多 摩 川


 

多摩川は、東京、川崎の人口密集地帯を流れる都会の川です。
高度経済成長期には、生活排水による汚染にさいなまれましたが、近年水質が回復するとともに、生き物たちも帰ってきました。
 春から夏の多摩川は、生き物たちの遡上の季節。
通勤電車の走る鉄橋の下、アユがジャンプして流れを乗り越え、
ウナギやテナガエビが川岸をよじのぼります。巨体をはずませるのはウグイの仲間、マルタ。マルタは、激しい流れを乗り越え、
天敵のカワウのくちばしを逃れて、中流まで遡上し、激しい水しぶきをあげて卵を産みます。
 生命の躍動にわく、復活の川の自然をみつめます。

 

首都圏を貫き、東京湾に注ぐ多摩川です。
水質改善で
100万匹ものアユたちが上る川になりました。
浅瀬では、ウグイの仲間、マルタが産卵します 源流に広がるのは、再生された人工林です。
人工林から流れ出る澄んだ水が川を支えています。 闇にまぎれてエビ・カニ・ウナギも上ってきます。川の命が再び輝き始めました。

 

(語り)

館野 直光アナウンサー

(取材地・取材時期)

マルタ
@遡上の撮影場所は、大田区田園調布の調布取水堰の魚道。取材時期は3月末から4月中旬です。調布取水堰へは、東急東横線多摩川駅より徒歩5分。ただし、堰堤の周りは、危険なため、立ち入り禁止。撮影は、堰堤の管理者である東京都水道局の許可を得て、ライフジャケット着用のもと行いました。
A産卵の撮影場所は、世田谷区。東名高速道路の橋梁の上流にある浅瀬。取材時期は遡上と同じです。マルタの産卵は、二子玉川付近から調布市の二ヶ領上河原堰堤付近にかけて点在する瀬で、日によって場所を変えながら行われます。
B稚魚の撮影場所は、世田谷区二子玉川の二子橋の下です。取材時期は、遡上、産卵から半月ほど遅れます。二子橋へは、東急田園都市線二子新地駅より徒歩5分。マルタの稚魚は、橋脚の下に限らず、産卵場所の近くの流れの緩い場所に、群れを作っています。
●アユの遡上、コサギの補食、カワウの補食、夜の遡上●
 撮影は、マルタの遡上と同じく、大田区田園調布の調布取水堰。取材時期は、4月中旬から5月中旬にかけてです。調布取水堰へは、東急東横線多摩川駅より徒歩5分です。
●源流の森
 撮影場所は、山梨県丹波山村、小菅村の水道水源涵養林です。石清水の流れは、小菅村 の白糸の滝の付近で撮影しています。小菅村、丹波山村へはそれぞれJR奥多摩駅より バスが出ています。
(登場する地形、生き物、植物) ●多摩川
 全長138km。山梨県の笠取山より流れ出し、中流部では東京都を東西に横切って、羽田空港の脇で東京湾に注ぎます。
流域人口425万人。年間にのべ2000万人以上の人が訪れる都市の川です。
●マルタ
 マルタウグイとも呼ばれるウグイの仲間です。海で暮らしていますが、産卵期だけは川に遡上し、浅瀬で卵を産みます。高度経済成長期以前(昭和30年代まで)は、多摩川にもたくさんいましたが、水が汚れると、姿を消しました。再び産卵群が確認されたのは、1990年代に入ってからの頃です。
アユ(稚魚)
 秋に川で生まれて、すぐに海へ流下し、翌春に遡上してきます。アユの遡上数は年によって激しく増減しますが、平成14年の春は、多摩川には110万尾以上のアユが上った推計されています。高度経済成長期には多摩川から姿を消しましたが、1970年代 後半から戻り始めました。
●テナガエビ
●ウナギ(稚魚)
●モクズガニ(稚ガニ)  
●カワウ
●コサギ
(より詳細な情報の入手先 ) ●多摩川
 多摩川に関しての詳しい本=「新多摩川誌」発売は山海堂
(03-3816-1618)定価\49350
 多摩川に関して詳しいHP=国土交通省京浜工事事務所        
●アユ
 アユの一般的な情報に関しては、多数書籍がでています。
多摩川のアユの遡上に関して は、
東京都水産試験場(03-3433-3254)が毎年の遡上数調査のデータを持っています。
●マルタ
 多摩川のマルタに関して詳細な研究はありません。
マルタの生態に関しては、 ウグイの研究者、水産大学校講師の酒井治巳氏に問い合わせました。
●源流の森
 ハイキングコースなども整備されています。問い合わせは、多摩川源流研究所(0428-87-7055)または、小菅村役場(0428-87-0111)まで。 


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多摩川下流部では、流れている水の半分ほどが、下水処理場から流れ込んだ水です。そんな川に生き物が住めるのか?疑問を感じながら取材に出かけた私が目にしたのは、圧倒的な数の命の洪水でした。中でも驚いたのはマルタの産卵です。
北国のサケの産卵を思わせるような豪快な産卵が、都会の真ん中で行われていたのです。
 30年前の多摩川は、生活排水の汚れで、洗剤の泡に覆われた、死の川だったそうです。「川は、よみがえらせることができる」多摩川は、環境再生への希望を与えてくれました。