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Discover science column

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今回の実験は「水の大回転」

水の入ったコップが20段も重なったタワーを回転させる大実験、迫力がありますね。実験レンジャーたちは、タワーが倒れないかハラハラしながら見ていたでしょうから、スリルを感じていたことでしょう

今回の実験では、水面に注目してください。冒頭で実験レンジャーが水の入ったバケツを持っています。バケツを傾けても、水面は水平のままです。そのため、傾けたバケツの縁が、水面よりも低くなれば、水はこぼれていきます。

当たり前ですよね。でも、本当にいつも水面は水平になるのでしょうか。

次は、回転させているときのバケツやコップの傾きと水面に注目して下さい。回転すると、コップもコップの底も傾きます。このときの水面は? 水面はコップの縁や底面と平行になるように、つまりコップと一緒に傾いています。水平になっていません。

さあ、次はタワーになったコップの水面をよく見てください。下の方のピンクの水面はコップと一緒になって傾いていますが、上の方の水色の水面は、必ずしもコップの底と平行になっていません。バネばかりではかってみると、水を押しつけている力(=バネを伸ばしている力)は下の方では強く、上の方では弱くなっています。

タワーをさらに高くすると、ついには上の方で、バランスを崩したコップが落ちてしまいました。

高いところでは、なぜ水を押しつける力が弱いのでしょう。これは、回転の速さによります。下の方は大きな円を描いています。一方、上の方が描く円はもっと小さくなります。一周するのにかかる時間は同じですから、大きい円となる下の方が、速いスピードで動いていることになります。

水を押しつける力は、スピードが速いほど強く働きます。この力は、車や電車に乗っていて、急カーブを曲がるときに体験できます。スピードを保ったままカーブを曲がろうとすると、外に投げ出される方向に身体が傾きます。あれがコップの水に働く力です。同じカーブでも、ゆっくり曲がるときは身体に働く力は弱くなります。コップのタワーでも、上の方はこれと同じ原理でかかる力が弱くなっているのです。

今回の実験は、回転の速度やコップの重さ、重量などから、力の大きさを計算で求めることができます。けれども、動き始めの衝撃や重なったコップの摩擦力など、計算が難しいものもあります。10段くらいでタワーが崩れるだろうという予想もあったようですが、撮影前に完成した装置で試してみたら、10段ではびくともせず、「倒れそうで、倒れない」とはならなかったそうです。なので、本番の撮影では、20段のタワーを載せられるように組み換えたのだとか。

やはり、やってみなくちゃわからないですね!

(日本科学未来館・詫摩雅子)

(追記)

この原稿を書き上げた後で、ベテラン実験レンジャーからメールをもらいました。バケツを回転させる実験を行った際、よく見ると、水面は平面ではなく、中央が少し凹んだ球面のようになっている、というのです。

バケツの水にかかる力は、どこも一緒ではありません。回しているときに上になる方と中央、下になる方では、それぞれ少しずつ違います。この実験では、バケツのサイズに比べて回す半径が小さいので、バケツの場所ごとによる力の違いが、よく見ればわかる程度の差になったようです。

科学の基本は、ありのままの姿をただ観察することです。バケツの底と水面は平行になるという思い込みがあるうちは、球面になっていることに気がつかなかったでしょう。
さすがは、ベテラン実験レジャー! 脱帽です。