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Discover science column

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今回の実験は「燃やして重くして!」

今回のテーマは「燃焼」、つまり燃えるという現象です。

花火で遊ぶときには「まわりに『燃えやすいもの』がないことを確認しましょう」と注意されますよね。「燃えやすいもの」とはどういうものでしょうか。紙や布、木くずなどが思い浮かびます。乾いた草や枝も燃えやすいですね。これらの共通点は、薄かったり細かったりすること。これは、空気と接している面が大きいことを意味します。

何かが燃えるとは、空気に含まれている酸素が激しくくっつくことなのです。

塊の鉄はなかなか燃えませんが、細い糸のようにすれば燃えます(危ないので、自分一人で試したりしないで下さいね)。でも、鉄の燃え方は紙や木くずの燃え方とは少し違います。紙や木くずは炎が上がって、水蒸気や煙が出ます。煙には黒いススも含まれています。二酸化炭素などの気体も出ています。一方で、鉄は赤くなりますが、気体は出ません。紙や木くずは燃えると酸素とくっついた成分が気体となって飛んでいきますが、鉄では燃えて酸素とくっついても気体にならずにその場所にとどまります。

木くずが燃えると気体が出ていった分だけ軽くなりますが、鉄の場合は酸素がくっついた分だけ重くなります。これを確かめようというのが今回の大実験です。

最初に実験レンジャーたちを悩ませたのは、鉄(スチールウール)を燃やしたときに、どのくらい熱くなるかわからない点。熱くて近づけないのでは、大実験の実行は難しくなります。計算ではなかなかわからず、まずは20キログラムの鉄で実験。案外と近づける熱さとわかり10倍を目指すことにしたのですが、今度は大実験を屋内ですることを引き受けてくれる施設がなかったのだとか。鉄を燃やす大実験など、どういうリスクがあるかわかりませんから、断られたのは無理ないと思います。

実験レンジャーたちが屋内で行いたいと考えたのは、この実験に強風は大敵だからです。大実験では途中からブロアーで風を送っています。そうするとどんどん酸素が送られて良く燃えるようになりますが、あまりに燃え方の勢いが強いと、高温になりすぎて鉄が燃えずに溶けてしまうのです。溶けると内側には酸素が届きにくくなり、燃え残ってしまいます。幸い、当日は微風のベストコンディション。無事に全部を燃やすことができました。

さて、番組ではほとんど触れていませんが、実はここでちょっと不思議なことが起きていました。鉄の重さがわかっていれば、燃えることでくっつく酸素の量もわかり、どのくらい重さが増えるのかは計算でわかります。190キログラムの鉄ならば、増加分は72.6キログラムになるはずでした。すべてを燃やしきるのは難しいので、これよりも少なくなると予想していました。ところが、最後に天秤で計った重さは73キログラム。計算量よりも少し重く、燃えた鉄(酸化鉄)の載った天秤はより下がっていたのです。

いったい何が起きていたのでしょう?

鉄が燃えるとは酸素がくっつくことですが、鉄と酸素のくっつき方は1種類ではありません。より重さの増えるタイプのくっつき方になっていたのかもしれません。
もう1つ、可能性があります。実は、燃えた鉄が完全に冷めた後は天秤皿が少し上がっていたのです。高温のときの燃えた鉄のまわりでは、空気も熱せられて上昇気流が起きていました。天秤皿の上で、空気が上昇していく運動が起きていたのです。このとき、反動で天秤皿には下に押しつける力がかかります。これが、計算よりも天秤皿が下がっていた理由の1つと考えられます。燃えた鉄が十分に冷めれば上昇気流もなくなるので、天秤皿は本来の位置に戻ったわけです。

これは実験をして初めて気づいたことでした。「やってみなくちゃ、わからない」!

(日本科学未来館・詫摩雅子)