前のページへ戻る

Discover science column

この回を見る

今回の実験は「色が変わる炎」

今2014年のノーベル物理学賞は、青色発光ダイオードの開発により日本の3人の研究者が受賞しました。ノーベル化学賞の研究は、特殊な蛍光顕微鏡。どちらも「光」がかかわっています。発光ダイオードの光と蛍光顕微鏡がとらえている光、そして今回の「大科学実験」のテーマである「炎色反応」の光は、もとの原理は同じです。

ちょっと難しいのですが、炎色反応の原理を説明しましょう。炎色反応では、金属の原子が燃焼による熱エネルギーを受け取って、いつもよりもエネルギーが高い状態になります。これを「励起(れいき)」といいます。具体的には、電子がいつもの軌道からちょっと外れて、外側の軌道を回り始めます。この状態は不安定なので、電子はすぐにもとの場所に戻りますが、このとき、光が放出されます。エネルギーの高いところから、いつもの低い場所に戻ったときの差の分のエネルギーが光になるわけです。光が何色(どの長さの波長)になるかは、原子ごとに決まっています。

励起のためのエネルギーが光となって出てくるわけですから、炎色反応は熱エネルギーを光に変えたと考えることができます。ノーベル物理学賞のテーマになった発光ダイオードも、ノーベル化学賞の蛍光顕微鏡に使う蛍光色素も、励起させて光を出させています。発光ダイオードは電気エネルギーを光に、蛍光物質は紫外線を含んだ光のエネルギーを別の光に変換させています。

大科学実験の話に戻りましょう。

今回の大科学実験チームの最初の悩みは、「どうやって大規模にするか」でした。京都の大文字焼きを緑色にしようなどという冗談のような話も最初は出ていたそうですが、炎を緑にしようすると銅を使うことになります。たくさんの銅を山にまくわけにはもちろんいきません。炎を使うのですから、安全面も重要になります。大規模にするのは限界があるので、むしろ、美しさの方に力点を置いたそうです。

もう1つの悩みは、大実験を「やってみてわかること」をどうするか。普通の実験室で行う予備実験と比べて、全体の作業時間は長くなるので、メタノールの量はどのくらいが適切かなどの計算は必要になります。けれども、1つ1つの皿の中で起きていることは、予備実験と大きく変わるわけではありません。

そこで、温度が低いと炎に色がつかないことを見せることにしたそうです。前半で書いたように、炎色反応が起きるには、熱エネルギーが必要です。耐熱皿が水につかった状態では、十分に高い温度にならず、励起しないのです。皿をボールに入れて、水のせいで温度が下がることを防いだ結果、見事、炎に色がつきました。

実際にやってみて悩ましかったのは、むしろ色の見え方。目で見るときれいな3色に見えても、カメラを通すと色が変わってしまうのだとか。この心配は最初からあったので、本番収録の1週間前に確認したそうです。するといつものロケ用カメラでは黄色の炎が赤っぽくなり、ピンクの炎とあまり区別できなかったそうです。スマートフォンのカメラの方が、まだ肉眼で見た色に近かったのだとか。結局、光を識別する方式が異なる複数のカメラをテストして、肉眼に最も近い色で映るカメラを使ったそうです。

美しい炎の色をテレビで楽しめるのには、こんな苦労もあったのですね。

(日本科学未来館・詫摩雅子)