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インタビュー

『真田丸』の先陣を彩る迫力あるオープニング映像。
その制作秘話をご紹介します。

 

佃 尚能

『浪花の華』(2009年)『ゲゲゲの女房』(2010年)の演出、『64(ロクヨン)』(2015年)エンディングなどを担当。

新宮 良平

CGやVFXを効果的に使用したCF、PVを数多く手がけるフィルムディレクター。BNN映像作家100人2015選出。

放送回と最終回へ向けての予告編の役割

僕自身、大河ドラマの大ファンです。幼稚園の頃に『独眼竜政宗』(1987年)に魅入られ、お絵描きでは武将の絵を描き続け、眼帯や刀を買ってもらってチャンバラ三昧の日々を過ごしました。オープニングの作成を手がけられて本望です。

あの頃の「これから始まる!」というワクワクした気持ち、一人の大河ドラマファンとして「真田、待っていました!」という高揚感、そして僕より年齢が上の方々の「昔の大河ドラマ、よかったよね」という意見を踏まえたものにしたつもりです。
信繁が見ていたような中世の城や景色は、今、見ることはかないません。また、テーマが「信繁の描いた夢の城」でしたので、撮影した映像は最新のVFX(映像効果)技術を使って「夢」を実現しています。そのために、VFXに強いフィルムディレクター・新宮良平さんと一緒にやっていこうと決めました。

赤備えの騎馬武者も5人分の実写をCGで増やし、リアルな合戦場面を目指しました。当初「不要では?」という意見もあったのですが、一貫して「絶対に必要です」と主張し続けました。信繁の最期は大坂夏の陣での華々しい活躍です。ドラマもそこへ向かって描かれるでしょうし、視聴者の皆さんもそこへ向かって見てくれるのだと思います。ラストに待っているドラマを忘れないで、との思いをこの場面に込めました。つまり、最終回へ向けての予告編です。

そして珍しいことに、『真田丸』ではオープニングに本編映像が2か所挿入されています。こちらは、放送する回の予告の役割。古き良き時代の活劇映画のような雰囲気も感じてください。

冒頭の神秘的な湖は、鏡池(長野県長野市戸隠)。撮影当日は風があり、湖面に波が立ち、ドローンでの撮影も危ぶまれた。

米子大瀑布(長野県須坂市)は当初構想になかったが、ロケ地探しの途中で立ち寄った観光案内所で見た写真を見て、撮影を即決。

題字を含めた城の壁、軍勢が駆け抜ける大地は、挾土秀平作品。題字の壁が崩れるアイディアは挾土氏から。1週間ほどで崩れ落ちる壁を逐次撮影したかったが、スケジュールと予算の都合で断念。

実写にこだわり抜いた結果、画面の力を実感

スケールの大きな自然を求め、長野、群馬をはじめとした真田ゆかりの土地を探しました。難所が多く、大人数のドラマの撮影隊では、とても行けそうもない場所で撮影を行っています。悪天候のため、撮影が危ぶまれた場所もありました。
雲海を撮影するため、スタッフは5回、僕は下見を含めて7回登山しています。秋から冬の朝は雲海が発生しやすいのですが、必ず発生するというわけではありませんでしたし、発生しても撮影クルーが雲に飲み込まれ、目の前が真っ白ということもありました。実際、撮影できた10分後には、雲に埋もれてしまいました。

門は戦国当時のものが残っている松代城のものを使いましたが、六文銭入りの瓦はどの城にもなく、廣山寺のものを組み合わせています。壁は全て挾土秀平作品ですが、建物内部はスタジオに作ったセットです。けれども国宝・松本城(長野県松本市)の窓や、脇本陣奥谷(長野県木曽郡)の建物にある窓、光の入り方等、実在するものをできる限り忠実に再現しています。セットであっても本物をモチーフに、とこだわりました。

信繁の城は、一生城持ちにはなれない次男が夢見た城。実は現在、当時のまま残っている真田の城は1つもなく、僅かに資料が残っているのは沼田城(群馬県沼田市)くらい。理想の城を構築するベースとして、真田には縁のない備中松山城(岡山県高梁市)を使わせてもらっています。国内に残る数少ない戦国時代の城を探していた最中、見た瞬間「ここだ!」とピンと来ました。山深い中にたたずむ、すばらしい城です。

門は戦国当時のものが残っている松代城のものを使いましたが、六文銭入りの瓦はどの城にもなく、廣山寺のものを組み合わせています。壁は全て挾土秀平作品ですが、建物内部はスタジオに作ったセットです。けれども国宝・松本城(長野県松本市)の窓や、脇本陣奥谷(長野県木曽郡)の建物にある窓、光の入り方等、実在するものをできる限り忠実に再現しています。セットであっても本物をモチーフに、とこだわりました。

その結果、「本物の力はすごいな」と実感しました。建物も自然も、本物だけが持つ重厚感、スケールの大きさがまるで違います。CGではとても無理だと思えました。

王ヶ鼻からの雲海(美ヶ原高原・長野県松本市)。

現在の上田城(長野県上田市)は江戸時代に建て替えられたもの。真田時代の城についての詳しい資料はないが、実写にこだわり、石垣はそのまま使用。

江戸時代、信繁の兄・信幸が城主となった松代城(海津城・長野県長野市)。実在の門から現代のものをCG処理して省いた。

山頂に小さく信繁の父・昌幸が築いた岩櫃城(群馬県吾妻郡)が見える。信繁の城作りは父の影響を受けたはず、との思いから挿入。

備中松山城(岡山県高梁市)は、「ここだ!」と見定めた重厚感あふれる中世の城。石垣、城壁、地形を使い、リアルな夢を形作った。

六文銭入り瓦は真田ゆかりの廣山寺(長野県上田市)のもの。

窓の牢格子は、普通の武家屋敷にはないものだが、信繁の九度山での蟄居を表現している。



気づかれないVFXが最良の使用法

普段はコマーシャルやプロモーションビデオを手がけていますが、大河ドラマのオープニングは初体験。フィールドが違うので、新鮮な体験となりました。
この仕事にとりかかる準備として、過去のオープニング映像を見てみました。『真田丸』は「正統派」で「渋い」ところに着地させるべきだとは思っていたので、脈々と続く大河ドラマの伝統を大切に、正統的に表現しようということは、早い段階で見えていました。

