが若者を社会的な秩序の中に組み込んでいくという発想にとどめることなく、自分の意見を声高に主張するだけでなく、反対意見にも耳を傾け、必要に応じて自分で調べて、意見をまとめる。時としては、政治や社会に対して批判的な意見を持つことも含んだ幅のあるものとして考える必要があります。
 その意味では、前回取り上げたドイツの「ボイステルバッハ・コンセンサス」と呼ばれる政治教育の原則は大いに参考にできるのではないかと思います。

■ 教科の枠組みの見直しも

 「公共」創設の議論の中で、「地理歴史科」と「公民科」を分けたままで議論を進めてよいのかと考え直す必要があるように思います。大学では、学生が高校までに「社会科」をキチンと学んできていない弊害が指摘されています。歴史は学んできたが、地理的な空間の認識ができていないとか、地理は知っているけれど、それぞれの地域にある歴史的背景を知らないとか、歴史と地理、倫理、政治・経済を幅広く学んできていない今の大学生は、「社会科」で学んでいた頃の大学生に比べ、社会で生きていくための知識を統合化できていないというのです。教科を分けてきたことの是非を検証する時期が来ているように思います。

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2015年07月02日 (木)注目集まる「主権者教育」


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 選挙権が得られる年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が6月17日に成立し、「主権者教育」の充実への関心が高まっています。2回にわたって、「主権者教育」について取り上げます。

■ 法律が改正されたことで

 来年6月19日に施行になり、国政レベルでは来年夏の参議院議員選挙から実現する見通しです。選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられただけでなく、未成年者であっても、連座制の対象になる買収などの悪質な選挙違反をした場合、原則として検察庁に送られ、成人と同じに裁判を受けることになります。

■ 選挙権年齢が引き下げられたきっかけは

 憲法改正の手続きを定める「国民投票法」の改正でした。去年成立した改正国民投票法では、施行から4年後までの間に国民投票の投票年齢を「18歳以上」に引き下げることが盛り込まれました。それに合わせて、選挙権年齢についても「施行後、速やかに必要な法制上の措置を講じる」と附則で定められ、今回の改正に至りました。
 選挙権の拡大は、過去においては大正デモクラシーと呼ばれる市民運動や婦人参政権運動といった国民運動の盛り上がりを受けて進められてきました。しかし、今回は、憲法改正をめざす政治の側が若者を取り込むことで改正に弾みをつけたいという思惑から、いわば「政治主導」の形で進められてきたのが特徴です。
 とは言え、与野党が共同提出するに至ったのは、若者の投票率の低迷がありました。戦後最も低い投票率52.66%にとどまった去年の衆議院議員選挙で、20歳代の投票率はすべての年代の中で最も低い32.58%にとどまり、最も高い60歳代(68.28%)の半分にも達しませんでした。これでは、若者の声が政治に反映されない。選挙権年齢の引き下げを若者の政治参加の起爆剤にできないか、という政治の側の期待感が後押ししました。

■ 高まる「主権者教育」への期待

 しかし、選挙権年齢を引き下げただけで、若者の政治参加が進むほど簡単ではありません。そこで、浮上してきたのが「主権者教育」です。
 選挙や政治参加については、高校の学習指導要領では公民科で学ぶことが規定されています。内容は、 ▽ 憲法に定める政治のあり方と国民生活の関わりや政治参加の重要性 ▽ 国会や内閣、裁判所などの政治機構の仕組み、それに ▽ 望ましい政治のあり方や政治参加のあり方などです。
  しかし、選挙制度の仕組みについてはひと通り教えることにはなっているものの、現実的な課題を取り上げて生徒に考えさせたり、将来選挙をすることを想定した実践的な取り組みが進んだりしているとは言えません。実際には、先生の取り組み方次第で学校ごとに指導内容にバラつきがあるのが実情です。
 

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2015年06月04日 (木)全国学力テスト どんな問題?こんな問題


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 ことしで9回目となる全国学力テストが、4月21日、全国一斉に行われました。今回は、出された問題の一つから垣間見える文部科学省が考える学力について探ります。 

