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Discover science column

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今回の実験は「ひとつだけ動かして!」

今回の実験テーマは振り子の共振。

振り子は先に重りがついて、ゆらゆらと揺れます。最も手前の位置から、向こう側に行って、また戻ってきて元の手前の位置に来るまでにかかる時間を「周期」と呼んでいます。振り子の周期は、ひもの長さで決まります(正確には、支点から振り子の重心までの長さ)。重りが100グラムでも1キロでも同じです(あまり軽いと、空気の抵抗で遅くなってしまうので、ある程度の重さは必要です)。

振り子を揺らすとき、通常は重りを持ち上げて放しますが、今回の実験のように支点の側を小刻みに動かしても、振り子の揺れをどんどん大きくしていくことができます。そのときのポイントは、動かす距離の長さではなく、タイミング。振り子の周期に合うように押したり引いたり繰り返せば、振り子の揺れはどんどん大きくなっていきます。逆に、周期に合わないと、振り子の動きはだんだんと収まっていきます。これを利用して、長さの違う振り子のうち、狙った1つだけを動かそうというのが、今回の大実験です。

最後に一番長い振り子を揺らそうとしたら、短い振り子も揺れていました。これは、長い振り子の周期が短い振り子の周期のおよそ3倍だったからです。短い振り子が3往復する間に長い振り子が1往復します。棒の動きは長い振り子の周期に合わせていますが、短い振り子にしてみると、1回半おきに押されていることになります。

ところで皆さんは東日本大震災のときに、東京などの遠く離れた場所にある高層ビルが大きく揺れたのを知っていますか? あのときの地震では、遠く離れた場所ではゆっくりと揺れていました。この揺れの周期とビルがしなって揺れる周期が一致してしまったために揺れが大きくなったと考えられています。大実験では、上の棒を動かして、その動きが下の振り子の周期と合うと振り子が大きく揺れることを示しました。地震では上下が逆さまになり、上の棒が地面に振り子がしなるビルに相当します。ゆっくりとした動きでは、周期の長い、つまり振り子ではひもの長い、建物では高いビルが揺れることになります。

大実験は振り子を揺らすことに苦労したわけですが、同じくらい難問だったのは揺れている振り子を、次の挑戦のために止めることだったそうです。短い振り子は高いところにあるので、手が届きません。脚立を使うのは危ない上に時間がかかりそう。

解決策を出してくれたのは、大実験の装置を作ってくれた人でした。一方から、ロープを垂らして反対側の下に引っ張って、振り子の動きを抑えるというもの。「このアイデアがなければ、収録にかかる時間はずっと長くなったはず」と実験レンジャーも感心しきり。実に効果的でありながら、とてもシンプル。まさにグッド・アイデアのお手本のような方法でした!

(日本科学未来館・詫摩雅子)