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Discover science column

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今回の実験は「雲をつかむような話」

冬のお天気情報では「空気が乾いています」とよく聞きます。空気には、気体である水蒸気の状態で水が含まれていますが、気温が下がると含められる量が減ります。一方、日本の夏が「蒸し暑い」のは、暑さだけでなく空気にたっぷりと水蒸気が含まれているから。今回の実験テーマである雲の“もと”は、この「空気に含まれる水蒸気」です。

温度が高いほど、空気はたくさんの水分を水蒸気として含むことができます。1立方メートルの空気は摂氏36度では最大で液体の水にすると、コップ1/5ほど(約42グラム)になる水蒸気を含められますが、3度だと最大でもその1/7の約6グラム。温度が下がると気体の水蒸気ではいられなくなり、水の姿になります。水の粒が細かければ、雲や吐く息のモヤモヤに。粒が大きければ雨や窓の結露のような水滴になります。

湿り気たっぷりの空気を冷やすと水の粒が現れる──これが雲の正体です。

今回の実験は、途中で「空気の冷やし方」を変えたそうです。最初は夏に夕立を降らせる入道雲(積乱雲)と同じ原理での冷やし方、つまり圧力と体積、温度との関係から生じる冷やし方を考えていたのだとか。

空気を暖めると、ふくらんで体積が増えます。同じ容器に入れたままならば、ふくらんだ分、圧力が増します。これとは逆に、圧力を下げると空気の温度も下がります。湿り気たっぷりの空気ならば、このときに雲ができるはずです。

当初は、自転車の空気入れで透明な袋に空気を詰めていく計画でした。袋に空気をぎゅう詰めにして圧力を高め、十分な圧力になったら、袋の口を開けます。すると、空気が一気に抜けて圧力が下がり、雲ができるというわけです。

ペットボトルなどでの実験を経て、大実験は10メートル程度の透明な袋を使う計画でしたが、圧力に耐えられる強さが必要となり、これが課題に。素材を相談したメーカーの話では、以前に作った直径3メートルの塩化ビニル製の球では、強度を保つため、重さが100キログラムを超えたとか。

そこで作戦変更。冷たい空気と触れさせることで冷やすようにしました。箱での予備実験は成功しましたが、本番の部屋を使った前日の実験では雲は現れませんでした。当日、予備実験を手がけた実験レンジャーが成功のコツを思い出します。「冷たい空気も湿らせた方がうまく行く」。急きょ、下の部屋も加湿。仕切りを外してから雲が現れるまでは、どきどきの時間でした。雲が現れたときには、思わず「やったね!」と目を見合わせたそうです。

空気の流れを受けて、繊細な模様を描いた雲。美しかったですね!

(日本科学未来館・詫摩雅子)