面倒くさがらずに「施政方針演説」を読んでみよう

ざっくり言うと
“政治の季節”、大越キャスターも国会へ
自戒を込めて「マスコミは変わったものに飛びつきがち。有権者は自らもアプローチを」
2020/01/23 「三宅民夫のマイあさ!」 三宅民夫の真剣勝負! 大越健介の現場主義

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【出演者】
三宅キャスター:三宅民夫キャスター
大越キャスター:大越健介キャスター
小倉キャスター:小倉実華キャスター


三宅キャスター: 大越さん、おはようございます。今週、新しいコロナウイルスによると見られる肺炎のニュースもありますが、1月20日に通常国会が召集されましたね。“政治の季節”ということになりますか。
大越キャスター: まずは安倍総理大臣の施政方針演説が行われて、各党の代表質問が行われています。おっしゃるとおり、まさに政治の季節。私もかつて16年間、報道局政治部に在籍して政治記者をやっていました。年が明けて国会の本格論戦が始まると、取材する側も非常に緊張感を覚えたのをよく記憶しています。
そこで私も久々にその緊張感を味わってみたいということで、1月20日の召集日に久しぶりに国会を訪ねて様子を見てきました。和服姿の議員が非常に多かったですね。「和装議連」という議員連盟がありまして、和服を広めようという活動をしているところなんですけれども、その人たちが和服姿で天皇陛下をお迎えして行う開会式に出席し、それが終わったタイミングだったんです。国会議員の戦闘服というのはスーツですので、開会式は和服で出たけれども、それぞれの議員会館の部屋に帰って、安倍総理大臣の施政方針演説が開かれる本会議場に向かうために、慌ただしくまたスーツに着替えて戻っていく。そんなお正月気分を少し残しながらも緊張感の漂う雰囲気を感じてきました。
三宅キャスター: 安倍総理大臣の施政方針演説、どう聞きましたか。
大越キャスター: ピリピリした緊張感は確かにあるんですけれども、これはやっぱり毎年のことなんですけれども、施政方針演説を最後まで緊張感を持って聞くのはちょっとしんどいです。総理大臣が長時間読み上げる政治演説ですので、よほどユニークなものでもない限りは聞いていて毎回しんどくなります。本会議場でこっくりこっくりと船をこぐ議員の姿があとを絶ちませんけれども、弁護するわけではないですけど気持ちも分からないわけではないんですよね。演説の内容は各省庁の重要政策を網羅した総花的(そうばなてき)な内容になりがちで、これも毎回のこと。今回の40分の演説も、緊張感を持って聞き続けるのはちょっとしんどかったかな、と思います。

