落語を完璧に覚えたつもりでも、突然忘れてしまうのはなぜ? また、鳥などの他の生き物も人間と同じようなことがあるの?

質問者ちひろくん

放送日2018年12月26日(水)

ざっくり言うと
まきのちひろくん(小学校5年生・愛知県)からの質問
心と体の篠原菊紀先生が回答
動作も一緒に付けて覚えると忘れにくくなります

テーマ

心と体 篠原菊紀先生

放送を聴く
2018年12月26日(水)放送より

記事を読む

放送日時:2018年12月26日(水)午前10時42分ごろ~午前10時54分ごろ

石山キャスター:石山智恵キャスター
篠原先生:篠原菊紀先生 (公立諏訪東京理科大学 情報応用工学科 教授 / 地域連携研究開発機構 医療介護健康工学部門長)
川上先生:川上和人先生 (森林総合研究所 主任研究員)
ちひろくん:質問者


石山キャスター: では次のお友達です。愛知県のお友達と電話がつながっています。おはようございます。
ちひろくん: おはようございます。
石山キャスター: お名前と学年を教えてください。
ちひろくん: 名前はちひろで、学年は5年生です。
石山キャスター: はい、小学5年生のちひろさんです。どんな質問ですか?
ちひろくん: 僕は落語やっていて、完璧に覚えても頭が真っ白になって忘れてしまうことがあるので。
石山キャスター: はい。
ちひろくん: どうして人は完璧に覚えたつもりでもいきなり忘れてしまうんですか?
石山キャスター: うん。
ちひろくん: っていうのと。
石山キャスター: はい。
ちひろくん: うちで、鳥を飼ってるんですけど。
石山キャスター: はい。
ちひろくん: そういう生き物も突然何かを忘れてしまうことがあるんですか?
石山キャスター: あ、ほかのね、鳥などの生き物も、ものを忘れたりするかどうかってことね、分かりました。まずは、篠原先生に聞いてみましょうか。はい。お願いします。
篠原先生: ちひろくん、こんにちは。
ちひろくん: こんにちは~。
篠原先生: なんかすごい落ち着いた感じだね。
ちひろくん: はい、ありがとうございます。
篠原先生: (笑)。落語の高座とかでも、そんなに上がらないんじゃないの?
ちひろくん: いや、でも、上がると緊張して忘れてしまうが…。
篠原先生: っていうことがある? 結構何度もある?
ちひろくん: 落語をやってそんなに何年も経ってないので。
篠原先生: うん。ふ~ん。
ちひろくん: まあ、1回か2回ぐらいですか。
篠原先生: 逆にちゃんとできる時も結構あるってことだね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: ああなるほど、それは大したもんだ! じゃあさ、話を2つに分けるね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 1つは落語の時のような本番の時に上がらないようにするにはどうしたらいいか、って話がちひろくんには重要なことのような気がするので、その話だけしますね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: で、そのあとで人はどうしてど忘れするのか、とか、他の生き物ではどうなのかって話をするってことでいいですかね?
ちひろくん: はい。
篠原先生: じゃあまず、例えば明日、高座がありますとか、これから高座がありますっていう時にどういうふうにすると失敗が少なくなるか、ど忘れが少なくなるかっていうことについて、研究例があるんで。
ちひろくん: はい。
篠原先生: その結論をお話します。
ちひろくん: はい。
篠原先生: とりあえず高座に上がる前に紙を用意して、不安を書き出すといいらしいです。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 「とちっちゃったらどうしよう」とか「ここで頭が真っ白になったら困る」とかっていう気持ちを書いてしまった方がいいです。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 分かりますか?
ちひろくん: 分かります。
篠原先生: そういうふうに書いてしまうと頭の中で高座とかをやっている時に、もし上がって頭の中の話が全部飛んじゃったらどうしようとかっていうふうに思っていると、それだけ頭の中がそのことでとらわれてしまうんですね。分かる?
ちひろくん: はい。
篠原先生: それは逆に、1回外へ書き出しちゃったり、人に話しちゃったりした方が、脳が、脳のメモが空くって言い方するんだけど、頭が使いやすい状態になりやすいらしいです。
ちひろくん: そうなんですか?
篠原先生: だから、とりあえずそうやって書き出すっていうのは1つの方法だと思います。
ちひろくん: はい。
篠原先生: で、そういう書き出しみたいなやつをもっと前からやっとくっていうのも1つの方法です。例えば、ひと月後に高座があります。1週間後に高座があります。そういう時に不安を書き出しますよね?
