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Discover science column

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今回の実験は「熱はどこまで伝わる?」

実験レンジャーたちは、わりと早くに全部の旗が倒れるのはないかと楽観的な気持ちで大実験を始めたそうです。ところが、結果は見ての通り。なかなか倒れない旗にやきもきしながら待ち続けるという、体力的にも気力的にもつらい実験になってしまいました。全部の旗が次々に倒れると思っていたのに、予想外の進展になったから、よけいにつらかったのでしょうね。

実験レンジャーたちが、旗が次々に倒れると考えたのには、もちろん理由があります。その前に長さ2メートルの銅の棒で予備実験をしているのです。直径は2センチと3センチ。太い方が熱は端まで伝わりやすいという結果がでたので、大実験では直径10センチ、長さ20メートルに挑戦しています。

ですが、10センチという太さでどうなるかはやってみないとわかりません。

炉やバーナーで熱せられると、その熱は銅の棒を伝っていきます。同時に、棒の表面からどんどん熱が逃げても行きます。棒の断面を考えてみましょう。熱は、ある断面から接したすぐ隣の断面へと次々と伝わっていきます。このとき、伝わる前の隣の断面はまだ熱くないわけですから、その分、冷めて、伝わる熱は低くなっていきます(ただ、今回の実験では端を熱し続けるので、後から後から熱は伝わってきます)。同時に、断面の周囲にある空気にも伝わっていきます。これが「熱が逃げる」ということです。これも、銅が冷めることを意味します。

銅の棒の断面となる円を、大きい(棒が太い)場合と小さい(細い)場合とで比べてみましょう。熱は、円全体に伝わってきますが、円の外側から冷めていきます。円が大きければ、それだけ中心は熱いままでいられます。これが、直径2センチと3センチで比べると、棒が太くて断面の円が大きくなる方が遠くまで熱を伝えられる理由です。

ですが、直径10センチではどうでしょう。端を熱し続けているので、熱はある断面から隣の断面へと銅の棒を進みますが、太いと温まるのに時間がかかります。同時に、表面はどんどん冷めていきます。時間との勝負です。

あの銅の棒を温めるのにどのくらいの火力が必要か、棒のある断面から別の断面に伝わるのにどのくらいの時間がかかるのか。これは金属の性質としてすでに調べられている数字から計算できます。もし、銅の棒を完全な断熱材で完璧にくるむことができれば、20メートル先までどのくらいで伝わるかも計算で出せるはずです。ですが、今回のように周りが空気などの場合、その計算は非常に複雑になります。空気は風となって動くので、運び去る熱の量を計算するのはやっかいです。だから、「やってみなくちゃ、わからない」のです。

(日本科学未来館・詫摩雅子)