これまでの放送

2015年1月25日放送

未来をつむぐ☆カイコ・パワー

21世紀のシルクロードは 日本から世界へ広げよう

光るカイコ

最盛期だった昭和4年には221万6000戸余りあった養蚕農家が、今では486戸にまで激減しています。でも今、新たな兆しが。カイコ活用の最前線を取材しました。

遺伝子組み換え技術が生んだ
        キモカワッ!?光るカイコ

光るシルク茨城県つくば市にある、農業生物資源研究所。ここで誕生し、世間をあっと言わせたのが・・・青色の光に反応して明るい光を放つ、カイコ。この光の元になっているのは、光るクラゲ、オワンクラゲです。光る物質を作る遺伝子を取り出してカイコに組み込むことで、光らせることに成功しました。いまでは、サンゴやイソギンチャクなどの遺伝子も使って、様々な色を出すことができます。

卵に針をさすそんなカイコの遺伝子組み換えの作業を特別に見せてもらいました。直径わずか1ミリのカイコの卵。顕微鏡をのぞきながら、卵に穴を開け、クラゲの遺伝子を注入。卵の上下左右を見極め、決まった場所に100分の1ミリの細い針を正確に刺していきます。でも、カイコを光らせて、何の意味が?「光らせる技術があれば何でもできる。生物工場としてカイコを使うことを今進めています。(農業生物資源研究所ユニット長 瀬筒秀樹さん)」カイコの染色体の様々な場所に、光る物質を作る遺伝子を組み込みます。すると光る場所が異なるカイコが生まれます。こうして、光る物質を目印にして、遺伝子の組み込み方のノウハウを蓄積していったのです。山

カイコから生まれた新素材
         "クモ糸シルク"の可能性

台車を引っ張るカイコを光らせる研究は、いま、大きな進化を遂げています。去年誕生した、新たな素材を生み出す、スーパーカイコ!普通のカイコに見えますが...繭の中にクモの糸の成分を出す、遺伝子組み換えカイコです。実はクモの糸は、大きなビジネスの可能性を秘めているそうなんです。日本のクモ研究の第一人者、大﨑茂芳さん(奈良県立医科大学名誉教授)によると、「クモの糸は、耐熱性がよく紫外線に強い。そして一番の特長は、やわらかくて強い」とのこと。クモの糸を束ねて作ったひもで大人6人が乗った台車をひっぱっても大丈夫。直径4ミリほどの細さでも、理論上は600キロまで、耐えられるんだとか。

クモの糸 でもクモの糸には課題が。クモは肉食のため、狭い場所で飼うとケンカをしてしまうなど、大量生産が難しいのです。そこで、クモの遺伝子をカイコに組み込んで作ったのが、"クモ糸シルク"。クモの糸の成分を1%含むだけで、切れにくさは通常の1.5倍にアップ。シルク本来の光沢や柔らかさと丈夫さを合わせもつ、新しい繊維が生まれました。「カイコそのものを使うのは非常にいいですね。少しでも、天然のクモの糸に近いものができるように努力すれば、21世紀の夢の繊維として間違いなくやっていけると思うんです。(大﨑さん)」

世界が注目!カイコパワー
         サナギでワクチン大量生産

根路銘さん去年12月、世界的な学術雑誌に「カイコのサナギを使って、インフルエンザワクチンを大量生産できる」という論文が発表され、大きな話題になりました。この論文の著者を訪ねて、やって来たのは沖縄。ウイルスなどを扱う研究所の所長、根路銘国昭さん(75)。国立感染症研究所やWHOで要職を務めてきた、ウイルス研究のエキスパートです。根路銘さんがカイコを使ったワクチンの研究を始めたのは、国立感染症研究所にいた頃のこと。従来のワクチンが持つ、卵アレルギーによる副作用を解決するためでした。

予防接種日本のインフルエンザワクチンは主に、ニワトリの有精卵を使って作られます。まず、卵にインフルエンザウイルスを注入。すると中でウイルスが増殖。このウイルスを取り出し、人に感染しないよう「不活性化」という処理を施します。そうして取り出したタンパク質が、ワクチンになります。しかし、卵を使って作ったワクチンは、一部の人に、アレルギー反応を引き起こすリスクがあるのです。そこで根路銘さんは、カイコに注目しました。短期間で大量のタンパク質を作る、優れた性質を持っているからです。

カイコでワクチン根路銘さんは、2年をかけてワクチンを作る技術を見事確立。しかし、実用化には至らないまま、定年。ふるさとの沖縄に戻りました。
ところが2009年、風向きが変わりました。新型インフルエンザの大流行です。新たなウイルスに対して、鶏の卵でワクチンを作るには、半年ほどかかります。迅速な対応の難しさが、浮き彫りになったのです。成長の早いカイコなら、2か月でワクチンを作れます。根路銘さんが、動き出しました。自ら立ち上げた研究所で、カイコワクチンの開発を再開したのです。

パソコン上でDNAの設計図を作るしかし頭の痛い問題が。危険なウイルスを扱うには、国が定めた基準を満たす専用の施設が必要です。その建設には巨額の費用がかかり、個人では、とても作れません。悩んだ末に根路銘さんは、実験室ではなくパソコンを使って、インフルエンザウイルスのDNAを分析。データ上で遺伝子操作を行うという、思い切ったアイデアを実行しました。言わば「設計図」をもとに、新たなDNAを化学的に合成。これをカイコのサナギに注入したのです。こうして根路銘さんは、カイコを使ったインフルエンザワクチンの製造に成功。免疫を作る効果もきわめて大きいことが確認できました。アメリカの医療機関の全面協力を受け、評価試験に向けた準備を開始。カイコの力で、今後、世界のワクチン生産の形が変わるかもしれません。