ちひろくん: はい。
篠原先生: そしたらその不安に対処すればいいわけです。
ちひろくん: あぁ、はい。
篠原先生: 例えば「ここの部分がちょっと飛びそうで心配」っていったらそこを練習しましょうってことになりますよね。
ちひろくん: あ、はい。
篠原先生: そういうふうにすれば、失敗する率が下がっていくということは起きますね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: で、次にもう1つ。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 落語の高座をやっている時に、練習の仕方ってどういうふうにしている? 空で暗唱するみたいな感じ?
ちひろくん: ええっと、自分で何回も音読して。
篠原先生: うん。
ちひろくん: 特に忘れそうなところは何回も読んだりして覚えている。
篠原先生: ふ~ん、動作は付けている?
ちひろくん: 動作は大体覚えてから…。
篠原先生: 付けるって感じね。
ちひろくん: あ、はい。
篠原先生: 動作付きでやったほうがいいです。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 覚える時も。
ちひろくん: はい。
篠原先生: つまり動作とかジェスチャーすると余計に覚えられるっていう研究もあるんで。
ちひろくん: はい。
篠原先生: そういうふうにするといいと思います。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 特に本番が近くなればなるほど、実際に高座で落語をしている時の自分の肩の動きだとか口の動きだとか扇子とかの使い方とか、そういうことも含めた動作を映像のようにイメージしながらやってる方が忘れにくくなるようです。
ちひろくん: ふ~ん、そうなんですか。
篠原先生: ただ言葉を頭に入れようとすると。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 言葉だけ出てこないってことが起きるんだけど、動作をくっつけると、ちょっと難しい言葉で言うと、脳の中にある感情とかと行動と記憶を結び付ける帯状回(たいじょうかい)って場所があるんだけど。
ちひろくん: ああ、はい。
篠原先生: そこが活動しやすくなるんですよ。
ちひろくん: ふ~ん。
篠原先生: で、度忘れが減るっていう研究もあるんで。
ちひろくん: へー、はい、わかりました。
篠原先生: だから映像的に自分の行動をイメージするってことやるといいと思います。
ちひろくん: はい。
篠原先生: それからもう1つは、高座に上がる時、心臓がドキドキするでしょ? 結構。
ちひろくん: はい、します。
篠原先生: 練習してるときはドキドキしないでしょう。
ちひろくん: あ、はい。
篠原先生: で、本番の時はどうしたってドキドキするんですよ。
ちひろくん: はい。
篠原先生: なので、ドキドキした状態で練習することが必要です。分かる?
ちひろくん: あ、はい。
篠原先生: 簡単なやり方としては、その場足踏みか何かしながら落語やるとか。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 運動負荷みたいなのをかけてあげると心拍(しんぱく)上がるじゃないですか。
ちひろくん: はい。
篠原先生: そういう状況でもちゃんと落語ができるっていうふうにした方がいい。練習できるっていうことと本番でできるってことは違うから。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 本番の状況に近いような体の状態やストレスの状態を作って練習するってことが大事になってくると思います。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 分かりますか?
ちひろくん: 分かりました。
篠原先生: 今、落語の話したけど、実はこの一番最初に紹介したやつは、試験の前に不安を書き出すと成績がよくなるって研究なんですよ。
石山キャスター: へぇ~、そうなんですか。とても役立ちそうですね。
篠原先生: その研究者に言わせれば、大人がプレゼンテーションする時とか、仕事の何かやらなきゃいけない時とかにも、そういうふうにやった方が効率がよくなりますよと。なぜならば脳のメモ帳が入った状態にしやすくなるので、っていうような説明の仕方をしてるんで、多分みんな役に立つと思います。
ちひろくん: はい。
篠原先生: で、今度は人間はどうしてど忘れするのっていうのと他の生き物はど忘れするのかって話をしていきますね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: いいですか? まずど忘れしたかどうかが分かるためには。
