夜叉ヶ池(2006年1月29日放送)



福井と岐阜の県境の稜線上にある夜叉ヶ池は、流れ込む川も流れ出す川もない小さな池です。池には世界でもここだけで見られるヤシャゲンゴロウがすんでいます。長い年月の間、独自に進化を遂げたヤシャゲンゴロウは山の上の隔離された環境で子孫を残してきました。また、標高1000mほどの池の周辺は、強い風の通り道となっているため、標高のわりに高山の植物が多く見られます。独特の環境が育んだ動植物を1年を通して見つめます。

新緑の夜叉ヶ池
新緑の夜叉ヶ池
新緑のブナの林に囲まれた夜叉ヶ池です。標高1099m、周囲230mの小さな池です。

ヤシャゲンゴロウ
ヤシャゲンゴロウ
夜叉ヶ池だけに生息するヤシャゲンゴロウです。体長は1.5cm。横幅が広いのが特徴です。雪解けから晩秋まで池で見かけることができます。

モリアオガエル
モリアオガエル
初夏、池の周りの木ではモリアオガエルの産卵が行われます。

モリアオガエルの卵塊
モリアオガエルの卵塊
池に張り出した木に産み付けられたモリアオガエルの卵です。卵から出たオタマジャクシは池に落ちていきます。

トクワカソウ
トクワカソウ
池の周辺はお花畑が広がります。5月、雪解けの山肌に咲くトクワカソウです。北陸から近畿地方にかけて分布しています。

冬の夜叉ケ池
冬の夜叉ケ池
冬、池は雪で覆われます。ヤシャゲンゴロウは池の底の落ち葉の間に身を寄せ冬を越しています。


語り 大橋信之アナウンサー
取材地・取材時期
交通手段
●取材地 : 夜叉ヶ池(福井県南越前町)
●取材時期 : 平成17年4月下旬、5月中旬、6月中旬、7月上旬、8月上旬、10月下旬、12月上旬。
●交通手段 : 夜叉ヶ池の登山口は福井県南越前町と岐阜県揖斐川町の2カ所があります。
福井県側の登山口へは、北陸自動車道・今庄インターから車で40分。登山口から夜叉ヶ池までは徒歩2時間半。
岐阜県側の登山口へは、名神高速道路・大垣インターから車で2時間。登山口から夜叉ヶ池までは徒歩2時間です。
登山が可能なのは5月から11月頃まで。冬季は積雪のため登山道が閉鎖されます。
どちらも登山口までの公共交通機関はありません。
ヤシャゲンゴロウ保護のため、池の周りでのキャンプは禁止されています。
登場する地形
動物・植物
登場する地形
●夜叉ヶ池 : 福井県南越前町と岐阜県揖斐川町の県境の標高1099mの稜線上にあります(池は福井県側になります)。周囲230m、水深7mの池です。数十万年前に起きた地滑りによってできた窪地に水がたまり、池になったと考えられています。
登場する動物
●ヤシャゲンゴロウ(コウチュウ目ゲンゴロウ科) : 横幅が広いのが特徴です。夜叉ヶ池だけにすむ固有種です。春、雪解けとともに活動を開始。5月下旬から6月上旬にかけて交尾し、池の周りのコケや倒木に産卵します。6月中旬〜下旬、卵からふ化し幼虫になります。幼虫は池の中でおよそ1ヶ月間成長し、その後、上陸して土にもぐってさなぎになります。8月には、成虫になって池に出てきます。この時期に世代交代すると考えられています。11月頃、池の水温が低くなると、池の底の落ち葉などの間に入り越冬します。
●モリアオガエル(無尾目アオガエル科) : 体長5〜8cm。森林に生息するカエルです。6月の産卵時には夜叉ヶ池の周りの木々に、百以上の卵の塊が見られます。卵塊は2、3週間後には柔らかくなり、オタマジャクシが卵塊から下の池に落ちていきます。
登場する植物
●ブナ(ブナ科) : 山地に生える落葉高木で高さは20〜30m。夜叉ヶ池の周りに広がる森では、風が強く雪が多いために低木のブナも多く見られます。
●カタクリ(ユリ科) : 日当たりの良い落葉広葉樹林に群生する多年草で、夜叉ヶ池では5月頃にうす紫色の花を咲かせます。その後、まもなく葉や花は枯れ、球根(鱗茎)を地中に残して、翌年の春まで長い眠りにつきます。
●ミツバツチグリ(バラ科) : 夜叉ヶ池では5月頃、直径1cm〜1.5cmの黄色の花をつけます。ツチグリに似て根茎が肥大しますが、葉が3枚であることからこの名がつけられています。
●トクワカソウ(イワウメ科) : 北陸から近畿地方に分布し、夜叉ヶ池では5月頃、直径2.5cm〜3cmの花をつけます。関東地方などに分布するイワウチワに似ていますが、葉の形が微妙に異なります。
●ニッコウキスゲ(ユリ科) : ゼンテイカともいいます。夜叉ヶ池周辺では、岐阜県側の稜線の急斜面に群生しており、6月中旬から7月上旬にかけて一面のお花畑になります。
●アカモノ(ツツジ科) : 日当たりの良い高山や深山に生える常緑低木。7oほどの釣り鐘形の白い花が下向きに咲きます。
●イブキトラノオ(タデ科) : 山地や高原の日当たりの良い草原に生える多年草。滋賀県の伊吹山に多いことから名前がつけられています。
より詳細な情報の
入手先
◇夜叉ヶ池への入山について
福井森林管理所 0776−23−0200
◇夜叉ヶ池の動植物について
福井市自然史博物館 0776−35−2844
担当者より
番組のアピール
夜叉ヶ池には春から秋まで、付近の山岳風景と動植物を見るために多くの登山客が訪れます。しかし、登山客の増加による池の環境の悪化で、ヤシャゲンゴロウは絶滅の危機に瀕しています。地元ではボランティアが連日、池まで登って、登山者に池の環境の保護を呼びかけています。こうした地道な取り組みによって夜叉ヶ池の自然が守られているのです。


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