前のページへ戻る

Discover science column

この回を見る

今回の実験は「水しぶきの階段」

大科学実験の決まり文句は「やってみなくちゃわからない」。でも今回の実験は「やってみてもわからない」だった──ベテランのシニア実験レンジャーからこんな名セリフまで飛び出した回でした。

今回のテーマは「位置エネルギー」。同じ物でも、落としたときの衝撃は高さによって違いますよね。より高い位置にあるもののほうが、より大きなエネルギーをもっているのです。

実験16「時速100kmの振り子」は、位置エネルギーを運動エネルギーに変える実験でした。振り子のおもりが最も高い位置にあるときは速度ゼロですが、落ちるにしたがってスピードはどんどん速くなり、真下で最高速度になります。

今回の実験では、位置エネルギーで「仕事」をさせます。この場合の仕事とは、何かを持ち上げるとか、動かすとか、壊すとかなどを指します。今回の実験では「水しぶきを上げること」になりました。

ですが、ボールを落として水しぶきを上げると決まるまでにアイデアは二転三転。直径1センチくらいの鉄玉を落としてスイカを割る、シーソーの上におもりを落として反対側に載せたおもりをジャンプさせる、さらには鉄球を落として石板を割る、杭を打つ──などなど。毎回、詳細な予備実験をして、その結果が細かく記録されています。本番につながらなかった予備実験がこれほど多い回も珍しいくらいです。予備実験のデータは、どういうときに岩が割れやすいのかなど、じっくり見ればいろんなことがわかりそうです。

ボールを水槽に落とすと決まってからも、試行錯誤が続きます。落ちるボールが回転しているとその影響も出てしまうため、回転しないように糸で吊した状態から落とすことに。

さらに試練は続きます。予備実験では1つの水槽だけで実験をしていました。ボールの高さに応じて水しぶきの上がり方もだんだんと変わる様子がうまくいっていたのに、本番用に水槽を8つ用意したら、多くの水槽では水しぶきがあちこちに飛び散ってしまい、高く上がらなくなってしまいました。ちょっとした水槽の大きさや形の変化で変わってしまうようなのです。

8つの水槽では20回も試みたのですが、結局、水槽の条件をそろえるために予備実験に使った水槽を使い回すことにしました。収録ではそれぞれの高さから5回ボールを落とし、水しぶきが1番高くまで上がったものを比較に使いました(明らかに着水に失敗したものを除いても、毎回、水しぶきの高さは変わり、その原因を突き止めるのは難しいのです)。

実験はボールを落とすだけなので簡単そうに思えますが、水面が静かな状態に戻るのはただ待つしかなく、この待ち時間の長さに水の動きを実感したようです。

超高速カメラでとらえた水の動きは美しいですね。この水の動きに実験レンジャーたちは翻弄され、「やってみてもわからない」になってしまったわけですが……!

(日本科学未来館・詫摩雅子)