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Discover science column

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今回の実験は「とってもめんどうなゆで卵」

大科学実験では物理の実験が多いのですが、実験73「燃やして重くして!」に引き続いていて、今回は化学の実験です。

使うのは、海苔の袋などに乾燥剤として入っている生石灰(酸化カルシウム)。水と反応すると消石灰(水酸化カルシウム)になって熱が生じます。この熱で、ゆで卵を作ろうという実験です。

実験室での小実験では、生石灰に水をかけると100度を超えました。量を増やした大実験では、200度は超えると予想していたものの、実際には400度まで上昇。これには実験レンジャーたちもびっくり。

大実験の装置はステンレス製で、中が見えるように手前部分だけは内側を耐熱ガラス、外側を耐熱温度250度のポリカーボネート板(アクリル板よりも熱には強いです)の二重構造にする予定でした。ところが、装置の組み立て時にガラスにヒビの入るハプニング。ポリカーボネートは熱で変形しやすいのですが、やむを得ません。ポリカーボネート板の二重構造にして、生石灰が直接、内壁に接しないように注意しました。それでも、固定していないポリカーボネート製の蓋は変形してしまいました。

乾燥剤にもなる身近な材料なので試してみたくなるかも知れませんが、今回の実験はちょっと危険です。実験レンジャーはメガネにマスク、手袋となにやら物々しい格好をしていましたが、生石灰の粉が目や口に入ると、本当に危ないのです。高温になるだけでなく、湿った石灰は強アルカリ性になるからです。うっかり素手で触るとそのときは何ともなくても、翌日には皮がむけてしまうこともあります。

大量の生石灰を扱うとなると、消防への届け出も必要になります(大実験では紙が自然に燃え出す温度まで到達していますから、この措置は必要ですよね)。また、使い終わった石灰を産業廃棄物の業者に引き取ってもらおうとしても、もう発熱しないよう、すべて水がかかって反応し終えた状態でないとダメなのだそうです。大実験の終了後も水と反応していない生石灰が残っていて、ベテランのシニア実験レンジャーが1週間がかりで水をかけて処理しました(危険なことは他人に任せず、すべて自分でするところは実験者の鑑です)。

危険性のある実験だからこそ、どういうことが起こりうるのかを洗い出すために、予備実験がきわめて重要だったとシニア実験レンジャーは言います。高温になっている場所に冷たい水がかかったらどうなるか、水のかかった生石灰がどのくらい膨らむのか。装置の設計や材料の置き方、実験の手順などに予備実験は不可欠でした。

番組を見ながら、「あれ?“ゆで卵”でいいのかな。ゆでているのではなく、蒸しているのでは?」、「卵ならば、100度にしなくても固ゆで状態にできるはず」などと頭に「?」を浮かべながら見ていた方。生石灰の実験は気軽にはできませんが、ぜひ、熱源に調理用コンロを使い、蒸し器や鍋と水で実験をしてみて下さい。何度くらいから固ゆでにできるのか、ゆで卵と蒸し卵では違いがあるのかどうか、何か新しい発見があるかも知れませんよ。でも火傷には気をつけて!

(日本科学未来館・詫摩雅子)