監督として僕に課せられた役割は、伝統にスタイリッシュな感覚をプラスした映像を作ること。ですから細部にわたって「正統」にこだわりました。すべてのカットを映画並みに、見ている人が自然に受け入れられる映像となるよう、最新の技術を駆使して作り上げました。
実写映像にある電線などを消す、開発で削られた山肌を木がある状態に復元する、実写では5人だった軍勢を増やす、といったことから、別々に撮影された画像をつながっているように見せる、カメラの視点のブレを調整する、あるいはカメラワークそのものを直すなど、画像処理は多岐にわたっています。

比較的使用頻度が少ないのは中間部の城内のカット。下見で見た城の遺構などで、光が何もない空間を照らしていました。兵どもが夢の跡、ではないですけれど、かつてはたくさんのドラマがあった……そんなことを感じ、心が動きました。光と影を極力実写で表現し、「行間」を感じる映像にしたつもりです。後半の真田の軍勢シーン前への一呼吸、という役割もあります。

全体の基本的な質感は「土臭く」。音楽もシンプルで力強い曲でしたし、演出は「正統的に」。音楽の服部先生も僕らのコンテ案を見て作曲に反映させたとおっしゃっていましたし、映像を作る僕たちもそうです。「こうあるべき」という理想が一致した結果がこうなった、と言えるのかもしれません。
自分でも「正しいVFXの使い方をした」と思っています。「この城、CGだよね」と見た人の気持ちを削ぐのが間違った使い方だとしたら、見た人に気づかれないのが最高の使い方。よくできたマジックのように、映像で「だませる」のがVFXの大きな魅力です。

鉄砲穴から抜け出たように見えるカメラワークは、実写では実現できなかったため立体画像から修正。石段を流れる水の流れは、何度もやり直した苦心の作!

備中松山城の城壁を挾土作品の土壁に変更。実際の城壁は白。

杉の巨木が立ち並ぶ戸隠神社・奥社(長野県長野市)の参道に城壁と真田の旗をプラス。

最新技術を使った映像をあえてフィルムに

撮影時に、狙っていた気象条件が叶わない場合は多々あります。名匠の映画撮影でしたら、理想的な天候を何日も待つ、ということも可能だったかもしれませんが、そういかない場合が多いものです。理想の画像作りに、補足としてVFXを使うのが本来の姿だと思います。昔に比べて、今はできないことがないくらい、VFXのレベルは上がっています。だからこそどう使うのかが重要な時代になってきた気がします。
今回は実写にこだわっていますので、昨日撮った画像、今日撮った画像というように掛け合わせて画面を再構成しています。見た人が全く不自然に思わないようにと、意外なほどCGスタッフが燃えて、ストイックにがんばってくれました。

細かい工夫をいろいろ凝らしている映像なので、ぜひ50回分楽しんでください。何度も見ているうちに、意外な発見があるかも!? そんな風に奥深く作っています。

そうしてできた最新技術の結晶を、最終的にフィルム化しました。これが一番やらなければ、と思った工程です。「正統派」の質感は、やはりアナログ。本編の映像はフィルムではありませんが、あえてのフィルムの質感で見ていただくオープニング映像。今はもう数が本当に少なくなってきてしまった現像所のベテランカラーリストにも、かなり困難な色調整の仕事をお願いしましたが、素晴らしい出来栄えで感謝しています。

細かい工夫をいろいろ凝らしている映像なので、ぜひ50回分楽しんでください。何度も見ているうちに、意外な発見があるかも!? そんな風に奥深く作っています。

槍を持つ武者の姿は映画『300(スリーハンドレッド)』のラストを参考に。「最終回への予告編」を意識し、高揚感と躍動感あるショットを選ぶのに苦労したとか。

映画『ロード・オブ・ザ・リング』の迫力を目指し、「敵陣まで200メートル!」を隠しテーマに突撃する軍勢。本音を言えば、対する敵陣も作りたかった!?

撮影はCMなどで著名な正田真弘。

制作スタッフ

Creative Director & Planner:佃 尚能
Film Director:新宮良平
Producer:須貝ヒトシ
Cinematographer:正田真弘
Lighting Director:東元丈典a.k.a HIGASIX
USJ Operator:小林 宗 / 宮内和義 / 古賀新太郎
Grip:小笠原康人
VFX:荒牧大貴 / 中山真吾 /田崎陽太
Additional VFX:福田泰崇
Director Assistant:遠藤研介
Production Manager:中嶋将人 / 吉田卓功
Camera Operator : 辻浩一郎
Camera Assistant:浜田憲司 / 小林 拓
Lighting Assistant:栗原浩樹
ChromaKey:松家 健
Technical Director:石川智太郎
Colorist:石原泰隆 / 鈴木 萌
Film Recording:廣瀬亮一
Telop Design:寺部 晶 / 小池葉子
DIT:瀧 祐介

技術協力:住田永司/鈴木英治/大川達也

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