番組について次回の放送予定月間放送予定リスト過去の放送−放送日別過去の放送−地域別
    トップページ >これまでの放送 長野 阿寺渓谷

長野県の南西部、険しい山々と谷に囲まれた木曽谷。そのおよそ9割を森が占めます。ここに一際、目を引く小さな渓谷があります。全長15キロほどの『阿寺渓谷』。驚くのは渓谷を流れる水の青さ。目を疑うような深い青は『阿寺ブルー』と呼ばれ、その輝きは1年を通して途切れることはありません。渓谷には清流にしかすまないアジメドジョウやヤマトイワナ。川沿いには冷涼で湿潤な場所を好む、ヒメシャガやササユリといった珍しい花々が咲きます。初夏の日差しに照らされ、様々な生命が輝きを放つ阿寺渓谷を見つめます。

番組内容

深い山々に覆われた木曽谷

南北60キロ、木々と深い谷に囲まれた木曽谷。谷間を縫うようにして、一級河川の木曽川が流れています。

阿寺渓谷

木曽谷の森の中にひっそりと流れるのが阿寺渓谷です。全長15キロほどの小さな渓谷。清らかな水が流れる美しい渓谷です。

上流に棲むヤマトイワナ

岩場の多い渓谷の川には希少種のヤマトイワナがすんでいます。木曽川水系でも一部の上流にしか生息していません。普段は岩陰でじっとしています。

清流にしか生息していないアジメドジョウ

渓谷には清らかな水の中でしか暮らせないアジメドジョウが暮らしています。日当たりがよい水の中に生える細かなコケを好んで食べています。清流の減少から絶滅が心配されている貴重な生きものです。