赤池学さん(科学技術ジャーナリスト)

赤池学さん(科学技術ジャーナリスト)

インフルエンザのワクチンなど製造を考えていくときに、ポイントはたんぱく質なんですね。カイコの場合、1か月で体が1万倍ぐらいに成長する。これだけのたんぱく質をつくれる生物というのは、たぶんカイコ以外にいないと思います。全国のいろんな研究機関でカイコを用いて医薬品をつくろうという研究が進められていて、例えば、ワクチンになるたんぱく質の入った「糸」を生み出すカイコとか、止血剤、血圧の降下剤とか。繭の中で休眠するサナギの休眠ホルモンを使って、がん細胞を眠らせて増殖を抑える抗がん剤の研究も始まっています。

養蚕を高付加価値ビジネスへ!
        奄美大島発★西さんの挑戦

機を織るカイコの大いなる可能性を活かして、地場産業復活に取り組むのは、鹿児島県・奄美大島。伝統産業の絹織物、「大島紬」で知られる島です。「大島紬」と言えば、自然な風合いと、緻密な模様が美しい高級品。かつては島の経済を潤す一大産業でした。「私なんかの時代は、機を織れない人っていないんです。奄美の人たちはほとんど織っている。あのときは公務員の給料よりも、紬を織っている奥さんの方が収入が多かったんです。(機織経験者)」しかしやがて、着物を着る人が減り、更に外国産の安い絹糸が台頭。島の養蚕業は、すっかり衰退してしまいました。

西さん島の養蚕業を復活させようと動き始めた人がいます。化粧品会社を営む、西 博顯さんです。これまでもクリームに絹の成分を配合した商品をつくってきた西さん。絹の活用を進め、養蚕業が再生されれば、地域が元気になると考えたのです。養蚕業を儲かる産業にするために西さんが注目したのが、付加価値の高い「医療分野」。絹の成分には、細胞の再生を促す効果があることが知られています。その効果を遺伝子組み換えでさらに向上。カイコを使った傷口の保護フィルムを、鹿児島大学医学部の研究室と共同で開発したのです。実験の結果は上々です。

農家を訪問する西さん絹の医療分野での活用が広がれば、養蚕業の収益向上が期待できます。西さんは、かつて養蚕業を営んでいた農家を訪問しました。「(西さん)シルクに傷を治す効果があるんだって。もしかしたら薬が作れるかも。」「(農家)もうちょっと前にそれが分かっていれば良かったのに。」「(西さん)今からでも遅くないから。もう1回島でも養蚕をしたいということで、いま頑張っている。教えてくれるだけでもありがたい。」「(農家)そんな薬で宣伝したら復活するかもわかりませんね。」西さんは、カイコの新たな可能性を伝え、協力を仰いでいます。

桑の木の栽培養蚕業復活の日のために、西さんがもう一つ取りかかっていること。それは、カイコのえさとなる、桑の木の栽培です。これまで植えた木は400本以上。最初に植えたものは、ようやく収穫できるまでになりました。「これ見せると、ほかの農家さんも『うちの畑も借りていいよ』って言ってくれる。カイコはすごく桑を食べるんで、これがないことにはどうにもならない。」地元の人たちも期待を寄せる奄美大島の「養蚕復活」。西さんの挑戦は続きます。

布川敏和さん(タレント)

布川敏和さん(タレント)

もう僕、幼稚園ぐらいから虫好きで、あだ名が昆虫博士と言われてたぐらいなんですよ。昆虫は大好きなんですけど。お婆ちゃんの実家が山梨県なんですね。小さい頃、屋根裏をのぞいたら、ズワーッと桑の葉の上に白いカイコがいて。びっしり。それからちょっとカイコって気持ち悪いかなって少し思ったんですが。今のVTRを見たら、カイコってすごい可能性を持っているんですね。

お問い合わせ先

「光るカイコ」「クモ糸シルク」について
農業生物資源研究所
ホームページ:http://www.nias.affrc.go.jp/

「クモ」の研究をしている奈良県立医科大学・大﨑茂芳名誉教授について
奈良県立医科大学
ホームページ:http://www.naramed-u.ac.jp/

「カイコで製造するインフルエンザ・ワクチン」について
生物資源研究所(沖縄県名護市)
電話:0980-54-3376

「カイコで製造するインフルエンザ・ワクチン」の研究協力機関
1. 日本大学 医学部 病態病理学系微生物分野:黒田和道 准教授
2. JRA総合研究所:杉田繁夫 主査
3. 産業技術総合研究所 健康工学研究部門:川崎一則 主任研究員
4. バキュロテクノロジーズ バキュロテック研究所:馬嶋景 代表取締役
5. 免疫生物研究所:清籐勉 代表取締役

「奄美大島の養蚕復活に向けた活動」について
アーダン
ホームページ:http://adan.co.jp/

「傷口の保護フィルム」を研究している鹿児島大学・金蔵拓郎教授について
鹿児島大学 医学部 医歯学総合研究科皮膚科学
医学部のホームページ:http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/

「根路銘さんが訪ねた養蚕場」について
UKAMI養蚕
ホームページ:http://www.okinawa-ukami.co.jp/
カビラさん選曲のエンディングの曲
曲名:「Nite & Day」
歌手名:SILK