「おもしろいこと」だけを書く 『辺境メシ』作家・高野秀行①

ざっくり言うと
2019/02/15 すっぴん! 「すっぴん!インタビュー」ノンフィクション作家 高野秀行さん
コミュニケーションの基本は、「できる」、「○○したい」、「○○がほしい」、「○○してください」
何もわからずにいろいろな所へ突っ込んでいくから何度も死にそうになる

文学

2019/02/15

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【出演者】
源一郎さん:高橋源一郎さん(金曜パーソナリティ)
藤井アナ:藤井彩子アナウンサー(アンカー)
高野さん:高野秀行さん(ノンフィクション作家)


2月15日放送の「すっぴんインタビュー」のゲストは、ノンフィクション作家の高野秀行さん。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』をきっかけに文筆活動をスタート。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろおかしく書く」をモットーとし、アジアやアフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクション作品を多数発表しています。
インタビュー冒頭では、現地の人を円滑に取材する際に心がけていることなどを伺いました。あまりにもおもしろすぎる高野さんのエピソードの数々に「盛っている」疑惑がかけられていますが、その真相は?


現地の言葉を覚えれば喜んでもらえる

藤井アナ: 最近行かれたというブルキナファソでは、何をなさっていたんですか?
高野さん: 納豆を探してました。
源一郎さん: 納豆は納豆本がありますし、僕も知らなかったですけど、納豆は日本特産物でも何でもなかったんですね。
藤井アナ: どんな発見が今回はあったんですか?
高野さん: 今までアジア大陸の各地に納豆を食べてる民族があるっていうのは確認したんですけども、アフリカにもあるらしいというので、実際どんなものなのか、本当にあるのか、どうやって食べてるのかを探しに行ったわけです。
源一郎さん: ぶっちゃけ、納豆見つかりました?
高野さん: ありましたね。
藤井アナ: 多分、詳しくはご本にお書きになると思うのですが。
高野さん: いやぁ、想像を絶しましたね。
藤井アナ: え~、ちょっと知りたい。
高野さん: 日本と似てますよ。
藤井アナ: ごはんにかけたりする、みたいな。
高野さん: そういう食べ方もありますよね。
源一郎さん: 激マズの納豆とかの話をされてるんですけど、ブルキナファソの納豆はどうでした?
高野さん: いや、うまかったですね。納豆炊き込みごはんとかありますよ。
藤井アナ: おいしそうですね。
「誰も行かない所に行って、誰もやらないことをやる。それをおもしろおかしく書く」のがモットーですが、過去の記録を振り返ってもいろんな所に行ってらっしゃいます。
21歳の時にはコンゴ共和国に行かれて、ジャングルに40日間滞在。25歳の時にはアマゾンの源流6770キロメートルを船で乗り継いでさかのぼる。4か月かかって行かれたそうです。
「どれが一番印象に残っていますか?」と聞かれたら、何てお答えになっていますか?
高野さん: たくさんありすぎて、よくわからないんですけど。
30歳の時に行った、ミャンマー北部。村に7か月間住んでたんですけど。そこで取材したのは印象的ですよね。
その後、37歳ぐらいの時に、「西南シルクロード」というものがあると聞いて、ミャンマーのゲリラ地帯のジャングルを歩いたのもすごく印象的ですね。
源一郎さん: ミャンマーについては、例のアヘンを作る場所も含めて取材されて。高野さんは「善悪でものを見ない」と書かれてますけど、あれはもう善悪の向こう側にあるような。「そこにいる人たちがこうやって暮らしているんだ」っていう…あれは感動しましたね。
高野さん: ありがとうございます。
藤井アナ: 『アヘン王国潜入記』についてこんなメッセージもいただいています。50代の女性の方です。
「一番印象深かった本が『アヘン王国潜入記』です。うまく言えませんが、何年も前に読んだのに、静かに亡くなっていった村の人のことを唐突に思い出すことがあったりするほどです。本当にすごいルポルタージュです。また、今、腰痛はいかがでしょうか?」
高野さん: (笑)。腰痛は今のところ水泳をやってるおかげで、割と順調です。
藤井アナ: この方は「言葉の習得は天才のようで尊敬します」ともおっしゃっています。何か国語マスターしていらっしゃるんですか?
源一郎さん: 本を読むのと日常会話ができるのは、6か国語?
高野さん: まあ、何とかかんとかですよ。
源一郎さん: まず言葉を覚えるんですよね? 調べるとかじゃなくて、まずその言葉を使う人の所へ行って、覚えて。これは最初から?
高野さん: 最初にコンゴへ行った時から、現地の人とどうにかして仲良くなろうと思って、そのためには言葉をしゃべるのがいいんじゃないかと思ったら、思った以上の効果があったんで。楽しくなったわけですね。
源一郎さん: 言葉を覚えるのが得意なんですね。
高野さん: 得意ではなかったんですけれども、ウケるわけですよね。特にマイナーな言語になると。その時の感動が忘れられずに、何回もやってしまうという感じです。
藤井アナ: 覚える時は本ではなくて、まず会話から入るんですか?
高野さん: 本がある場合もありますけども。
藤井アナ: ないものはしゃべるしかない。へえ。
源一郎さん: というか、文字がないやつとかありますからね。
藤井アナ: どうやったら習得できるんですか? 学び方っていうのはコツがあるのかなって気になるんですが。
高野さん: どんなことだって最初は…例えば、ごはんを食べて、「おいしい」とか言いたいですよね。それを聞いて、繰り返す。
藤井アナ: 単純ですね。
高野さん: 単純です。そうすると向こうが喜んでくれる。それはコミュニケーションじゃないですか。それが、語彙が少しずつ増えていくということだと思います。
源一郎さん: 「特にこういう言葉を中心に」って書かれてたのがありますよね? どの国の言葉でも、「これを中心に覚えておけば何とかなる」っていうの。
高野さん: そうですね、いろいろあるんですけれども。
僕が基本に思ってるのは、「できる」っていう言葉。それから「○○したい」あるいは「ほしい」っていうこと。あと「○○してください」っていうお願いですよね。自分の意思を伝えるっていう意味では、それが中心じゃないですかね。
源一郎さん: そうか。「したい」「できる」とか「してほしい」とか言えれば、人とのコミュニケーションはできる。抽象的なことを覚えてもしょうがないですもんね。それならできそうね。
藤井アナ: あと、喜んでもらえるのがある意味、ご褒美になるわけですね。「しゃべってくれてうれしい」みたいな表情を見たりとか、伝わった喜びみたいなことがあれば、励みになってできるのかもしれないなと思いました。

