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インタビュー

音楽を担当する作曲家・服部隆之さんに
曲に込めた思いを語っていただきました!

 

バイオリンのソロで繊細さと骨太さを

演奏家というのは、それぞれが独立したソリスト。オーケストラになると、一つの楽器のようになってしまいますが、本来は一人ひとり人間が演奏しているのです。そういう一人ひとりの演奏家の孤高な感じであるとか、厳しさを、一つの楽器に集約したいと考えたとき、すぐに思い浮かんだのがバイオリンでした。
バイオリンという楽器には、ヴィヴァルディの曲やソロの有名曲「タイスの瞑想曲」など、非常にきれいな音色で心地よくさせてくれるものがたくさんあります。一方、近代のストラヴィンスキーなどには、弦をきれいに鳴らすというより、ギシギシと弓が弦をこするような曲があります。弦楽器でも特にバイオリンは、特有のスピード感で高揚感を生み出し、土着感を感じさせるワイルドさがあります。それが、主人公・真田信繁のキャラクターと重なりまして。

気づいたら徳川家康の前に立ちはだかっていた、というような機動力、泥臭さ、そして孤高の厳しさ。そういったものを、演奏で表現できるのはバイオリンのソロだと気づいたのです。
バイオリニストの三浦文彰さんは、非常に品のある演奏をされるのですけれども、バイオリンの特性である、人間臭い部分も引き出してくれるので、今回、ソロをお願いしました。繊細にして骨太という、相反する面を表現してくれています。素晴らしい演奏をしてもらいました。

命を宿らせ、躍動させてくれるオーケストラ

オープニングに流れるメインテーマは、バイオリンのソロが際立っていますが、オーケストラは伴奏となっているわけではありません。オーケストラとソロが相対するというか、そういう状況が作り出せれば、と考えました。
まず、デモをシンセサイザーで作るのですが、これは立体感のないペタッとした音。初めからオーケストラにやっていただくわけにはいかないので仕方ないのですが、平面的なものです。

NHK交響楽団の皆さんに演奏していただくと、それはもう曲がいきいきと躍動して、「うわ、こんなに素晴らしくなっちゃうんだ」ということに。月並みな言い方になりますけれど、曲に命を吹き込んでいただきました。指揮者の下野竜也さんもソリストとオーオケストラ、両方の思いを見事にまとめてくれました。相まみえ、絡み合う、というセッションになったと思います。

今回の『真田丸』の制作テーマは、泥臭く、骨太にということでした。音楽としても、原点回帰というか、僕が子どもの頃に聴いていた大河ドラマの音楽のような、オーケストラが骨太にしっかりと表現している、というものが合うのではないかと思いました。
1年間きっちりと、ある程度の時間をかけて1つの曲を聴いてもらえる機会というのは、今の日本のドラマ界では大河ドラマだけです。オープニングの2分40秒という時間は長すぎず、短すぎることなく、ちょうどいい長さ。音楽的にも良質な、皆さんの耳になじみやすく、かわいがっていただけるような曲であるようにという思いを込めました。

劇伴は料理でいえば調味料

ドラマ内で使われる音楽・劇伴はキャラクターごとにテーマを変えていったり、戦いのシーンのためなど、細かくシチュエーションに合う曲を作っていきます。「この劇伴、いいな」だとか「昌幸のテーマいいよね」と思っていただけるような、心に引っかかるような、口ずさみたくなるようなメロディー、サウンドを心がけました。

とはいっても、劇伴というのは突き詰めて考えれば、別にいらないのですよ。そこにいい脚本があって、出演している方がいいお芝居をすれば、音楽は不要。お芝居を盛り上げたり、悲しくさせたりというのは、はっきり言って「余計なお世話」な作業です。
でも、あえて演出家の方々が音楽をつけたいと思うのは、料理でいうところの調味料を求めているのでしょう。いい肉に、いい塩を使えば、さらにおいしいステーキが出来上がる、というように。だからさじ加減には注意しないといけません。

音楽家ですから、ドラマや映画を見ても音楽に注目して、それから芝居に目を向けるようなところがありました。若い頃は、自分の音楽をきちっと提示した上で、劇伴として成立させる、というような強い思いがありました。いわば「俺の音楽を聴け!」みたいな勢いで曲を書いていた記憶もあります。それが、さまざまな現場を経験し、キャリアを積んでいくことで、総合芸術の中での調味料として、どう主張できているか、という感覚に変わりまして。

音楽家ですから、ドラマや映画を見ても音楽に注目して、それから芝居に目を向けるようなところがありました。若い頃は、自分の音楽をきちっと提示した上で、劇伴として成立させる、というような強い思いがありました。いわば「俺の音楽を聴け!」みたいな勢いで曲を書いていた記憶もあります。それが、さまざまな現場を経験し、キャリアを積んでいくことで、総合芸術の中での調味料として、どう主張できているか、という感覚に変わりまして。

しかし、ひたすら裏方に徹すると輝きを失ってしまいます。だから、この塩はミネラルが豊富なんだよ、みたいなところが必要。仕事をすればするほど、絶妙なさじ加減というか、そういう部分に気をつけるようになりました。
いろいろと作り上げる過程で悩んだりしましたが、魅力あふれる劇伴となるよう、工夫を凝らしたつもりです。

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