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Discover science column

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今回の実験は「光の速さをはかってみよう」

大科学実験の記念すべき第1回は「音の速さを見てみよう」でした。今年度最後の放送となる今回は光の速さを測ります。

「え、光速なんて測れるの?」とまず思いますよね。ですが、実際にそういう実験をした人がいました。170年ほど前なのですから、びっくりです。教科書にもよく出てくる1849年のアルマン・フィゾーの実験を、実際に試してみようというのが、今回の大実験です。

フィゾーの実験の仕組みは、番組の大実験とほぼ同じです。番組ではモーターを使って歯車を回転させていますが、フィゾーはひもに結びつけたおもりを使い、おもりが落ちる力で歯車を回していました。実は大実験でもおもりを試しています。20キロのおもりを8メートルほど落として歯車を回転させました。これでも十分な回転数を得られ、実験レンジャーは「フィゾーはすごい!」と感動したそうです。

番組ではあまりふれていませんが、この実験で実験レンジャーたちが最も苦労したのは、明るすぎて肝心の光の点が見えにくかった点。明るすぎるというのは意外ですが、実験では、光源から出た光が歯車の隙間を通って島まで行き、鏡で反射されて戻ってきた光を望遠鏡でとらえます。

ただし、これは点となって見える光の場合。実際には、光源から出た光の一部は歯車にも反射しますし、望遠鏡を通るときにも筒の中で散乱します。これらの光のせいで明るくなってしまい、戻ってくるかすかな光がよく見えないのです。

これを解決するために、当日は光学機器メーカーの専門技師にも参加してもらいました。大実験の仕組みを説明する模式図の中にもあるように、光源の光は横から入れて斜めにした鏡で直角に反射させて島へと送ります。出ていく光と戻ってくる光の通り道をわずかに変えるだけで、見やすくなるのだそうです。

とはいえ、実際に光の点がわかるほど見やすくするのは専門家をもってしても至難の業。あきらめかけて翌日以降の相談を始めた真夜中すぎに、ようやくうまく行きました。「現場での達成感は、番組ではわからないだろうな〜!」とシニア実験レンジャーは言っています。

ところで、大実験は往復12キロの距離で行いました。実験レンジャーたちは光の速度もフィゾーの実験も知っているので、この距離ならば大丈夫と見当をつけることができます。ですが、最初に行ったフィゾーはどうやって見当をつけたのでしょう? 光の速度は毎秒約30万キロと今はわかっていますが、毎秒1000キロでも毎秒1000万キロでも人間にはその違いを感知できないでしょう。でも、ケタが2つ変われば、実験に必要な距離は大きく変わります。

フィゾーは光の速度を初めて測った人として知られていますが、それには「地上で」「実験で」というただし書きがつくのです。フィゾーの前に夜空の星の観測データから、計算によって光の速さを求めた人がいます。フィゾーの実験からさかのぼることさらに170年、つまり今から340年も前の1676年。ニュートンが活躍していた時代です。

その計算をしたのはデンマークの天文学者オーレ・レーマー。木星の衛星が木星の裏側に隠れる現象を長年にわたって観測すると、その現象が完全に周期的に起きるのではなく少しズレが生じることがわかっていました。レーマーはこのズレは地球と木星との距離が変わるせいだと考え、この距離の違いから光の速さを計算しました。計算から得られた光の速さは毎秒約20万キロ。30万キロと20万キロでは1.5倍も違うと思うかも知れませんが、ここで大事なのはケタです。人の感知能力を大きく超えた数字なのに、ケタはあっていたのです。

電気はもちろん蒸気エンジンもなかった時代。星の観測と計算だけで光の速さを求めるという壮大な研究をした人がいたことに、感動を覚えませんか。

(日本科学未来館・詫摩雅子)