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Discover science column

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今回の実験は「すべて当たるはず?」

的(まと)に狙いを定めてボールを発射しても、なかなか当たりません。ボールは的に向かって飛んでいくと同時に落ちてもいくので、的の下にずれてしまうのです。発射と同時に的も落ちていくようにすれば、的とボールの落ちていくスピードは一緒ですから、当たるようになります。

番組中の教室での実験では、見事に全部、当たっていました。ですが、大実験では外れるボールも多かったですね。これはなぜだかわかりますか? 人が発射しているのでタイミングがずれてしまうからでしょうか。それも大きいとは思いますが、ここに大実験ならでは“面白さ”があります。

中学校で習うはずですが、物が落ちる速度は重さに関係なく一定です。ただし、現実の世界では必ずしもこれは当てはまりません。小さくても重い物はまっすぐ落ちていきますが、空気でパンパンになった風船はふわふわとしながらゆっくり落ちていきます。これは空気の抵抗によるものです。

物理の試験などでは「空気抵抗や摩擦は無視してもよい」などと書いてあることも多いのですが、現実の世界ではちゃんと空気抵抗などが働いています。教室での実験でもよく見ると、ボールは必ずしも線で示した位置には当たっていません。ボールが落ちるスピードと的の落ちるスピードがほんの少し違うのでしょう。実験そのものを大きくすればするほど、こうしたズレ(誤差といいます)も大きくなります。

「大科学実験」ではこれまで60近い実験を取り上げてきましたが、物理の実験が多いことにお気づきでしょうか? スケールを大きくすると誤差も大きくなるので、理屈の通りには行かなくなることが多いのです。「やってみなくちゃわからない」の楽しさ(大変さ?)が一番わかりやすいのが物理実験です。

今回の実験では、もう一つ、実際にやってみて気がついたことがあるそうです。それは発射台の筒の長さ。ボールを飛ばすときには、最初にちょっと左右にずれたりするとそのズレは飛んでいくうちにどんどん大きくなって、的から外れてしまいます。筒の効果は劇的で、予備実験では長さを変えるとすぐにわかるくらい的中率が変わったのだそうです。ただし、長すぎると、中でボールが回転するなどして発射の遅れにつながり、やはり精度が落ちたそうです。大実験では50cmにしていますが、試しているうちにこの長さがちょうどよいとわかったからなのだとか。まさに「やってみなくちゃわからない」ですね。

(日本科学未来館・詫摩雅子)