前のページへ戻る

Discover science column

この回を見る

今回の実験は「落下でダイエット?」

今回の実験は、もともとは「落ちている間は、重さがゼロになる」を示そうと考えていたそうです。物理学の授業では「自由落下中は無重量になる」などと表現します。なるべく長い時間、無重量の状態を見せようとすると、長い時間、落ち続ける必要があります。そこで、体重計に載ったままスカイダイビングをすることを考えたそうですが、安全面からあえなく断念。

それはそうでしょう。「体重計に載ったまま」といえば聞こえは良いですが、実際には「足に体重計をくくりつけた状態で」となるはずです。着地のときに足が自由に使えないのは危険です。

このときのアイデアの名残は、サンダル付きの体重計。お腹を気にする男性がこの体重計をはいて、台からマットに飛び降りるシーンがあります。番組制作の途中段階ではサンダルではなく、足首の長い地下足袋だったこともありました。足首がそれほど固定されず、脱げにくいからでしょう。でも、足首を痛めないことを優先すると、すぐに脱げるサンダルの方が安全性は高いです。

落下の大実験ができる場所は、それほど多くはありません。高さだけならばいくらでも高い建物がありますが、そこから物を落とす実験はそうそうさせてもらえません。

地面にぶつからないように細心の注意を払ったとしても、万が一のことをやはり考えてしまいます。それならば、と落ちるのを楽しむバンジージャンプを使っての大実験になりました。

強力なゴムを使うバンジージャンプでは、体重はその瞬間瞬間で変わります。ゴムがたるんでいるときは、完全に「落ちている状態」(自由落下の状態)ですから、体重はゼロになります。ゴムのたるみが取れた後はちょっと複雑です。簡単なところから始めましょう。ゴムが伸びきった一番下の地点、つまり、落ちきって落下スピードがゼロになったその瞬間、体重計にかかる重さは最大になります(大実験では振り切れていましたね)。

このあと、ゴムが縮もうとする上向きの力と重力で落ちる下向きの力の兼ね合いで、何度か上下運動を繰り返しますが、やがて重力とゴムの力が釣り合うところで止まり、宙ぶらりんになるはずです。このときの高さをここでは「釣り合い点」と呼ぶことにしましょう。

釣り合い点では体重計は本来の重さである85kgを示すはずです。ゴムの力で上下している間(ゴムがたわみなく伸縮している間)は、釣り合い点から下にあるときは85kgよりも重くなります。釣り合い点から上にあるときは85kgよりも軽くなりますが、ゴム本来の長さよりも上に行って、たわみが生じる高さより上がると重さはゼロとなります。

バンジージャンプであれば人で実験しても大丈夫そうですが、通常とは異なり、ゴムと人を直接つなぐのではなく、間に体重計が入ります。万が一の事態を考えて、大実験では人形を使うことになりました。とはいえ、大きさも重さも人間の男性そっくり。大実験をたまたま見ていた周囲の観光客の方の中には、本物の人が飛び降りたと思ったようで、ゴムの動きが止まっても人形が動かないのを見て「気絶している」と心配してくれた人もいたそうです。まさか、人形を落とす実験をしているとは思わなかったのでしょうね。

(日本科学未来館・詫摩雅子)