■ 結果の活用をめぐって

 子どもたちを競わせることで学力の向上につなげたいと考える自治体トップの発言や行動、教育委員会の対応などによって毎年のように各地で騒ぎとなります。ことしも、テスト実施を前に、大阪府教育委員会が中学校3年生の結果をもとに高校入試の内申点の評価に反映させるという方針を示しました。学校の授業の成果を検証し、今後の改善に生かすためとしてこのテストを始めたいきさつから、文部科学省は本来の趣旨を逸脱するおそれがあるとして、そうならないように8月末に予定している結果の公表まで協議を続けるとしています。

■ 結果の公表とは言っても

 学力テストが入試問題と違うのは、問題の軽重や性質ごとに配点が決められているわけではないので、結果が点数で出てこないことなのです。つまり、それぞれの問題ごとに正答率が示されるだけで、100点満点で何点とはなりません。すぐに入試に使えるという設計にはなっていないのです。また、4月に実施するテストですので、中学校の場合、出題範囲が2年生までにとどまっていて、3年間の成績を判断する材料とはなりにくいという問題もあります。大阪府教育委員会の方針と文部科学省がどう折り合いをつけるのか、推移を見守りたいと思います。

■ では、どんな問題が

 ことしは、例年の国語と算数・数学に加え、理科のテストも行われました。そんな中、国語Bの一つの問題にこだわってみていきたいと思います。
 今さらではありますが、A問題とB問題について説明します。ことしも、国語と算数・数学では例年と同じく、問題の性質ごとにA問題とB問題とに分けて出題されました。A問題は、従来型の学力、基本的な知識を問う問題をさします。こどもからすれば、ある程度覚えておけばできる問題が中心です。B問題というのは、活用力、覚えた知識をどう生かすのかを測ろうというものです。今の時代、覚えた知識はどんどん新しいものに塗り替えられていく。そういう時代を生きていくには、ただ多くの知識を持っているだけではダメで、それを使いこなして、問題を解決していく力が求められているというわけです。答えのないような問題でも、自分の持っている知識をフルに動員して問題を解決していくような力がこれからの新しい学力だと考えられているのです。

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2015年05月08日 (金)教科書検定はどう変わったのか


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 来年4月から中学校で使われる教科書の検定が終わり、4月6日に開かれた審議会で、検定に申請したすべての教科書の合格が決定されました。

■ 今回の教科書検定は

 おもに来年4月から中学校で使われるすべての教科の教科書など104点が対象になり、いったん、不合格になった「社会」の2点も含めて、最終的にはすべてが合格になりました。検定の結果、どう修正されたかはのちほど述べますが、「社会」のすべての教科書に尖閣諸島や竹島の記述が盛り込まれ、領土に関する記述の量は2倍に増えました。

■ 今回の検定、どう変わった?

 2点の変更がありました。一つは、新しい検定基準が初めて適用されたことです。論議を呼ぶことの多い「社会」で見てみますと、これまでの検定基準に3点加わりました。① 評価の定まっていない歴史的事象について特定の事柄を強調しすぎないこと ② 近現代について通説的な見解がない場合、通説的な見解がないことを明示すること ③ 政府の統一的見解がある場合は、それに基づいた記述をすること、これらの3点です。また、教科書をつくる指針となる「学習指導要領の解説書」が改訂され、それに基づいた記述も求められました。解説書では尖閣諸島と竹島を「我が国固有の領土」と明記することを求めています。このように記述の厳格化が求められたのが特徴です。

■ もう一つの変更点は?

 教育基本法の目標や学校教育の授業内容を規定している「学習指導要領」の目標などに照らして重大な欠陥がある場合は、不合格とすること。どういう意味かわかりにくいと思いますが、教育基本法の目標には、道徳心を培うことや伝統と文化を尊重すること、我が国と郷土を愛することなどが掲げられています。こうした目標に反する場合は不合格にするというものです。教科書作り全体を通してこれらの目標が意識されているかどうかを確認するという意味合いがあります。

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