ちひろくん: はい。
篠原先生: ちひろくんがさ、落語やっていてど忘れしたっていうふうに思えるためには。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 「落語を知ってるはずだ」っていう、感覚持ってなきゃダメだよね?
ちひろくん: はい。
篠原先生: つまり「それは脳に入ってるはずだ」という感じがある必要があるよね?
ちひろくん: はい。
篠原先生: これをセンス・オブ・ノーイング、知っている感じっていうんだけど。
ちひろくん: はい。
篠原先生: つまり知っている感じを脳みそが持っていて、だけど出てこないからど忘れなのね。
ちひろくん: あ~、なるほど。
篠原先生: 別な言い方をすると、脳の中には記憶エングラムっていうか落語ネットワークが恐らくあるんだよ。ちひろくんの中に。
ちひろくん: はい。
篠原先生: だけどうまく引き出せないという状態なんだよね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: それがど忘れっていう状態なのね。脳の中にはあるんだけど引き出せない、記憶の引き出しが難しくなって何らかの形で出てこないっていうのがど忘れっていう状態ね。そうすると今度は動物とか他の生き物はど忘れがあるのかってこと考えるためには、1つ考えなきゃいけないのは、動物に知ってる感じがあるのかっていう。
ちひろくん: ほう。
篠原先生: 記憶をしているというインデックスというか、「自分の脳の中にはそれが入ってるはずだ」っていうのがあるかどうかってことが重要になるよね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: そうすると、そういう索引みたいなものというか「知ってますよ」っていうリストは、どうも脳の中で言うと前頭前野(ぜんとうぜんや)っていう、おでこのあたりの脳みそね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: そこが発達していないとちょっと難しいだろうというふうに考えられています。で、今日は鳥の先生いるけど、鳥は相当賢いんで、これは恐らくあるだろうというふうには考えられています。なので、川上先生、そうですよね?
川上先生: そうですね、覚えてるはずのことを忘れちゃうっていうのは鳥の中でもありますね。ただ、とても大切なことで、慌てちゃってっていうことになると、慌てる時ってどういうときかっていうと、例えば、襲われるときに慌てちゃって本当の逃げ場所はこっちなのに違う方に逃げちゃった、とかってなるとたぶん食べられちゃって死んじゃうので、そういう性質は…。速やかにいなくなっちゃうんじゃないかなという気もします。
ちひろくん: はい。
篠原先生: 鳥って結構賢くて、食べ物、獲ったものを隠しておくとか。隠すときに同じ仲間が見ているともう1回隠し直しとかやるから、恐らくちゃんと記憶とそのインデックスは持っていると思うんですよ。だけど違う所を探すってこともあるので、おそらくど忘れ的な、だから本人、本人ていうか、本鳥ていうんですかね?
一同: (笑)。
篠原先生: 鳥がそれを自覚しているのっていうのは、ちょっと確かめようのない話なんだけど、現象としてはおそらくあるっていうふうに思います。話を戻すと、人間どうしてど忘れするかっていうと、記憶っていうのがもっともっと「覚える」ということと「記憶を保っていく」ということと「引き出す」っていうことが、実は一体なんだけど、そのうちのどこかだけがうまくいかないってことは結構あるんですよ。
ちひろくん: はい。
篠原先生: ちひろくんの場合だと、落語が入ってるのにそれが出てこないってことが突然起こったりする、ということなんですね、それを防ぐ方法としては、不安を書き出すだとか、事前に準備するだとか、イメージするだとか、あるいは、そのストレスのかかった状態でちゃんとトレーニングするとかってことが有効になってくるだろうという話ですね。
ちひろくん: はい。
篠原先生: よろしいですかね?
ちひろくん: はい、わかりました。
石山キャスター: わかりましたか?
ちひろくん: はい。
石山キャスター: ちひろさんの落語の得意な演目は何ですか。
ちひろくん: え~っと、『初天神』。
石山キャスター: へぇ~。あっ、そうなんだ。ぜひ今先生から聞いたことも試して、今度高座のときにやってみてくださいね。
ちひろくん: は~い、わかりました~。
石山キャスター: はい、今日はどうもありがとう。
ちひろくん: ありがとうございました~。
篠原先生: どうも~。
石山キャスター: はい、さようなら。
ちひろくん: はい、さようなら。
石山キャスター: 小学5年生のちひろさんからの質問でした。これは大人も大いに参考になるお話でした。

放送を聴く
2018年12月26日(水)放送より

関連

新着