デザインセンター・音響デザイン部岸 優美子
合戦シーン用によろいをぶつけ、生音(動作音)を録音
大学の進路を考えていた時期に東日本大震災が起こり、大学・大学院で防災や災害時の情報発信について勉強しました。一方で、昔から音楽が好きだったので、大学では電子音楽サークルに入り、作曲をしていました。「学生時代に防災について学んだことを社会に還元したい」「音楽関係の仕事をしたい」という二つの希望をかなえるのは、防災・減災報道を使命としている「公共メディアNHK」の音響デザインだと考え、この仕事を志望しました。
現在主軸を置いているのはドラマの音響デザインですが、「NHKハッカソン」というイベントで視聴者の方とともにNHKのデータを使って防災に対して何ができるか考えたり、水害を扱った「NHKスペシャル」に携わったりと、ここでしかできない仕事の仕方ができていると感じています。
『恋せぬふたり』という、他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」の男女の同居生活を描いたドラマの音響デザインを担当しました。繊細で温かい世界観のドラマで、主人公たちの心情に深く迫るようなシーンをどう音で表現するかが難しく、音楽の使い方や環境音の構成を工夫しました。主人公が不安な気持ちを抱えている時、蛍光灯のノイズや時計の秒針の音、家の外から聞こえる楽しそうな親子の声などを加え、心をざわつかせるような演出をしました。主人公たちが映像では画角の外からどんな音が聞こえているのか自分の想像力すべてで体当たりする感覚でした。音響デザイナーはセリフ以外のすべての音を設計します。私たちの発想力次第で、世界観をコントロールしてしまうので、その大変さとやりがいを感じました。
音響デザインは、ドキュメンタリーや夕方の情報番組など、ジャンルを問わず挑戦できます。なので、柔軟性を持って様々な番組を担当していきたいです。また、公共メディアであるNHKは、より正確な情報を伝える存在だと思っています。防災を学んだ際に、人の気持ちを動かして、防災行動を促すことの難しさを感じました。大切な情報や熱意のこもったコンテンツを届けるアンカーの1人として、誰かの心を動かすデザインができるようになりたいと考えています。そのためにも様々な番組で経験を積んだり、プライベートでは森や海辺などに、自然の音を体感しに行ったり。大胆で豊かなアイデアを持つこと、その実現のため丁寧で繊細なアプローチができるようになることが今の目標です。
身支度を整えます。時間があるときは、音楽を聞きながらウオーキングをします
リモートワークで、ドラマ「大奥」のMA(音響の最終調整)に向けて、台本をチェックします
通勤ラッシュを避けて出局します
事前にプランニングして準備したSE(効果音)、音楽を映像に合わせてバランスを取りながら入れ込んでいきます
先輩が作成した回を試聴し、表現の工夫を学びます
退局後、好きなアーティストのライブに行くことも