熊川哲也 終わらない挑戦

ざっくり言うと
Kバレエカンパニー20周年 オペラの名作『マダム・バタフライ』に挑戦
“悪魔的”な魅力『カルミナ・ブラーナ』のオリジナルバレエ
2019/04/02 NHKジャーナル 特集『終わらない挑戦~Kバレエカンパニー20周年 芸術監督・熊川哲也さんに聞く~』

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2019/04/02

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2019年4月2日(火)放送より

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日本バレエ界の第一人者・熊川哲也さんが自ら立ち上げた<Kバレエカンパニー>は、設立から今年で20年。古典バレエを独自の振付でよみがえらせたり、オペラ作品をバレエ化したりと、オリジナル舞台を生み出してきたKバレエでは、9月からの新シーズンに向けて、新たな舞台の制作に取り組んでいます。
21年目のオリジナルプロダクションとして選んだのが、世界で最も有名な日本人ヒロインと言える『蝶々夫人、マダム・バタフライ』。長崎を舞台に、アメリカ海軍士官ピンカートンへの一途な愛を貫く芸者・蝶々さんの物語。プッチーニの名作オペラをどのようにバレエ化するのか、芸術監督の熊川さんに聞きました。(聞き手:大澤 祐治ディレクター)

【出演者】
熊川さん:熊川哲也さん(Kバレエカンパニー芸術監督)


――20周年、おめでとうございます。Kバレエでの20年というのは、オリジナル作品、世界初演のものをやるんだという点に尽きるのかなと思いますが。

熊川さん: おっしゃる通り、そこはやっぱり一番褒めてもらいたいところですよね。新作を予算をかけてオリジナルを生み出していくっていうのがいかにすごいことかっていうのは、このごろ思っています。たしかに周りってやらないよなーって。やっぱり日本人てね、やっぱ外国から買ってきちゃうよね。
Kバレエは今まで20年の中で、新作という、改訂版・熊川版でもう12、3作品Full Productionあるので、『クレオパトラ』いって『カルメン』いって今度『マダム・バタフライ』やり、すごい金額やっぱり衣装・セットにかかっているわけじゃないですか、一流の世界のオリジナル作っているので。手前味噌になりますけど、すごいスピードで作り上げてきたんだな、財産をとは思いますね。
でも、おもしろいことに『クレオパトラ』って最高傑作だと思っているんですけど、これ外国人のかたが見ても多分喜ぶんだろうなと思って外国人のプロモーター呼んだんですよ。どう?みたいな。おもしろいこと言ってましたよ、「素晴らしい作品だって、ファンタスティック。でもなぜJapaneseがエジプトをやるんだ」。それで話終わっちゃった…。
あーそういう感覚なんだなって。やっぱり日本のバレエ団って、日本という国はまだやっぱり「桜・芸者・スシ・テンプラ」なのかなっていうのはちょっとそこで感じちゃったね。自分の中ではもっともっとそういった壁ってなかったと思ったんだけど。ああそうなのかなあ、でもまあ英国人らしい発言だったけどね、それはね。

――そのイギリスの方から言われたことが、次の『マダム・バタフライ』をつくるきっかけに?

熊川さん: まあ確かにそこはありましたね。やっぱりオリンピックイヤーに向けて、日本のものっていうこともあったけど。
ただねー、バタフライはおもしろくない。これはもう絶対カットしてほしくないんだけど、やっぱりプッチーニの音楽も大していいのないし、でなおかつストーリーがおもしろくないよね、なんらおもしろくもないよ。本当におもしろくない。バタフライとピンカートンの出会いって書かれてないわけ、本当ただ単に坂を上がってきてなんかこう現地妻になっちゃっただけの話だから、出てくる人間も少ないし、暗くておもしろくないよね、音楽も。
だからある程度アディショナル脚本はします。そしてオペラの『マダム・バタフライ』は、ほんのちょっとしか見せない。それでなかったらKバレエにならないし、僕のオリジナリティーがないんで、やっぱりそれは。でもこれはおもしろくなると思いますよ、僕のはね。ピンカートンがいるアメリカ時代からの話にする。日本に来てからの海兵さんじゃなくて、その海兵さんはどういうバックグラウンドで、どういう…だから日米の話だね、これね。1幕はアメリカ、2幕は日本、そしてだからまずどう出会ったのかというのを描きたいね。で、遊郭にしようと思って。おもしろそうでしょ。

――そういう意味で、これは日本人が作るべき作品ですね。

熊川さん: まあそうだね。ただすごく壁は高いですよ。やっぱり日本人が作る日本の脚本で日本の舞台にする、そして日本の所作もしくはメンタリティなどを無視どこまでできるのって話じゃないですか。そこは外人さんだったら許される日本の描きかただけど、日本人が描く日本ていうのはどこまで許されるのかってのは、やっぱりエジプトとか例えばフランスとかのテーマよりはやっぱり確かに高いですよね壁は。
そこに悩みましたけど、で、なおかつやっぱり動きが日本て「陰」じゃないですか、足の歩き方もそう、着物も含めて。で、美しさと言えば謙譲の美徳も含めて、感情を出さない。バレエ真逆なので全部。ほんとそれ全部真逆で、だからそういったレッテルを外した上で作っていかないと無理なんで、今作ってますけど、たぶん、たぶんですよ、これはおもしろくなると思いますね。

――やはりバレエは西洋の芸術であったけれども、Kバレエの目指しているものは、別にあるということですね。

熊川さん: 西洋の芸術ではあるけど、もうボーダレスっていうのかな。まあ真のグローバル化が今、日本にもやって来て、インバウンドもそうだけど、それが初めての真の国際化で、世界に持っていこうとは思っていない。
よく「Kバレエは外国行かないんですか」って言われるけど、外国は外国の自分たちのアイデンティティーをもったカンパニーがいっぱいあるから、わざわざ行って同じような作品をやってもしょうがないわけで。まあ本来だったらもうKバレエ見たいんだったら外国から見に来いってそれで終わりなんだよね。それが本当国際化だと思うんだよ、国の、バレエ団の。だから本当歌舞伎座とか両国とかに行く、浅草に行く外人の方の観光客が、自然と普通にオーチャードホールでバレエ見に行こうなんて言ってくれたら嬉しいですよね。

――また、同時並行で、Kバレエが拠点としているBunkamuraオーチャードホールの30周年記念として、オルフ作曲『カルミナ・ブラーナ』のオリジナルバレエも制作していますよね。

熊川さん: 『カルミナ・ブラーナ』はねー、まあオルフの曲がちょっと悪魔的なすごく要素があり、力強い中に恐怖を与えますよね。だからあれはブラックミサ的な、人をマインドコントロールするようなすごい曲だと思う。詩に関しても俗っぽいことも多いわけで、感性をすごく揺さぶられましたね。
ストーリーラインはもうできちゃったんですけどね。これはもう、やっぱり人間の力が何にも及ばない世界。悪魔の力が強いっていうところになっちゃうよね。で、復活の女神フォルトゥーナという女性が神なんだけど、フォルトゥーナが産んだ子供の話にしようと思って。その子の名前は、悪魔の子アドルフ。まあご連想できると思いますけど、20世紀最大の悪といったと言ったらというところで、これはもう自分でも読めないんだけど、ちょっとやっぱりKバレエの本公演とかの活動ではできない作品、作風になるんだと思ってますね。まあ、乞うご期待としか言えないんですけど(笑)。

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2019年4月2日(火)放送より

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