脚色ナシ! おもしろい話だけを書いているからおもしろい

藤井アナ: 海外旅行に行く若者も少なくなっていると言われる中で、「どんどん出ていってどんどん体験する」のが高野さんスタイルだと思います。行くか行かないか、やるかやらないか、その判断基準は何ですか?
高野さん: 「おもしろそうだから」っていうところですね。
源一郎さん: 「今度行こうと思ってるおもしろそうな所をいつもキープしてる」って書いてあったと思うんですけど。そのキープするためにも、ある程度情報は必要ですよね。その「おもしろそうだ」って感じるアンテナ…?
高野さん: そうですね、アンテナを張ってますよね。
源一郎さん: いつも?
高野さん: いつも。別に意識して張ってるんじゃなくて、長年やってるんで自然と引っ掛かってくる。
源一郎さん: 行ったら実はつまらなかったってことも?
高野さん: ありますよ。
源一郎さん: 読んでると、あんまりそういうことはなさそうなんですよ。
高野さん: よく、僕が話を「盛ってる」んじゃないか、みたいな。
藤井アナ: そういう質問来てましたよ。和歌山県の30代女性からです。
「ご助言いただきたくメールしました。先日、適当に育ててきた長女が11歳になり、かなり知恵がついてきて、母の学生時代の死にかけた武勇伝を澄んだ瞳で聞いてくれなくなりました。若干脚色したり話を大きくしたりすると、すぐに『前に聞いた話と違う』と突っ込まれます。むちゃした話も、前は純粋におもしろがってくれたのに、今は冷静に『お母さん、バカやな』と言われます。ちょっと悲しくなります。高野さんはたくさんの著書の中で、たくさん死にかけたりむちゃされたりしていますが、それらの脚色度合いは、ぶっちゃけどの程度なのでしょうか。また10代の若者にバカにされないバカ話というのはどんなものなのでしょうか」という質問です。
高野さん: いや、ぶっちゃけ、脚色はしてません。「どのくらい盛ってるんですか」とよく聞かれるんですけども、盛ってないし、脚色もしてないですよ。
源一郎さん: 結構死にそうな目にも遭ってますよね。
高野さん: そうですかね?
藤井アナ: とにかくお腹はこわしそうだと思います。
高野さん: そんなの、大した話じゃない。
藤井アナ: でも、お腹こわして本当に深刻な状況になったら「死んでしまうかもしれない」って思いますよね?
高野さん: そんなに簡単には死なないですよ。
どうして「盛ってる」って思われるのかっていうと、どうも僕が書くものはあまりにもおもしろいエピソードが多すぎる。「そういうものばっかりだ」と言うんですけど、それは当然で、僕はそういうものしか書かないからなんですよ。
いろんな所行くじゃないですか。行って、長く滞在したり旅行したり取材したりして、「おもしろくない」とか「いまひとつ書いても伝わらないだろう」っていうものもあるんですよね。そういう時は、単純に書かないんですよ。「これは絶対おもしろいだろう」って思うものだけ書いてるからおもしろいに決まってる。それだけの話です。

