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Discover science column

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今回の実験は「クールに水を凍らせろ」

「今日は氷ができていく瞬間を見る大実験。見たことある?」

思わず「ないです」と答えながら、見入ってしまいました。冒頭のこのナレーションの最中に流れている映像が、まさにその瞬間をとらえたもの。美しいという以外にありません。

水は0度になると凍り始めますが、ゆっくりゆっくり温度を下げていけば0度以下の水にすることもできます。「過冷却水(かれいきゃくすい)」と言います。水を入れて蓋をした大きめのペットボトルをマイナス5度くらいの冷凍室に入れておくと、わりと簡単に過冷却水を得ることはできるそうです。でも、だからといって凍る瞬間をとらえるのは大変なこと。過冷却水は、冷たいものに接するとすぐに凍り始める不安定な状態だからです。

今回の撮影は、気がつけば凍り始めていて、何度も失敗を繰り返しています。一度失敗すると、容器を0度以上に温め直さなければなりません。0度以下のままでは、残った水滴が凍ったり、入れた水が壁面から凍っていくきっかけになったりしてしまうのです(容器を0度以上になるように“温める”ということからも、どれほど寒い場所で行われたのかがよくわかります)。

今回の実験では、温度の変化が重要になります。実験では氷の粒を過冷却水が凍り始めるきっかけにしていますが、温度計を入れたらその冷たさがきっかけで凍り始めることも。部屋の温度はマイナス5〜7度ですから、そのままにしておくと温度計の表面温度も室温になってしまうのです。容器が円筒形であったのも実は重要なポイント。角があるとそこだけ2方面から周囲の冷気にさらされ、凍りやすくなってしまうのです。最後に挑戦した平たいオブジェでは、すべての角を断熱材で包んでいます。

これだけの低温での実験となると、実験レンジャーの体温も大きく影響するようになります。マイナス2度くらいまで水の温度を下げていく必要があるのですが、部屋の中に実験レンジャーたちがいると体温で室温が上がってしまいます。なので、時間をおいて水温を確かめにいったのだとか。実験35の「人間上昇気流」の回で体温の影響力を見る実験をしていますが、今回もそれを思い知ることになったわけです。

アイデア段階からほぼ2年。実験を何回も重ねて、失敗する原因を1つ1つ突き止めていったわけですが、「二度と同じ変化や結果になりません。謙虚に無心で自然を見ることの難しさを改めて思い知らされました」とのこと。水の中でうごめく無数の水分子の動きに翻弄されたようです。

苦労の多い実験でした。それでも、水の中を伸びていく氷の結晶や、雪のような結晶となって上へ浮かんでいく欠片を見た現場では「驚きと感動がありました」。

貴重な映像となりました。氷がこれほど美しいとは!

(日本科学未来館・詫摩雅子)