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Discover science column

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今回の実験は「針の穴を通るキリン!?」

大科学実験には、これまでもゾウやラクダやアリが登場しましたが、今度はキリン。今も生きている陸上動物のなかで、最も背の高いのがキリンです。実験レンジャーが差し出す葉っぱやリンゴにつられて実験に協力してくれたキリンは、4.9メートルもありました。まわりに建物などのない草原で撮っているので、高さを実感しにくいかもしれませんね。たとえば一般的な歩道橋の高さがだいたいこのくらいです。なんて高い!

用意した箱もキリンに合わせて5メートル。今回は箱の奥の壁にキリンを映しただけですが、あの壁に写真フィルムを貼り付けておけば、写真が撮れるはずです(でも、キリンが動くと、ぶれた写真になります)。普通のカメラにはレンズがついていますが、この箱は小さな穴が空いているだけなので「ピンホールカメラ」といいます。針穴カメラという意味です。

レンズのついたカメラとピンホールカメラでは、何が違うのでしょう?

虫眼鏡で物を観察するときのことを思い出してください。見たい物に虫眼鏡を近づけたり離したりして、くっきりと見える位置を探しませんでしたか。レンズでは、ピントの合う位置が決まっていて、ちょっとでもずれると、とたんにぼやけた像になってしまいます。

でも、キリンの大実験では、だれもピント合わせをしていません。キリンの顔が穴に近づいたときにも耳や角がちゃんと見えましたし、キリンが遠くに歩いて行く姿は小さな像になってちゃんと見えていました。レンズを使った像ではこうはいきません。

ピンホールカメラで奥の壁に像が映る仕組みは、番組でも紹介しているように、小さな穴を通る光だけが箱の中に進める点にあります。光はさまざまな方向から来ますが、穴を通過できる光だけが箱の中に入っていきます。穴を通る前も後も、光の進み方は真っすぐです。これに対し、レンズを通した光は曲がって一点に集まります。レンズを通すときには、見たい物とレンズ、焦点との距離があっていないと、ぼやけて見えてしまうのです。

そのかわり、ピンホールカメラでは穴が大きくなればなるほど、ぼけてしまいます。穴の上の方を通る光と下の方を通る光ができてしまうからです。

この撮影では、キリンの協力を得るのが大変だったそうです。箱を組み立てているときには、興味津々で近づいてきたのに、できあがっていざ撮影となると、ちょうどいい場所になかなか立ってくれません。穴の大きさを交換するのに手間取るなどすると、飽きて離れてしまうし──。でも、「おかげで遠くのキリンは小さく写ることを示せた」と実験レンジャーさん。南アフリカの強い日差しの下での撮影、おつかれさまでした!

(日本科学未来館・詫摩雅子)