放送時間 毎週日曜日あさ8時25分~8時57分

再放送時間毎週日曜日あさ8時25分~8時57分

これまでの放送

2015年3月22日放送

広がる"元気になる介護"

介護現場の挑戦が"老後"を 少しずつ変えていく

元気に歩く好口さん

介護が必要だったり何らかの不自由を感じる期間は、男性で9年、女性は12年以上。出来る限り元気に長く過ごしていきたい...そんな中、注目されているのが、生活の手助けをするだけではなくて、状態の改善を目指す介護です。

元気になるお年寄りが続出!
      注目の特養★その秘密は"水"

水分補給する好口さん最近、全国の自治体から視察がひっきりなしにやってくるという、都内の特別養護老人ホーム。入所者は80人。ここへやってきたときは自力での生活が困難だった方ばかりです。ところが、入所後、すっかり元気を取り戻す人が続出。介護が必要な度合いを示す「要介護度」が、下がった人が30人もいるんです。廊下を元気に歩く好口博さん(93)。3か月前に入所した時はベッドに寝たきりで、意識はボンヤリ。声かけにも、殆ど反応できなかったなんて、信じられません!その秘密は...この施設で特に力を入れている、"水分の摂取"です。

イラスト皆さん、食事中や運動の後など、何かする度に、こまめに「水分」を、ごくり。でもなぜ、水分が大切なのでしょうか?もともと体に蓄えている水が少なく、脱水症になりやすい高齢者。ある調査では、高齢者の4人に一人が、脱水症の1歩手前の状態になっていました。脱水が進んだとき怖いのが、「せん妄」という意識障害。意識がぼーっとして、幻覚を見ることもあります。このせん妄によって困難に陥っている高齢者が相当数いると、この施設では考えています。

記録施設では、入所者の脱水症を防ぐために様々な工夫をしています。冷蔵庫には、一人一人の好みに合わせ、20種類以上の飲み物を用意。入所後、状態が急速に改善したあの好口さんも、朝食には大好きな牛乳。栄養たっぷりの食事のあとにデザートのヨーグルトで、さらに水分補給しています。こうして水分を取るたびに、スタッフは、こまめに記録。一人一人の状態に合わせて1日の目標量を定め、水分摂取を促していきます。

お茶 皆さん、「水を飲めば元気になるなら、苦労はない」なんて、思っていませんか?実は、水分をとるのを嫌がるお年寄りは、とても多いんです。その理由を聞くと「トイレが心配」とのこと。水を飲む大切さを説明するスタッフから、ここで意外な話が!水分を摂取することで、意識がはっきりして、尿意や便意にいち早く気づけるようになるというのです。実際に、この施設ではトイレの失敗が減りました。いまでは、紙おむつを一切使わない「オムツゼロ」を達成しているんですって。

歩行訓練最近は、状態がすっかり改善した好口さん。杖を使って歩く訓練も始めました。要介護度は、入所時の4から、先日の認定調査では、2まで下がりました。好口さんのお見舞いに来ていた娘さんもその効果にびっくり。「すごいね。歩調が全然違います。」自信を取り戻してきた好口さん。次にやりたいことは?「カラオケやなぁ。カラオケで、NHK出たかったんやもんね。(笑)」

介護十分な水分摂取などによる、入所者の体調改善に力を入れるこの施設。取り組みは、意外なメリットをもたらしました。職員のモチベーションアップです。人材不足と言われる介護業界にあって、この施設ではほとんどの職員が定着しています。「(職員)結果が出ているなという実感がありますしモチベーションにつながっているかなと思うので、そこはどんどん進めていきたいなと。」

結城康博さん(淑徳大学教授)

結城康博さん(淑徳大学教授)

最近は"お世話をするだけの介護"ではなくて、水分補給とか、なるべく自分でトイレに行きましょうとか、"自立に向けた介護・元気になる介護"が非常に取り組まれています。(水分をたくさん摂取すれば改善する?)例えば認知症が治るとか、状態がよくなるとか、そういうわけではありません。脱水症状という、せん妄を良くすることで元気になっていくということなので、単純に水を飲めばいいというわけではなく、水の量も個人個人で量が違いますので、こちらの施設などは、介護現場の専門の方が上手に量も考えているんだということですね。

在宅で行う"元気になる介護"
      ポイントは環境・道具・動作

トレーニング埼玉県にお住いの菊地さん。夫の祥氏さんは筋肉が硬直するパーキンソン病をわずらっています。最近は症状が進み、自宅で転倒してしまうことも度々。この日菊地さんは、通っている介護施設で、転んだ時に自力で立ち上がるためのトレーニングをしていました。頑張る菊地さん。でも、施設のトレーニングで得られる成果には限界が・・・。