中流の豊かな森

落葉広葉樹が広がる豊かな中流の森には様々な生きものが暮らしています。この時期、東南アジアから渡ってくるオオルリが美しい鳴き声を渓谷中に響き渡らせます。

ウグイの命の営み

下流の水の中にも多くの魚たちが暮らしています。この時期、ウグイは産卵期を迎え体に赤い筋が入ります。清流は多くの生きもののゆりかごになっています。

情報

語り 松岡忠幸(まつおかただゆき)アナウンサー
取材時期 2013年6月中旬〜7月上旬
取材地 長野県大桑村 阿寺渓谷
交通手段 【電車】JR中央本線「野尻駅」から徒歩20分
【車】中央道中津川ICから約40分 中央道伊那ICから約70分
※駐車場あり。
より詳細な情報の入手先 大桑村観光協会 TEL:0264-55-4566
登場する地形
  • 木曽谷
    木曽川上流の流域を表す名称である。木曽川の浸食により形成されたV字谷状地形が延長約60kmにわたって、おおむね北北東から南南西の方角に伸びる。東南方面には木曽山脈(中央アルプス)が、西北方面には御嶽山系がある。現在の木祖村から南木曽町にかけての長野県南西部が主な地域である。
  • 阿寺渓谷
    長野県大桑村にある渓谷。木曽谷の山奥を源流とし、木曽川へと注がれていく。中央アルプスなど周囲の山の火山活動によって噴出した花崗岩が目立つ。エメラルドグリーンに輝く水は地元で「阿寺ブルー」と呼ばれている。水が青く見える理由は、太陽光のうち波長の長い赤い光を水が吸収しやすい性質があるから。その中で、吸収されなかった青や緑といった光が水中で散乱したり、白や灰色の川底で反射したりして人間の目に届くことで、阿寺渓谷の水の色が生まれていると考えられている。名前の由来は諸説あり、「あてら」の「あて」とは「陰」を意味し、陰の多い渓谷を意味するという説がある。
登場する動物
  • ヤマトイワナ
    サケ目サケ科。イワナの日本固有亜種で、本州中部地方の太平洋側、山岳地帯の河川に生息。体長 25 cm。他のイワナ亜種のような白い斑点が目立たず、側面により小型で紅色の小斑が散らばる。
  • アジメドジョウ
    コイ目ドジョウ科。日本固有種。中部〜近畿地方に分布。体長は10cmほど。川底の岩などに薄く生える目に見えないコケをエサにしている。水の綺麗な清流にのみ生息。
  • カケス
    スズメ目カラス科。大きさは33cm。屋久島以北の山地にすむ。留鳥として、国内に留まっている。
  • オオルリ
    ヒタキ科。大きさは16cmほど。東南アジアから日本全土に渡ってくる夏鳥。低山から山地にかけての林に生息する。オスは頭部から背、尾までの上面が青色。
  • ムササビ
    ネズミ目リス科。長い前足と後足との間に飛膜と呼ばれる膜があり、飛膜を広げることでグライダーのように滑空し、樹から樹へと飛び移ることができる。160m程度の滑空が可能である。本州、四国、九州に生息し、日本国外には生息していない。夜行性で、主に樹上で生活し、種子、果実などを食べる。
  • アマゴ
    サケ目サケ科に属する魚。本州、日本海側以外の渓流などの河川に分布。渓流の中でもイワナなどとの混生を避けるため、下流域に分布する。
  • ウグイ
    コイ目コイ科。春になると雌雄ともに鮮やかな3本の朱色の条線を持つ独特の婚姻色へ変化する。婚姻色の朱色の条線より「アカウオ」や「サクラウグイ」と呼ばれることもある。この時期には川の浅瀬で比較的流れの緩やかな直径2〜5cmの礫質の場所を選び、春から初夏にかけて集団で産卵をおこなう。
登場する植物
  • ササユリ
    ユリ科。本州中部から九州に分布する多年草。山地の草原や明るい森林に生育する。小さなものは葉のみであるが、大きく育ったものは花茎をのばし、6月から7月にかけて美しい花を咲かせる。
  • ハンショウヅル
    キンポウゲ科。本州・九州に自生する落葉性のつる植物で林床の木陰や林の縁に生える。漢字では「半鐘蔓」と書き、下向きにぶら下がるように咲く花の姿が火の見やぐらなどにぶら下げられている半鐘に似ているところから付けられた。
  • ヤマオダマキ
    キンポウゲ科。北海道〜九州の山中に咲く多年草。花期は6月〜7月。
  • ヒメシャガ
    アヤメ科。北海道西南部、本州、四国、九州北部に分布する。冷涼な場所を好んで咲く。花期は5月〜6月。開花時間は5日ほどと短い。国の準絶滅危惧種に指定されている。
  • カワサツキ
    ツツジ科。花期は6月〜7月。渓流植物といい、水の流れが速く増水時には水をかぶってしまうような環境に咲くことで他の花との競合を避けられるような渓谷の岸壁などを好む。

取材日記





木曽谷の山奥にひっそりと流れる阿寺渓谷。渓谷の小ささとは裏腹に、多くの生きものを育む場所でした。木曽谷の森が育んだ清流に目を凝らすと、イワナやアマゴといった魚たちの俊敏な影が岩の間を行き来し、清流を囲む森にはオオルリなど鳥たちのさえずりが響き渡ります。撮影に入った6月中旬の渓谷は、雨に恵まれていました。雨により、思う通りに撮影は進まなくとも、雨露で瑞々しさが増した渓谷の緑、雨後の静けさを取り戻した清流の輝きはその焦りを和らげてくれました。渓谷の様々な表情に触れている中で思わぬ出会いもありました。豊かな森に暮らすムササビの親子です。好奇心の強い子どもたちは巣から頻繁に顔を出していました。その愛らしい姿に思わず撮影クルーに笑顔がこぼれます。そして、下流の浅瀬には新たな命の息吹も感じることができました。たくさんの命に触れる機会を与えてくれた初夏の阿寺渓谷。これからも、美しく清らかな水が流れ続けることを願ってやみません。
>>   よくあるご質問    >>   おすすめのホームページ    >>   ご意見・ご感想       

copyright NHK
さわやか自然百景トップページへ