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Discover science column

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今回の実験は「降りると進む満員列車」

今回のテーマは、「作用・反作用」。何かに力を加えて働きかけたときに、それと反対方向に同じ大きさの力が働くことです。こちらが押したら押し返される──必ずセットになって表れます。

歩くとき、走るとき、私たちは地面を蹴って後ろに押しています。同じように地面も私たちを押し返します。力の向きは逆になるので、私たちが後ろに蹴れば、地面から前方向に押されます。地面は私たちに比べてはるかに重いので、地面の動きはわかりませんが、台車のように軽くて動きやすいものだと、台車が後ろに動いていきます。これが、番組の冒頭での実験でした。

体重の重い人の方が軽い人よりも、すばやく蹴る方がゆっくり蹴るよりも、より大きな力となります。台車の例ならば、同じ体重の人が同じように蹴るのであれば、軽い台車の方がより速く動きます。列車を使った大実験では最初は1人ずつ駆け下りていましたが、列車が重すぎてあまり進みません。

ならば、2人が一緒に降りた方が、より早く列車は軽くなるはず。しかし実際にやってみたところ、1組目が駆け降りたときの速さは1人ずつ2番目の黒レンジャーが降りたときとほとんど変わらず、期待通りのスピードアップにはならず……。それでも、順番が後のほうの黒レンジャーになるとだんだんと列車が速くなり、遠くまで行くようになりました。

最初の黒レンジャーが駆け降りるときには止まっている列車が動き出すだけの大きな力が必要なので、あまり差が出なかったのかもしれません。また、この実験では、繰り返し実験をするうちに駆け降りるタイミングがうまくなっていったというのも効いていそうです。

動く列車から駆け降りるのはやはり勇気がいるもので、せっかく助走をつけていても、飛び降りる瞬間にスピードダウンしてしまったり、効率よく蹴り出せなかったりしたそうです。回数を重ねるとうまくなっていくのですが、2人組で走るのは1人のときと勝手が違うので、回数をこなした効果があまりないように見えたと、収録に立ち会った実験レンジャーは言っています。一方、7人目以降はずっと一人で駆け降りますから、どんどんうまくなりました。列車が速くなる後ろの方ほど、スポーツ自慢の黒レンジャーが来るような順番にしたというのも影響がありそうです。収録では、回数を重ねれば上手くなるけれど、疲れると速く走れなくなり、最後は体力勝負だったのだとか。

ところで、今回の映像は「作用・反作用」だけでなく、「相対速度」の映像としても面白い作品でした。
映像にも映っていましたが、撮影するカメラの1つは大実験の列車の横のレールを並走しています。飛び降りるために列車の上を助走する黒レンジャーは、画面の上ではほぼ同じ位置に写っていて、列車だけが右方向に進むように見えます。列車の上を走る黒レンジャーはいかにも速く走っているときのように身体が前に傾いていますが、列車から飛び降りて着地したとたんに身体が直立に近くなります。黒レンジャー自身が走るのを止めようとしているせいもありますが、黒レンジャーにして見ると急に自分のスピードが落ちたような、奇妙な感じがしたそうです。逆方向に動く列車の上を走っている状態から、突然、動かない地面に降りたのですから当然と言えば当然ですが、これも、やってみて初めて気がついた体験でした。

(日本科学未来館・詫摩雅子)