訪ねる専門家集団そこで、菊地さんの家での生活にも目を向け、介護や機能訓練の分野の専門家集団が、菊地さんのお宅を訪ねました。壁や棚をつたいながら、家の中をやっとのことで移動する菊地さん。その様子を見ながら問題点を洗い出します。すると不安定な家具などが転倒につながっているとわかりました。また、ベッドから起き上がるための筋力も不足しているようです。さらに今回の訪問でスタッフが注目したのが、陶芸の工房。実は菊地さん、陶芸で数々の賞を受賞したほどの腕前で、近所の方向けに自宅で教室も開いていました。「それが生きがい...続けられれば、続けたいね。」

段差しかし、病気がこのまま回復しなければ教室を閉じざるを得ません。そこで専門家たちは、いまは病気で休んでいる陶芸教室の再開を、菊地さんの目標に定めました。訓練の効果を高めるには、本人の意欲が一番大切だからです。日中過ごすリビングから教室までの道のりが菊地さんのトレーニングコース。途中には狭い寝室に、つかまるものの少ない和室。様々な危険が待ち受けます。中でも最大の難関が、土間へ降りる段差。高さはおよそ30センチです。でもここをおりないと、陶芸教室は開けません。

イスの調整スタッフが集まり、どうすれば菊地さんが陶芸教室まで歩けるようになるか、3つの観点から検討しました。1つめは「環境を整備する」こと。ベッドから起き上がるのが辛そうな菊地さんの様子から注目したのが、ベッドの横に置いてある椅子でした。20センチほど前にずらすだけで手が届くようになり、助けがなくても立てるように。続いて移動するときに手をつく棚。実は菊地さん、ここで度々転んでいました。1個だった棚を2個くっつけることで、グラグラせず安定感が増しました。

4点杖2つめは「道具」。菊地さんは移動するとき、杖からたびたび手を離し、柱や壁にもたれます。そんなとき4点杖なら、立てかけなくても倒れないので便利。最後は「動作」。重心を前に移すトレーニングをして、ベッドや椅子からバランスよく立ちあがるのを助けます。そしてあの難関、陶芸教室への段差を降りるためのトレーニング。「段差を降りる時は、残っている足の方が踏ん張りが必要。祥氏さんは右足の方が力が弱いので、ふんばりががきく左足を残して...」トレーニングは、菊地さんの動きがスムーズになるまで、3か月続きました。

笑顔の菊池さん陶芸教室の日。菊地さんは、リビングから陶芸教室まで歩いて行くことが出来なければ、教室を閉じようと心に決めていました。まずは訓練通り、前に重心をかけて立ち上がります。続いて補強した棚に手を置き、4点づえを使って順調に進みます。そして最大の難関、段差です。いつものように、生徒さんが手を貸そうとしますが...覚えた通り、右足から降り、無事、到着です。菊地さん、すこし自信を取り戻しました。

城戸真亜子さん(洋画家・タレント)

城戸真亜子さん(洋画家・タレント)

よかったですね。奥様も見守りながらちょっと涙してらっしゃいましたけど、ご本人がすごく生き生きと目標に向かってがんばってくれる姿は、家族もほんと嬉しいですよね。おうちで、あそこまで"オーダーメイドの介護"をやってくださるのは、ありがたいことです。うちの母の場合も足のつけ根の骨を折って、おうちでリハビリはちょっと難しくて。転んでしまったらまた骨を折ってしまうかもしれないとか、それが怖かったんですよね。だけどこうして自分の家に合わせて「ここはこうした方がいい」ってアドバイスがいただければ、うちでできるかもしれないって気持ちになれたと思います。

お問い合わせ先

水分ケアに取り組む施設
特別養護老人ホーム「杜の風」
ホームページ:http://shoukichi.org/shibuya/

施設が取り組む水分ケアについて
※この施設では、竹内孝仁氏が提唱する「自立支援介護」と呼ばれる介護方法を参考に
 水分ケアを行っています。

自立支援介護について
ホームページ:http://jscil.com/concept

※水分ケアについて
番組上でご紹介した水分ケアについては、誰でも水分をたくさん摂ればいいということではありません。そのため番組の中でも、注意事項として、医師や専門家の指導の下、行うことが適切であることを併せてご紹介しています。

高齢者の4人が脱水症一歩手前というデータについて
「かくれ脱水」委員会
ホームページ:http://www.kakuredassui.jp/aboutus

在宅で行う"元気になる介護"を実践している施設
デイサービスセンターアクア
ホームページ:http://www.e-crea.biz/care/aqua/
カビラさん選曲のエンディングの曲
曲名:「I'll Stand By You」
歌手名:The Pretenders(1994 )