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Discover science column

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今回の実験は「進め!ポンポン船」

音を立てながら進むおもちゃのポンポン船。かわいいですね。

原理を簡単に説明しましょう。ポンポン船のエンジンはいたってシンプル。ろうそくで温めるボイラーの部分と管だけ。ボイラーの蓋はポンポンと音が立つように薄い金属板になっています。
動かす時には、管から中に水をいっぱいに入れて、ろうそくで温めます。すると、ボイラーの中の水が沸騰して水蒸気になります。100℃で液体の水が水蒸気になると体積は約1600倍も増えますから、金属板を押し上げ音を立てます。同時に水蒸気はボイラーから管へと進んでいきます。
このとき、管の水は追い出されて勢い良く外へ出て行きます。これがポンポン船の推進力になります。

一方、管は水の中にあるので、管の中は周りの水で冷やされ、水蒸気は液体の水に戻ります。すると今度は体積が急に減ります。ボイラーの蓋が今度はへこんで、また音を立てます。同時に体積が減った分だけ、水が逆流して管の中に入って来ます。

管の中に入ってきた水はボイラーから出てくる水蒸気に押しもどされ、管の中を水が上がったり下がったりとピストン運動を繰り返します。

番組中の丸底フラスコを使った実験をよく見てみましょう。2本のガラス管の水は、一緒に動いているのに気がつきましたか? お気づきの人もいると思いますが、この実験は管が2本ある必要はありません。管が1本でもピストン運動は起きます。

1本を太くすれば、細い2本と同じ量の水が出るようにはできます。でも、このエンジンは水槽や池の水で管の中を冷やしてもらう必要があります。これを考えると、太い管にするよりも細い管の本数を増やした方がよいのです。大実験で一斗缶に2本の管をつけたのは、このほかに「おもちゃのポンポン船の形を踏まえるため」というのもありました。

船を進めるのであれば、エンジンの並びは横一列にするよりも、船から逆V字型にする方が水の抵抗は少なくなります。しかし、それほどスピードが出ないはずなので、水の抵抗はそれほど問題にはならず、わかりやすさを考えて、一斗缶エンジン13台でも横一列に並べることにしたそうです。迫力がありましたよね。

今回の実験では、フラスコなどを使って何回も予備実験をしています。うまい具合に船を進める条件を探るのが難しかったそうです。たとえば、管の本数を4本にしたり、管の出口の位置を変えてみたり。水中での出口の位置が深いほど、管内の水の上下も大きいけれど動きはゆっくりになったそうです。また、4本のうち、1本をガラス管からアルミ管に変えただけで、どの管も水の上下が大きくなったのだとか。ガラス管とアルミ管では熱の伝わりやすさが違うので、管の中が冷めやすいアルミ管の方が効率は良いようです。
ボイラー部分が小さいと火力の調節が難しいことも予備実験からわかったことの1つ。おもちゃのポンポン船は、「ろうそくの置き方、配管の仕方、ボイラーのつくり、ボイラーの保温カバーなど、微妙な工夫がいくつも施してあることに驚いた」とはベテラン実験レンジャーの弁です。最初はシンプルなエンジンだと思っていましたが、実はさまざまな工夫がこめられていたようです。

(日本科学未来館・詫摩雅子)