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Discover science column

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今回の実験は「砂漠でシャワー!」

今回は、空気の中に水蒸気としてあるはずの水を取り出そうという実験。やろうとしていることは実験20「かなりしょっぱいウエディング」と似ています。

実験20では、お湯にもうこれ以上は溶けないというくらいたくさんの塩を溶かしておいて、そこにワイヤードレスを沈め、塩の結晶でドレスを飾りました。お湯の温度が下がるにつれて、水に溶けていた塩が固体の結晶として出てきたわけです。

塩の実験では水に溶けている塩を固体として取り出しましたが、今回の実験は空気の中に気体として存在する水を液体として取り出そうというわけです。「液体から固体」と「気体から液体」の違いがありますが、もう一つ、大きな違いがあります。それは、元の状態でも「ぎりぎりのところまで含まれているか」という点です。塩の実験ではお湯にもうこれ以上は溶けないところまで塩を溶かしています(飽和水溶液といいます)。一方の砂漠の空気は乾いています。同じ体積の空気でももっとたくさんの水分を含むことができるはずです。もともと少ないところから取り出そうというところに、この実験の難しさがありました。

大実験で使ったポリ袋1つに入る空気は約250リットル。100袋あるので、空気の量は全部で2万5000リットルです。天井が3メートルと高めの6畳間に含まれる空気がだいたい2万5000リットルになります。

大実験を収録した日の昼間のカラハリ砂漠の気温は20度ほど。実は収録の前々日に幸運にも雨が降り、湿度は30%弱とカラハリ砂漠としてはなかなかの好条件でした。この湿度ならば計算上は0度前後で、空気中の水蒸気が水として出てくるはず。

ところが、夜になって気温が下がってみると、袋の中の空気ではなく、外の空気からの水がポリ袋に水滴となってついていました。袋の中の空気は全部合わせても1部屋分ですが、風で動く砂漠の空気は無尽蔵です。気体の水蒸気から液体の水になるには、何か“足場”のようなものが必要になりますが、ポリ袋がその足場になったようでした(塩のドレスでは、ワイヤーにまいた糸が塩の結晶が出てくるための足場になりました)。

袋の中にも水が出ていましたがほんのわずか。袋の中と外では空気の量が比べものにならないほど違いますから、当然と言えば当然です。

計算上、この大実験では18ミリリットルの水が得られてもおかしくないはずでした。でも、実際に得られたのはわずか1ミリリットル程度。水ができるとその分、湿度は下がるのでさらに水が出にくくなるとか、日が昇り始めて、また水蒸気に戻ったとか、いろいろ要因はありそうです。外側に水がつくときには、放熱しますから、袋の中の温度が下がりにくくなったことも考えられそうです(水から水蒸気になるときには熱を加えますが、逆の反応である、水蒸気から水に戻るときには熱が出てきます)。

でも、この大実験ではたとえ湿度100%だったとしても、得られる水はせいぜいコップ一杯程度にすぎません。ここまでは計算から求められるのですが、実験レンジャーは苦労してたくさんの袋に空気を詰める作業を通して、「空気に含まれる水の少なさを体感した」と語っています。やはり、やってみて初めて得られるものはあるのですね!

(日本科学未来館・詫摩雅子)