友達に話すような語り口は、ノンフィクションでは「異端」?

源一郎さん: さっき「高野節」というようなことをおっしゃってますけど、特徴が楽しいですよね。他のドキュメンタリーとかノンフィクション書かれる方はどちらかというと生真面目な感じなんですけど。
唯一似てるとしたら椎名誠さん。年齢的にも先輩ですけども、いろいろかぶるところがあって。いろいろ書かれる、いろんな所行く、常に上機嫌。それは書く時に、そういう書き方をしようと最初のころから決めてたんですか?
高野さん: 決めてたっていうことはなくて。僕が物書きになったきっかけは、全く自分ではそういうつもりがなくて、単純に大学の探検部時代にコンゴに行った時に、「体験記を書かないか」と出版社の人に言われて、書いてみた。それだけなんですよね。
源一郎さん: でも最初から楽しそうですよね。
高野さん: どうやって書いていいかわかんなかったもんですから、「友達に話すように書いてみたらどうか」と。
藤井アナ: ご自分の性格的なものとか、語り口がそのまま文体に反映されているのですか?
高野さん: そうですね。友達に話す時に、深刻な顔して話す人はいないじゃないですか。おもしろく楽しそうに話しますよね。それがずっと続いてる。
源一郎さん: いわゆるノンフィクションとしては、異例というか、異端ですよね。ノンフィクションの世界の中ではどうなんですか?
高野さん: いや、異端だと思いますね。
源一郎さん: けむったい感じで見られてる? 「あいつ変わりもんだから、いいか」みたいな。
高野さん: いや、「あいつはおかしいから、違うんじゃないか」っていう。
源一郎さん: 高野さん自身が幻獣みたいなもんだっていう。
高野さん: そうかもしれないですね。
藤井アナ: でもまったく盛ってないってことは、それだけ多くの経験をされているということですよ。だって、普通の人だったら多分一生に1回あるかないかというような出来事が、これだけの著作の中にちりばめられているってことは、行動したからこそ得られたものだってことですよね。
高野さん: よく言えばそうですね。
藤井アナ: 悪く言うと?
高野さん: 悪く言えば、全く間違ってることがたくさんあるので。「そんなこと、最初からわかってるだろう」ってよく周りには言われるんですけど、僕はわかってないんですよね。わかんないでそういう所に突っ込んでいくんで、いろんなえらい目に遭ってしまう。
源一郎さん: メリハリがきいてて、こうやってすごいいろんな所に出て行くから、ものすごい行動的かと思うと、アパートのことを書かれたものがあるんです。11年間3畳間、最後4畳半になるんですけど、異常なほど全然動かないですよね。
全く部屋に閉じこもって「出るのもめんどくさい」っていう人が出ちゃうと、風来坊みたいに戻ってこないっていうのは、スイッチ切り替わっちゃうんですか?
高野さん: そうですね。「出るか出ないか」みたいな感じですね。

「すっぴんインタビュー」ノンフィクション作家 高野秀行さん②につづく

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