奈良 春日山原始林(2004年7月11日放送)


奈良盆地と春日山
奈良盆地東部の春日山。山麓には千年以上も人の立ち入りが制限され、大切に守られてきた春日山原始林が広がっています。幹の太さ3m以上の巨木が1500本近くあり、中には樹齢千年を超えるものもあります。常緑の広葉樹林に、針葉樹が混在し、1000種類以上の動物が暮らす豊かな森です。生き物たちが新しい命を育む初夏の森を訪ねます。

森最大の巨木・スギ
森最大の巨木・スギ
樹齢は優に千年を超え、この森でもっとも古いとされるスギの巨木です。度重なる落雷の被害を受けてきましたが、今年も緑の葉を茂らせています。

滝
巨木は豊富な水をたくわえ、森は潤いに満ちています。地下からわき出た水は、生き物たちを招きます。

オオセンチコガネ
オオセンチコガネ
ルリ色に輝く美しい昆虫。じつはフンコロガシの仲間です。森にすむシカやイノシシのふんを分解し、豊かな土壌を作ります。

モリアオガエル
モリアオガエル
指先の強力な吸盤を利用して木登りするモリアオガエルです。春日山原始林には、数多く生息しています。


語り 内藤裕子(ないとう・ゆうこ)アナウンサー(大阪放送局)
取材地・取材時期
交通手段
●取材地 : 奈良県奈良市春日野町 春日山
●取材時期 : 2004年6月
●交通手段 :
・近鉄奈良駅・JR奈良駅から奈良交通バスで、「春日大社本殿」停留所下車。
・マイカーの場合、奈良奥山ドライブウェーで、春日山原始林内の一部を通行できます。ただし、ドライブウェー(遊歩道)以外の立ち入りは、原則として禁止されています。
登場する生き物
植物地形など
登場する地形
●春日山 : 花山(標高498m)を中心に、南に香山(高山)、西に御蓋山(標高283m)があり、これを一括して春日山といいます。御蓋山山麓にある春日大社の神山です。841年に「応禁制春日神山之内狩猟伐木事」という太政官符により、狩猟・伐採が禁じられ、積極的な保護が行われた結果、現在の原始林が保たれてきました。
登場する動物
●キビタキ : 全長13〜14cmほど。東南アジアから日本に飛来する夏鳥です。メスが巣で卵を温めている間、オスは巣の周囲を飛び回ってさえずり、なわばりを主張しています。
●カワラヒワ : 全長14〜15cmほど。北海道から九州までの全域に分布する留鳥です。飛ぶと、黄色い翼が目立ちます。
●ゲンジボタル : 体長12〜18mmほど。ホタルの光は、求愛の合図です。成虫は水しか飲むことができず、寿命は2週間ほど。その間にパートナーを見つけ、卵を産みます。
●モリアオガエル : 一日のほとんどを木の上で過ごす珍しいカエルです。池に張り出した木の枝に卵を生みます。卵からかえったオタマジャクシは、そのまま真下の池に落下します。
●オオセンチコガネ : 動物のふんを主食にする、いわゆるフンコロガシです。春日山に住むものは、美しいルリ色の光沢を持ちます。シカのふんを分解し、森の土壌を豊かにする大切な役割を担っています。
●ニホンジカ : 奈良公園内には数多く生息し、人間になれていますが、原始林内に住むシカは警戒心が強く、なかなか姿を見せません。繁殖期以外は、オスとメスは別々の群れを作ります。
登場する植物
●ツブラジイ : ブナ科。常緑の高木広葉樹。春日山原始林で最も多く見られる木です。
●スギ : スギ科。春日山原始林には、数多くの杉の巨木が生えています。16世紀に豊臣秀吉が植樹したという記録も残っています。
●ムラサキシキブ : クマツヅラ科。秋ごろにつける紫色の美しい実が、「源氏物語」の作者を連想させ、この名前がつけられたと考えられています。
●ナギ : マキ科。春日大社のナギ林は天然記念物に指定されています。昔から神木として敬われてきましたが、春日山原始林では数が急増し、森の植生を変化させるほどになっています。
担当者より
番組アピール
春日山原始林は、春日大社の神域として人の立ち入りが制限されており、大切に守られてきました。番組でご紹介した映像の一部は、特別に許可を得て、立ち入り禁止区域で撮影した貴重なものです。モリアオガエルの産卵風景の撮影は深夜に及び、照明ライトに集まってきた巨大なガやムカデ、ヤマビルの襲撃も受けましたが、生命の神秘を実感しました。なお、春日山原始林の周囲には遊歩道が設けられており、千年以上も変わらぬ自然を受け継いできた森のたくましさ、神々しさを実感できます。ハイキングや森林浴に、ぜひお訪ねください。


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