日本語はどんな言葉?

ざっくり言うと
2018/11/09 すっぴん! 源ちゃんのゲンダイ国語「日本語はどんな言葉?」
稲垣美晴著『フィンランド語は猫の言葉』
杉田玄白著『蘭学事始』になぞらえて、フィンランド語の勉強の難しさを表現

文学

2018/11/09

8時台の放送を聴く
2018年11月9日(金)放送より

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【出演者】
高橋さん:高橋源一郎さん(金曜日パーソナリティー)
藤井アナ:藤井彩子アナウンサー(アンカー)


作家の高橋源一郎さんが、1冊の本から心に留まった言葉や文章を紹介する「源ちゃんのゲンダイ国語」。
11月9日は「日本語はどんな言葉?」というテーマで、翻訳家・エッセイストの稲垣美晴さんによる『フィンランド語は猫の言葉』を取り上げました。大学生時代にフィンランドの芸術に魅せられた稲垣さんが、フィンランドへ留学したときのエピソードをまとめたエッセイです。
今でこそ、フィンランドといえば、「北欧の森と湖の国」といったイメージが思い浮かぶかもしれません。しかし、稲垣さんの留学当時、日本にとってフィンランドはまったく未知の国でした。そのことを、稲垣さんは「ことフィンランドにかけては、情報量はまだまだ江戸時代並みなのだ」と表現し、フィンランド語の勉強の難しさを杉田玄白の『蘭学事始』(らんがくことはじめ)になぞらえています。

高橋さん: 冒頭に、こんなふうに書かれています。杉田玄白の『蘭学事始』をもじって、「芬学事始」(ふんがくことはじめ)。知らなかったんですけど、この「芬」っていう字がフィンランドのことを表すんですね。
藤井アナ: 例えば、アメリカが「米」、イギリスが「英」であるように、フィンランドは「芬」。
高橋さん: <杉田玄白の気持がよくわかる。『蘭学事始』の中で、
かの辞(ことば)を習ひて理解するといふは至つて難きことなり
(外国の言葉を学んで理解するのは、とても難しいことだ)
と言っているが、今から200年も前に外国語を勉強しようというだから、それはそれは大変なことだったのだろう>。

そして、杉田玄白はこう書いております。

先づ、かのターヘル・アナトミアの書にうち向ひしに、誠に艪舵(ろかじ)なき船の大海に乗り出だせしが如く、茫洋として寄るべきかたなく、ただあきれにあきれて居たるまでなり
(あの『解体新書』に立ち向かったときは、エンジンも舵もない船で大きな海に乗り出したように、手探りでおぼつかない状態で、放心状態になっていただけだった)。

英語やフランス語とかだと、習う人もたくさんいるし、その国のこともわかっているし、辞書も参考書もたくさんあるけど、フィンランド語となると、特に当時、40年ほど前だと、何も情報もない。
という中で、稲垣さんは、フィンランド美術を卒論にしようということで留学されたんですけど、外国行くってこと自体が、何もないところに飛び込むようなもんです。しかも、後でフィンランド語を学ぶ苦労が書いてあるんですが、フィンランド語ってめっちゃ難しい。英語とかそういう言葉とまったく違って、文法体系も発音もまるで違うんです。英語ができてもほとんど何の役に立たないっていう、大変な世界に入るんですね。

稲垣さんはとても苦労しつつ、留学先の大学でフィンランド語を覚えていきます。そして、だんだんフィンランドの世界に惹(ひ)かれていきます。
1年の留学期間が終わるころ、稲垣さんは語学を中途半端な箇所でやめず、もっとフィンランド語を勉強しようと決意。留学延長を家族に納得させるために、先生の書いた推薦状を日本へ送ろうと計画します。家族が納得できる文章の見本として、稲垣さん本人がフィンランド語で「推薦状」を書いたのです! その日本語訳を朗読した高橋さんは、その「推薦状」の巧みさに舌を巻きました。

高橋さん: これ、うまい推薦状だよね。
藤井アナ: 推薦状を書いてもらうために、フィンランド語でまず自分でお手本を書いて、それをご自身で日本語に訳したものが、これなんですね。フィンランド語で書いたから、こんな感じの文章になったんですか。
高橋さん: いや、この人本来の感受性がものすごく豊かで日本語がすばらしいんですよ。この本を読んで思ったのが、どんな語学でも習うためには、まず母語、日本語ができなきゃだめっていうことが大切だなって思いました。
僕が一番感動したのは…フィンランドって北国なので、本当に寒いんです。氷点下30度になる。そういう世界で、春になって夏になっていくことが、どんなに感動的か、っていう話を読んで、すごいなと思うんですよ。僕らには想像ができないフィンランドの季節の訪れ。日本は四季が豊かで自然が豊かだ、って僕らは言ってますが、フィンランドの人たちのほうが…何ていうんでしょうかね、日が少ないので、自然が豊かになっていくことに対する感受性は、日本人よりももっと豊かになっているかもしれませんね。
稲垣さんは、フィンランドというまったく正反対の国へ行って、初めて日本や東京はどんなところか気がついた。逆に言うと、フィンランド人は東京に来ると、フィンランドがわかるかもしれない。だから、僕たちが自分を知るためには、自分と全く知らない世界、言葉も違う世界に行ってみる必要があるのかな、っていうことを思いました。

この他にも、本書にはフィンランド語の単語が日本語に聞こえる「外国語あるある」や、ポーランドから来た同級生の名前が日本人には難しすぎて覚えられない、といったエピソードも盛りだくさん。ちなみに本書のタイトル『フィンランド語は猫の言葉』は、フィンランド人が会話で相づちを打つときに使う言葉、「ニーンniin」が猫の言葉に聞こえたからだそうです。電話に出るときも「ニーン」!
じゃあ、日本語は何の言葉?

8時台の放送を聴く
2018年11月9日(金)放送より

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