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神奈川県三浦半島に、「小網代(こあじろ)の森」と呼ばれる自然が凝縮された森があります。降った雨水が集まり、河口に流れ着くまで、1つの森で完結する特異な場所です。長さ1.3のキロの浦の川には、2000種にのぼる多様な動植物が息づきます。特にカニ類は多く、50種を超えます。アカテガニは、夏の大潮の夜に干潟へ下り、一斉に子どもを海へ放ちます。首都圏に残された貴重な森で繰り広げられる生きものたちの命の営みを見つめます。

番組内容

人の暮らしに囲まれた小さな森

道路や住宅地に囲まれた緑の森。周辺がリゾート開発されてゆく中、人々によって守られた貴重な自然です。森の中には1キロあまりの川が流れており、森林、湿地、干潟、河口をたどる流域が自然のまま残ります。こうした自然環境は、首都圏で唯一といわれています。

2000種もの生きものたち

多様な環境をかかえる森には、絶滅が心配されるものも含め2000種に及ぶ生きものが確認されています。

50種を超えるカニ

この森で特に繁栄を遂げたのが50種を超えるカニ。中でも森の栄養を含んだ干潟ではたくさんのカニが暮らします。初夏はカニの活動が盛んになり、ハサミを振り上げるダンスのような動きも見られます。

森の象徴 アカテガニ

数多くのカニの中で、森を象徴するものがアカテガニ。海から1キロ離れた場所でも暮らすことができるという、陸上に最も適応したカニの1つ。しかし生まれる場所が海であるため、森と海が一続きになった小網代の森は格好のすみかとなります。

夏は新たな命が誕生する季節

真夏の森は新しい命の誕生があちらこちらで見られます。コシボソヤンマが川に横たわる朽ち木に卵を産みます。森のあちらこちらに水辺があるため、トンボの仲間にとっては格好の産卵場所なのです。

アカテガニの誕生

真夏の大潮の夜、一晩に数千匹にもなるアカテガニが森から降りてきて子どもを海に放ちます。1匹が放つ子どもの数は4万匹ともいわれています。その子どもを食べようと、海には魚が集まります。

情報

語り 中村慶子(なかむら けいこ)アナウンサー
取材時期 2015年6月〜9月
取材地 神奈川県三浦市 小網代の森
交通手段 京浜急行電鉄 三崎口駅から徒歩約20分
より詳細な情報の入手先 神奈川県横須賀三浦地域県政総合センター
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p820028.html

NPO法人小網代野外活動調整会議
TEL:045-540-8320
http://www.koajiro.org/

※小網代の森は神奈川県が管理をしています。
NPO法人などとともに保全のための作業を行っており、さまざまな決まり事があります。
自然観察の際は、上記のホームページにて注意事項を必ずご確認ください。
小網代の森での動植物の採集は固く禁じられています。
 また、中に設けられた散策路の外に出ることも同様に禁じられています。
登場する動物
  • ハマガニ
    河口のアシ原をすみかとするカニ。甲羅の幅は6cmほど。全国的に減少しているカニの1つ。アシなどの草を食べる草食のカニ。繁殖期は11月頃。
  • ハクセンシオマネキ
    干潟を代表するカニ。甲羅の幅は2.5cmほど。オスは左右どちらかのハサミが大きい。本来は伊勢湾が北限とされていたが、近年小網代でも生息が確認されている。絶滅危惧種。
  • チゴガニ
    干潟を代表するカニ。甲羅の幅は1cmほど。初夏から夏の干潮時、オスはひたすらハサミを上下させるダンスを続ける。
  • コメツキガニ
    干潟を代表するカニ。甲羅の幅は1cmほど。砂の多い場所を好む。砂浜の砂を口に含み、栄養分をこしとる。こしとった砂を米粒ほどの塊にして砂浜に落としていく。
  • アカテガニ
    陸地に暮らすカニ。甲羅の幅は3.5cmほど。真夏の大潮の日に子どもを海に放つときには海に降りなければならない。子どもは海で1ヶ月ほど成長し、陸へ上がってくる。
  • コシボソヤンマ
    名前の通り、腹部に極端なくびれがある。水辺に面した朽木に卵を産み、ふ化した幼虫は、そのまま水中に落ちて育つ。
登場する植物
  • ハマカンゾウ
    ユリ科の植物で、草丈は70〜90cm。8月頃、海岸の斜面や草地に花を咲かせる。
  • クサギ
    樹高3〜6mになる落葉高木樹。8月頃花を咲かせる。茎や葉には強い香りがある。

取材日記





30年近く神奈川に暮らしていながら、私は小網代の森という場所があることを知りませんでした。ここは半世紀ほど前まで、地元の方々が水田や薪炭林として利用していた里山だったそうです。その後、大規模リゾート開発の計画が立ち上がりましたが、首都圏で唯一、流域がまるごと自然の生態系を残す小網代を失わせまいと、森の保全という新しい開発計画をつくり、保全活動が始まりました。森こそ残りましたが、一時は生きものの多様性が失われてしまった時代があったといいます。小網代くらいの小さな森は、放置されてしまうと、ササが茂り、光が入らず、多くの生きものが暮らせる環境を維持できません。そこで数年前より本格的に森の保全作業が行われるようになり、みるみるうちに生きものが戻ってきました。今では2000種もの生きものが確認されているといいます。森の外に出れば、道路や住宅地が広がっているという不思議。「大自然」とは異なる自然のおもしろさを感じていただければ幸いです。今回の取材では、NPO法人・小網代野外活動調整会議の皆さんに大変お世話になりました。15分には収まりきれないほどたくさんの生きものに出会うことができ、小網代の自然にまつわる貴重なお話もたくさん伺いました。NPOの皆さんは、この先の将来のことを見据えて維持管理を進めていらっしゃいます。これからこの小さな森がどんな変化を遂げていくのか、とても楽しみです。
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