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さなイチ

第1回「船出」の放送後に、小山田茂誠役の高木渉さんにお話を伺いました。

 
Q.第1回の放送中から、“声優の高木渉さんが出演している!”と大きな話題になっています。声優としてすでに高い実績のある高木さんですが、初めて知ったという大河ファンのために、自己紹介をお願いします!

普段は声優をやっていまして、『名探偵コナン』の元太、高木刑事の1人2役、NHKでは『はなかっぱ』の黒羽屋蝶兵衛、獅子じゅうろく博士、『忍たま乱太郎』の平滝夜叉丸、洋画ではジャック・ブラックなどの役をやっています。その中で、三谷幸喜さんの人形劇『新・三銃士』(NHK)の制作が決まったときに、三谷さんが僕の出演した作品を見て下さって、ポルトス役をいただいたのがきっかけです。その後、三谷さんの舞台『桜の園』にキャスティングしてくださって。また数年後に、人形劇『シャーロックホームズ』でもワトソンを演じました。『シャーロックホームズ』には『真田丸』のプロデューサーの吉川さんも関わっていまして、「高木くんは映像作品はやらないの?」と。やってみたいけれども、この歳になってドラマなんてオファーが来ないと思っていました。ところが、「大河、出てみる?」と。今は『真田丸』に出演しながら、普段の声優の仕事もやっています。

Q.第1回の放送後にはご自身にもメールや電話など反響がありましたか?

ありましたね。“見たよ”“よかった”“迫真の演技だった”など、たくさんいただきました。なかには、辛口の意見もありまして、“頭で芝居するなよ”とか“相手のセリフをよく聞くように”とか。賛否両論あったのが僕にとってはとても良かった。ネットで話題になったことは嬉しいことですが、あまり浮かれてばかりいてはいけないですね。叱咤(しった)激励を言ってくださったのが嬉しかったです。
第1回の放送は、上田市のパブリックビューイング会場で一般のお客さんに紛れて席に座って見ました。サプライズゲストなので見つかりはしないかと、ドキドキしながら。その時の、周りのお客さんの反応が良かったことがとても嬉しかったです。

Q.高木さんご自身は完成した第1回を見ていかがでしたか。

いやぁやっぱり自分で見ると、こっ恥ずかしいというか…(笑)。やっぱり…慣れてないというか、硬さを感じましたね。まだまだだなと。これから勉強していかなきゃなと。声の仕事をされている方で大河に出演されている方は、たくさんいらっしゃると思います。高畑淳子さんや大泉洋さんもそうですし。声の仕事と映像の仕事をあえて分けるつもりはありませんが、僕の経験として映像の仕事は初めてだったんで、硬さを感じるなと、早くこの場に慣れたいなと思いましたね。

Q.三谷作品で大河ドラマに出演、というオファーが来たときの感想は?

もう、信じられなかったですね! ふわふわと足が地についていない感じでした。だって、出たい出たいと思っても出られない人たちがいっぱいいるわけじゃないですか。そんな中で、映像作品未経験の人間が出させてもらえるなんて、“出ちゃっていいんだろうか!?”と。それと同時に、しっかりやらないとやばいぞという緊張感が後から襲ってきました。
大河への出演が決まって、父が一番喜んでいましたね。父はずっと大河ドラマを見てきたので。僕は過去に舞台はやっていましたが、まさかテレビで大河に出るなんてと。映像の俳優になれるとは父も思っていなかったでしょうから。話を聞いて驚いていました。本当に驚いた時って、あまりリアクションが出てこないみたいで、電話口で「ああそうなのか、おめでとう」という感じで(笑)。あれ?あまり感動してないと(笑)。後日、実家に帰ってみたら、めちゃめちゃ喜んでいました。

Q.声の出演と、俳優として出演されるのとでは、役へのアプローチは変わってくるものでしょうか。

芝居をするという意味では変わりませんが、セリフを覚えて、衣裳を着て、ワンシーンごとに大事に撮っていくじゃないですか。そういう意味ではギャップは感じましたが、役作りとしては変わらなかったですね。実在の人物ではありますが、信繁や信幸、昌幸と比べると、そこまで超有名という感じでもない方なので、屋敷チーフプロデューサーからも三谷さんからも、“高木さんらしく、人がいいなという感じで、その場が明るくなるような感じで演じてください”と言われています。

