2012年1月29日放送
「どんな会社にしたいのか?」社員たちが話し合い、キャラクターを作るワークショップ。新たな企業改革の試みをサキどり!

福井県の自動車販売会社は、半年以上かけて、会社のビジョンについて議論を重ね、新しいキャラクターを作りあげていくことにしています。1月半ば、社員たちを集めてワークショップを開きました。講師は、デザイナーの藤原聖仁(せいじ)さん。キャラクター作りを通して社員の意識改革を図るワークショップを全国の中小企業で行っています。
この会社の社長、河村将博さんは、これまで、会社の新しいビジョンを伝えるために社員たちを集めて勉強会を繰り返し開いてきました。「勉強会をやっても、私だけしゃべるお通夜みたいな会で...(笑)みんなと思ってることを一つにしているという実感がなかったんです。」そこでこのキャラクター作りのワークショップを取り入れました。
藤原さんが手がけたキャラクターによって、社員の意識が変わり始めた会社があります。福井市にある、社員33人のメッキ加工会社です。主な取引先は、地元の繊維会社ですが、その多くが海外に工場を移転したため、仕事は減っていきました。創業者の3代目で、会社の舵取りを任されている専務の清水栄次さんは、厳しさを増す経営環境の中で、会社が目指すべき方向性を見出すことができずに一人思い悩んでいました。そんなとき清水さんは、デザイナーの藤原さんを紹介され、キャラクター作りを依頼したのです。
相談を受けた藤原さんが、清水さんたちと話し合う中で感じ取ったのは、長年培った技術への誇りと、その技を武器に海外にも打って出たいという思いでした。そこで描きあげたのが「必殺!めっき職人」。サムライとニンジャ、4人組のキャラクターです。背中には、日の丸が描かれ、その中に福井県の形も見えます。そして手に持っている武器は工場で使っている道具をあらわしています。「福井で培ったメッキの技術を武器に、世界を舞台に戦うサムライたち。」会社が目指すべき新たな方向性が、表現されていました。「私はキャラクターを見たとき、海外に工場を出すのではなく、"日本の福井の中にいて海外の仕事を受注しよう"という覚悟に変わりました。背中を押してもらった気持ちです。」清水さんたちは、今、海外との取引拡大に力を入れています。展示会などで売り込みをかけ、この1年で、インドネシアや中国などで4件の取引先を開拓しました。
このキャラクターは社員の意欲を高めることにも一役買っています。キャラクターのモデルとなった一人、営業担当の西山喬之(たかゆき)さんは、会社の技術力をアピールするために、毎日のように職人たちの作業風景を撮影しインターネットで発信しています。入社した頃、西山さんは、メッキ職人を目指していました。しかし、工場で使う薬品が体質に合わず、体中がかぶれてしまい、やむなく現場を離れ、営業に転籍しました。憧れていた職人になれなかったことで、ずっと心にしこりが残っていましたが、キャラクターに描かれていたことで、「現場に立てなくても、一緒に戦う仲間として認められている。」そう西山さんは感じたと言います。
東ちづるさん(俳優)

私ね、会社員、4年間してたんですけれども、「どんな会社?」って言われたら、つくってるものは説明できるんですよ、商品ですとかね。ですけれども、「理念、ビジョンは?」って聞かれたら、たぶん答えられなかったと思うんですよ。なので、ああいうふうに、キャラクターでビジュアル化すると、自分自身も答えられるようになりますよね。
村尾隆介さん(経営コンサルタント)

だれもが不安を抱えながら生きてる時代で、来年どうなるか、10年後どうなるか、やっぱりなかなか明確にはっきり言える会社って少ないと思うんですけど、そういう時代だからこそ逆に、「うちの会社の方向性はこれだ」「こういう方向で向かってれば間違いない」というふうに言えるような経営者や、キャラクター化して思いをそこに馳せるという活動というのは、小さな会社にとっては非常に重要になってくるでしょうね。
インターネットで今、話題になっているのが、「ハム係長」というキャラクターです。弁当箱の上でハムがため息をついているこのキャラクターは、去年4月に大手食品メーカーが作りました。書き込みの内容は、商品の宣伝ではなく、日常のおしゃべりです。さて人気の秘密とは?ほとんど毎日のように書き込みをチェックしている女性は...「いろんなレシピを紹介してくれたり、皆さんの返事にもウィットに富んだ面白い返事をしていてすごく親近感がわいてしまって、勝手にお友達みたいな感覚になります。」
このキャラクターに扮しているのは、いったい誰なのか?イメージを壊さないよう、顔を出さないことを条件に取材に応じてくれたハム係長は、この会社の広報室の社員です。消費者により近づくために、キャラクターに扮しておしゃべりすることにしたのです。「企業というよりも、お友達感覚でお付き合いしていきたいと思って。今までこういうキャラクターがなければ、こういうコミュニケーションというのはとれなかったわけですから、それは非常に大きいツールですよね。」
仕事で外出するハム係長。そんなときはアイコンも「外出中」に変わります。この日、兵庫県西宮市を訪れ、地域の人たちを招いて、ウインナーを包丁ひとつでさまざまな形に切る「飾り切り」の教室を開きました。ハム係長は、その様子を写真に撮ってリアルタイムで発信します。日々の出来事をざっくばらんに語ることで人気が高まり、ファンの数は1万8000を超えました。いまや、会社にとって、このキャラクターは重要な戦略の一つ。キャラクターを使ったコミュニケーションで、これまでの市場調査よりも、消費者の本音を素早くつかめるようになったと言います。