NHKさいたまブログ

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年末に向けて、渋沢栄一の年老いてなお、ますます精力的な活動を続けていく姿を描く、大河ドラマ「青天を衝け」。

そのドラマの最後に放送される、「青天を衝け紀行」という、ミニ番組をご存じでしょうか?ドラマにゆかりの場所を紹介する1分半のミニ番組で、大河ドラマのゆかりの場所や建物などを紹介し、大河ドラマをより身近に感じてもらうための番組です。

https://www.nhk.or.jp/seiten/journey/

このミニ番組のBGMを、12月5日の放送回から演奏するのは、渋沢栄一ゆかりの埼玉県深谷市の小学生たちです。大河ドラマとしては初の試み、子ども達の演奏に託した私たち作り手の思いを記したいと思います。

▼自己紹介▼

はじめまして。こんにちは。福岡です。現在放送している大河ドラマ「青天を衝け」の制作統括をしています。なんだか、偉そうで大変そうな役職ですが、まぁぼんやりと撮影現場を見ていれば、どんどこドラマが出来ていく・・・というようなことは、ありません。日々、諸所おこる出来事に右往左往して、泣いて笑ってケンカして、なんとか番組を制作しています。12.03-1.jpg

青天を衝け紀行とは

その大河ドラマの直後に放送している「青天を衝け紀行」。これまで栄一のふるさと、血洗島や、草彅剛さんが演じた徳川慶喜が、5歳から英才教育を受けた茨城県水戸市の弘道館、栄一が出仕した大蔵省跡など、様々なゆかりの地を紹介してきました。

この「青天を衝け紀行」のBGMは、ドラマ冒頭のテーマ曲をアレンジしたもので一流の演奏家が演奏します。一回目は、バンドネオンの三浦一馬さん、続いてオンド・マルトノの大矢素子さん、そしてチェロの伊東裕さんと続いています。

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(紀行キャプチャ ※上:第1回 中ん家、下:第2回 弘道館)

▼子ども達の演奏でやってみませんか?

「青天を衝け」のテーマ音楽を作曲されたのは、佐藤直紀さんです。これまでも、大河ドラマ「龍馬伝」や連続テレビ小説「カーネーション」をはじめ、映画「マスカレードホテル」や「ALWAYS三丁目の夕日」などの音楽も手掛けられています。

https://www.nhk.or.jp/d-garage-mov/movie/297-2.html

その佐藤さんが、今年の6月上旬、3回目の録音後に、私ににこにこしながら告げました「『青天を衝け紀行』の音楽を深谷市の子どもたちで、それも小学生の鼓笛隊に演奏してもらいませんか?」。先ほども書いた通り、「青天を衝け紀行」はもちろん、過去の大河ドラマでもこれまでは一流の演奏家が演奏することが常だった番組のBGM、正直私はとても驚きました。しかし、同時にとても斬新でおもしろいアイデアだとも思いました。渋沢栄一は明治、大正、昭和の時代に数多くの企業を育て、平和活動を通して明るい未来をつくろうとその人生をかけて尽力した人物です。だから、未来をつくる子どもたちに演奏してもらいたい、その思いをテーマ曲でつないでいくんですね!直紀さんそのアイデア最高ですよ!12.03-4.jpg

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▼栄一の教えを学ぶ子どもたちが演奏を

このアイデアは実現可能なのか?さっそく深谷市役所に電話してみました。すると、ぴったりの学校があるというのです。深谷市にある常盤小学校は、鼓笛隊の活動をしていて、さらに渋沢栄一にちなんだ教育にも熱心とのこと。藍を植え、刈り取り、乾燥、発酵させて染料にして、藍染めまでする、ということを授業の中で実践しているそうです。

▼コロナ禍・リモートでの練習

学校へのオファーはとんとんと進み、音楽の収録日は9月29日、6年生全員の100人近くが参加してくれることが決定しました、…が、しかし…コロナ禍でのプロジェクトです。鼓笛隊にはピアニカやたて笛など吹いて演奏する楽器もあります。なかなか、集まって練習するわけにはいけませんし、ご家族も心配されることでしょう。なので、練習期間にあたる夏休みは、リモートで頑張ることになりました。

リコーダー、鍵盤ハーモニカ、キーボード、ベルリラ、アコーディオン、ドラムからなる「深谷市立常盤小学校鼓笛隊スペシャルバージョン」を編曲をしたのは佐藤さんに師事する上野友裕さん、佐藤さんとともにリモートで子どもたちの練習の監修にもあたっていただきました。佐藤さん・上野さんから子どもたちへの注文はただ一つ、「失敗を気にしないでみなさん楽しんで演奏してください!」でした。

そして、夏休み後半、8月下旬に一度、鼓笛隊の全体練習の様子を見に行くことになりました。もちろん、まだ完成途中でしたが、常盤小学校のみんなががんばって演奏する姿に感動、うるっときていたスタッフが何人もいました。日々の仕事で疲れた心に、子どもたちの演奏は、染みます、心に深く・・・。実際に対面して指導するのは初めてと言う事もあって、演奏の指揮をする上野さんも熱が入っていました。佐藤直紀さんは終始ご機嫌で、みなさんのびのびしていていいですね。とほがらかに話していました。

▼収録本番。そしてビッグニュースも!

そしていよいよ、9月29日の録音当日がやってきました。深谷市の常盤小学校に大量のマイクと機材をトラックで運び、朝からセッティングが始まりました。ちらちら見にくる小学生はそわそわしている様子。なにより、校長先生が一番そわそわしています。そしてお昼ごはんの後、いよいよ録音開始。総勢106人が体育館に集合です。一度軽く練習して、そして本番!

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みんないい表情で演奏しています。よかった!本番一回で佐藤直紀さんからはOKが出ました。でもなんか心配だったので、お願いしてもう一回録音させていただきました。とにかく6年生全員が、みんな楽しそうでよかった。そして、とびきりのビックニュースの発表が佐藤直紀さんから子どもたちに告げられました。「『青天を衝け』のサウンドトラックのCDに、鼓笛隊の音楽が収録される」のです。子どもたちは、みんな大喜び!記念写真も撮影し、無事に録音の日が終了しました。

 

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▼すべての物は不完全の中にある

録音した音源は、それぞれのマイクで録音した各楽器のレベルを整えて、楽曲として仕上げるトラックダウンと言う作業を後日スタジオで行います。総勢106人の演奏、どうしてもちょっと間違えちゃったという児童もいます。このトラックダウンで、指揮をした上野さんと私は、なるべく間違えているところは音量を抑えて目立たないように仕上げようと思っていました。しかし佐藤直紀さんはきっぱりと「いやそれはしなくていいです。ミスも含めて鼓笛隊のみんなの演奏です。そのままで大丈夫です。これでOK!」とおっしゃったのです。その一言を聞いて、わたしははっと我に返りました。すべてのものは不完全の中にある。ということですね。不完全の美学ですね!最高です。みんなの演奏が余すところなく、あふれ出しそうな音楽に仕上がりました!

 ということで、12月5日(日)から登場予定の「青天を衝け紀行」深谷小学校鼓笛隊の演奏をお楽しみに。

 ※首に巻いているきれいな藍染のスカーフは、生徒たちが染めたものです