Q.衣裳はもちろん、カツラや鎧(よろい)を着けて演じる、それを撮影される、という経験も初めてだったと思いますが、いかがでしたか。苦労したことなどは。

もうなんでしょうね…お金をかけた究極のチャンバラごっこをさせてもらったと言いますか(笑)。ものすごく幸せでした。鎧なんて、着れる機会はまずないですし、僕は午年(うまどし)なので馬が大好きなんですが、馬に乗るという経験も手が届かないことだと思っていましたので、乗馬の練習にも通わせていただいて。本当に戦国時代にタイムスリップしたような気持ちになれて、最高の気分でした。
ロケの最中は鎧を着たままでいるんです。一人で着脱できるものではないので、トイレを我慢するのがちょっとした苦労ではありました(笑)。食事休憩が15分しかない時があって、弁当を食べるか、鎧を脱いでトイレに行くかで…トイレを選んだときもありました(笑)。でもそれも楽しかった。活気のある現場は大好きです。

Q.泣き崩れながら武田勝頼を追い返すシーンは第1回の中でも山場となりました。演じられていかがでしたか。

これは第1回からすごい役を担ったなと。撮影現場でも緊張しまくっていて、とうとうきた!このシーンが!という感じで。ガチガチになっていたなという覚えがあります。
声優は、作品がある程度の段階まで出来上がったところで声を入れるので、洋画などは特に音楽も効果音も入っていて、音入れ作業で“日本語のセリフにする”という、制作過程の後半になる仕事なんです。でもドラマの場合はカットごとにひとつひとつ撮影していって、監督さんや編集さんがどこを使うかを決めていって。僕らは出来上がるまで完成形が分からないですから、役者は前半の仕事、という気がしました。そういう意味でも役割が違うのかなと。
準備が整って本番で撮影するという瞬間に、キュッとスイッチを入れて集中しなきゃいけないのが…やっぱり俳優さんてすごいな!というか(笑)、…大変な集中力を持って、一発で決めなきゃならないんだと。僕はまだまだ慣れていないんで、あたふたしちゃって。しっかり自分の芝居が出来るように慣れていかなければと思いました。あのシーンは、演出の木村さんと、三谷さんの脚本のおかげで、僕をそういうふうに見せてくれたんだと、自分の芝居はまだまだだと思いました。

Q.撮影がはじまってから4か月になります。慣れてきた部分もあるのでは?

そうですね、物理的な撮影の段取りなどは慣れてきましたね。あとはそこにちゃんと集中して、自分のお芝居を、茂誠を心を込めて演じることに集中してやらなければという感じです。

Q.茂誠はヒゲが印象的です。高木さんが自前のヒゲで出演されているのは理由があるのでしょうか。

撮影がはじまる前に、カツラ合わせ(人物ごとに作るカツラのサイズやフィット感を確認する)のとき、茂誠をどういうキャラクターにしようかと話し合いました。「高木さん、ヒゲ濃いですね? ヒゲのあるキャラクターにするのもいいね」と。クマ五郎みたいなヒゲのヤツが、実は心やさしく、松(木村佳乃)とも仲のいい夫婦だと、外見とのギャップがあっていいと。カツラ合わせ(5月下旬)から全体顔合わせ(8月下旬)までずっと切っていなかったので、最初の撮影まではもじゃもじゃで、頭がどっちか分からないくらいでした(笑)。それから口の周りだけにしようと決まって、いまの形に落ち着きました。こんなにヒゲを伸ばしたことがなかったので新鮮です。

Q.妻の松役の木村佳乃さんとのラブラブなシーンが印象的ですが、撮影中はどんな雰囲気なのでしょうか。

僕は緊張しいなので、本当に佳乃さんがリードしてくれているというか、僕たちの役割ってなんだろうということでは、乗馬クラブに練習に通っているときに佳乃さんと偶然お会いしまして、気さくに「真田家を盛り上げる一員として、カップルとして面白い夫婦を演じられたらいいですね」と言ってくださって。僕はド緊張していたので。これじゃ美女と野獣だろって(笑)。本当に佳乃さんのおかげです。
茂誠は松より年下ですが、僕が松をエスコートできるようにならなきゃと思います。見ていてください(笑)。
松代(長野市)の長国寺に茂誠と松(のモデルとなった村松殿)のお墓があって、お参りさせていただきました。二人のお墓が寄り添うようにあって、それを見ているだけで仲が良かったんだろうなと、手を合わせながら目頭が熱くなる感じがありました。『真田丸』でもあったかい雰囲気を出せるといいと思います。

Q.高木渉さんファンにこれからの見どころを!

アニメやゲームで僕のファンになってくださった方たちからの、「『真田丸』に出るんだって!」という驚きの反応がとても嬉しかったですし、その方たちに『真田丸』を見ていただけたら、見れば面白いと分かると思いますし、戦国時代のヒューマンドラマはすごく熱いものがあると思います。それを三谷さんがどういう切り口で展開していくのか、ドラマを紡いでいくのか、僕自身も興味がありますし、その中で家族愛がどう表現されていくのか楽しみです。
僕を見てね、というよりは、『真田丸』を見てねと、“あそこに高木渉がいたんだ”と、気づかれないくらいに馴染(なじ)んでいきたいと思います。

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