信州 志賀高原


 



信州・志賀高原は300万年前に始まった火山活動が造り出した
緑の大地です。火山は70余りの湖沼を残しました。
そこは生き物が集う「天上の楽園」です。
霧の合間をぬって繁殖活動を行うカオジロトンボや、それらの
昆虫を捕食するモウセンゴケ。夜には温泉が湧き出す川に
ゲンジボタルが乱舞します。
高原に訪れた短い夏、水辺の生き物の営みを見つめます。



志賀高原を代表する四十八池は 大小70余りの池からなる高層湿原。生き物たちが集う“天上の楽園”です。
溶岩流が川を堰き止めてできた大沼池。水面がコバルトブルー色をしているのは溶岩からとけ出した硫酸イオンのためです。
モウセンゴケは葉に生えた赤いせん毛から出す粘液で虫を捕まえ、消化吸収します。養分の乏しい溶岩台地に生きる植物ならではの知恵です。
ルリボシヤンマの仲間のヤゴです。
高冷地に棲むトンボは、水が冷たく、餌も少ないため、成虫になるまで2年から3年かかります。
高冷地の湿原などに棲む高山性トンボのカオジロトンボです。白い顔が特徴です。
日本一高い標高に棲むゲンジボタ
ルです。
ゲンジボタルの幼虫は
冬には、3メートルの積雪になる豪雪地帯で、温泉に守られ冬を越します。

語り

石井 庸子(フリーナレーター)


取材地・取材時期・交通手段

●取材地:志賀高原(長野県下高井郡山ノ内町)
●取材期間:平成15年7月17日〜22日 29日〜8月2日
●交通手段:自動車 上信越自動車道 信州中野ICから40分
          電車 JR長野駅下車 長野電鉄バスで1時間10分
               (長野電鉄バス026-295-8050)
登場する生き物、植物 志賀高原
長野県北東部、群馬県との県境に位置し、上信越高原国立公園に属します。標高1300mから2300mにわたって、森と山と湖沼が広がる緑豊かな高原です。これらは300万年前に始まった火山活動が造り出しました。現在、活動はおさまっていますが、湧き出す温泉などから、大地の鼓動を感じることができます。
●四十八池
標高1820mにある高層湿原。火山活動で流れ出した溶岩流が冷えて固まり、凸凹の地形を造り出し、そこに雨水が溜まってできました。池の数は大小合わせて70近く(中には直径30cmほどの小さな池も含まれるため数え方はまちまちです。70という数字は志賀高原観光協会発表)。長野県の天然記念物に指定されています。6月はミズバショウ・ヒメシャクナゲ、7月はキンコウカ・イワショウブ、8月はミズギクと水辺を様々な花が彩ります。湿原を赤く染めているように見えるのはモウセンゴケ。葉に生えたせん毛から粘液を出し、虫を捕らえて消化吸収します。8月上旬には直径5mmほどの可憐な白い花を咲かせます。四十八池へは前山リフトを利用すると便利です(運行期間と時間は要問合せ)。リフトを降りてから徒歩40分ほどで着きます。道は平坦で、途中鳥の声が楽しませてくれます。ルリビタキやコマドリの姿を見かけることもあります。ただし天候が変わりやすいため、防寒と雨対策は必要です。また雨の後は道がぬかるんでいることもあるので、しっかりした靴の準備をしてください。
カオジロトンボ
トンボ科カオジロトンボ属。体の長さは約3.5cmほどで、日本、朝鮮半島から中国東北部、アムール川流域にかけて生息します。国内では北海道と、東北と上信越の限られた山岳に生息する高山性トンボです。
特徴は白い顔。7月下旬から8月にかけて四十八池ではオスが縄張り争いをしている姿を見かけます。また交尾の後、オスが産卵するメスを見守り、他のオスに奪われないように警戒します。
ゲンジボタル
標高1600m付近を流れる岩倉沢川に発生します。ゲンジボタルの生息限界は1000m前後といわれ、志賀高原のホタルは大変珍しいとされています。その発生期間も長く、5月から9月にかけて夜空を舞うホタルを観察することができます。志賀高原の夜は冷え込こみますので、観察には防寒着の用意が必要です。
ホタルの生息を可能にしたのは、川の3カ所から湧き出す温泉です。常に25度近い温泉が湧出しており、3mも雪が積もる真冬にも水温は20度を下回ることはありません。志賀高原のゲンジボタルは温泉に守られているのです。
より詳細な情報の入手先 ●長野県志賀高原自然保護センター tel 0269-34-2133
 志賀高原全般の自然について情報が得られます。またガイド付きトレッキングツアーも実施しています。
●志賀高原観光協会 tel 0269-34-2404
 担当者番組アピール 登れど登れど四十八池は霧。梅雨明けが予想より遅れて、ロケは天候に泣かされ続けました。けれども霧がかかるシーンはハイビジョンならではの美しい映像が撮れたと思っています。子孫を残そうとトンボやホタルが見せる“いのち”の輝き。生き物たちの息遣いが伝わればと願っています。

 




「四十八池は今日も霧だった〜♪」。夏の志賀高原といえば、涼しくてカラッと晴れて…、そんなイメージで始まったロケ。しかし梅雨明けが遅れに遅れ、天候に泣かされ続けました。朝4時に出発して、四十八池に登るも霧・霧・霧。霧が晴れるのを待つ間に首に巻いたタオルがしっとりと…。でも無人の四十八池はまさに“天上の楽園”でした。ゆっくりと流れてゆく霧。そして姿を現す無数の池。あの光景だけは忘れられません。
霧で悩まされたのはトンボの撮影。トンボは天候の変化にとても敏感で、霧で日が陰ってくるとさぁ〜と林に隠れてしまいます。撮影は霧の合間を縫って根気強く行いました。トンボたちも一瞬の晴れ間を狙って、交尾・産卵をし、未来にいのちを伝えます。生き物たちの強さを感じずにはいられませんでした。






この番組で初めて“ホタルの乱舞”を知りました。真っ暗闇のなか、淡い光が無数に舞うようすには、思わず息をのみました。ただしカメラは人間の目で見た映像をそのまま伝えることはできません(ヒトの目は本当にスゴイ!!)。そこでロケは日没後すぐの薄暮れが勝負になりました。毎晩ホタルの乱舞を眺めていると不思議な気分になります。彼らはオスメスが互いに巡り会うために光を発するのです。つまり目の前はさながら“壮大なお見合いパーティー”。志賀高原は標高が高く寒いために、日没後、ホタルが活動できる時間も限られています。そんななか一所懸命に光を発してメスを求めるオス。そしてメスが応える優しい光。何ともロマンチックな光景でした。



最後に…
 志賀高原といえば
冬のスキーを思い浮かべる方も多いかと思います。
ぜひ夏の志賀高原にも目を向けてみて下さい。
そこには短い夏を一生懸命生きるいのちの輝きがあります。
                          長野局 制作担当ディレクター