そこに加えて、今回は「えっ」と、ちょっと残念な気持ちにもなったんですよね。「あのこと言わないの? それで終わり?」っていうのが、私が抱いた正直な印象です。このところ政治、それも政府自民党を巡る不祥事や事件が相次いでいますよね。それなのに、そこに答える言葉が全くなかった。念のため、首相官邸のホームページで演説の全文をもう1回読み返してみたんですけれども、やはり触れていませんでした。
三宅キャスター: 「政治にしっかりしてほしい」という思いは、国民の間にはありますよね。
大越キャスター: そうですよね。「政治不信」という漠とした言い方をするのはあまり好きではないですし、実際のデータを持ち合わせているわけではないんですけれども、これ、総理大臣官邸とか国会で働いている議員のみなさん、タクシーで永田町から5分ぐらい走らせて、新橋の居酒屋でものぞけばすぐ分かると思います。
サラリーマンの会話を聞けば大体分かる話で、例えば桜を見る会、「何で税金を使って自分の後援会の会員にあんなに大盤振る舞いできるの?」「資料があると言ってみたり、いや、出てきたと言ってみたり、どうなってるの?」と。IR、カジノを含む統合型リゾート事業を巡る汚職事件で自民党の政治家が逮捕されたことには、怒る人はいても褒める人は誰もいないと思いますよね。それから選挙区にメロンを配っていた議員とか、それで大臣を辞めちゃった人もいましたよね。「説明しますと言ったけど、説明してますか?」「その間だって、国会の議員の歳費というのは払われているわけでしょ?」「最近だって取り調べを受けている議員がいますよね?」など、ちまたの会話でいくらでも出てくると私は思うんです。客観的なデータはありませんけれども、そういう世の中の空気というのを安倍総理大臣には敏感に感じてほしかったし、それに対する考え方や信頼回復ということを、少しでも取り上げてほしかったなというふうには正直思いました。
三宅キャスター: 政治への信頼が揺らいでいる中での政府の国会対応とは、どうあるべきでしょうか。
大越キャスター: これを聴いていらっしゃる方の中には、「そもそも施政方針演説は自分がやりたい重要な政策について話す場所であって、自分から政府与党の不祥事を取り上げることはなくて当然なんじゃないの? 国会の質問で聞かれたときに答えればいい問題では?」と感じておられる方は多いと思うんです。確かにそうかもしれないですよね。
そこで、きのうから各党の代表質問が始まっていますので、安倍総理大臣の答弁を見てみたいんですが、一連の事件や不祥事について、立憲民主党の枝野代表は「内閣が3、4回すっ飛んでもおかしくない状況だ」と指摘していて、きのうの代表質問でもこれらの問題を取り上げました。これに対する安倍総理大臣の答弁ですが、まずIRを巡る事件につきまして、「誠に遺憾で、事態を重く受けとめていますが、詳細のコメントは捜査に影響する可能性があるのでさし控えます」というものでした。よくあるタイプですよね。相次いだ大臣の辞任については、「ひとりひとりの政治家がみずから襟を正すべきで、可能なかぎり説明を尽くすものと考えています」と、もはや自分の手は離れたというふうにも聞こえる発言でした。そして、「桜を見る会」の招待者名簿については、「改めて調査を指示することは考えていません」ということで、名簿が行政文書の管理簿に未記載であったことにつきましても、「民主党政権の措置を前例に、漫然と平成25年以降も登録しなかったものだ」というふうに答弁しました。いいかげんだった民主党時代のやり方を踏襲したんだというような、むしろブーメランを返した形で終わりました。
三宅キャスター: 何か議論がかみ合わない感じ?
大越キャスター: そうですね。安倍総理大臣からすると「これは答えようがないでしょ」というものなのかもしれないですよね。このかみ合わない議論を聞いていて、そもそも総理大臣が自分の基本的な考え方を述べる場である施政方針演説の中で、私は、事件の反省などが触れられていなかったということを言いましたけれども、わざわざ演説の中で自分から触れないのはやはり当たり前のことであって、それに対して言及しなかったことを不満に思うのは私の認識が甘かったのかなと。代表質問での答弁を聞いて、そんなふうに思いました。
さらに思ったのは、きのうの代表質問のあと自民党の二階幹事長が、野党側が桜を見る会やIRを巡る汚職事件などを質問したことについて、こんなふうに述べていました。「もうね、桜は散ってしまったんだよ。マスコミが取り上げるからうれしがってやっているんだろうが、この程度だ」というふうに発言していました。私もマスコミの一員でありますので、チコちゃんじゃなく“二階さんに叱られた”と。本当に「あっ、申しわけありませんでした」という感じがいたしました。
三宅キャスター: 強気の発言の背景には何があるんですかね。
大越キャスター: 内閣支持率が根強いというのは、あると思いますよね。NHKが1月に行った世論調査でも、内閣支持率は44%、支持しないという率は38%。いずれもこれは前の月と比べて横ばいで、安定した数字です。いくつかの事件や不祥事があっても、内閣支持率が急落することがありません。実際、これまでの国政選挙を見ても自民党の勝利が続いていますし、安倍総理大臣は異例の長期政権を保っているわけですよね。
長期政権のメリットというのは確かにあると思います。正しい政策を長期にわたって継続しているとすれば、その成果は非常に大きいものがあるでしょうし、外交面でも諸外国には政権がしっかりしているという安心感を与えて、国と国との信頼関係を結ぶことにもつながります。支持率が安定しているのは、そうした継続への努力の評価ということもあるというふうに思います。
三宅キャスター: 事件や不祥事があってもびくともしないだけの信頼がある、ということですか。
大越キャスター: そこは、いろんな捉え方があると思うんですよね。ほぼ確実に言えるのは、「安倍政権の時代ほど、野党が弱かった時代はない」ということですよね。安倍政権の政策面での実績もさることながら、とにかく野党が弱すぎたんだという声は、当の野党議員からも聞こえてきますので、おそらくこれは間違いないと思います。つい先日も、立憲民主党と国民民主党の合流の協議が行われましたけれども、結局実を結ばずに「当面見送り」となりました。野党の弱さに支えられた政権基盤だとすれば、必ずしも盤石とは言えないかもしれないですよね。
先日、ある自民党のベテラン議員がこんなことを言っていました。「自分自身はいつ選挙が行われても選挙区で勝利する自信はあります。ただ、自分のコアな支持者は別として、緩やかに自分を支持してくれていた人たちがだんだん離れていってるなというのを実感している」と。何度も選挙を行ってきた議員の中からそうした声が聞かれるということは、決して自民党の支持が盤石ではないことを示しているのかもしれません。
三宅キャスター: 政権基盤が盤石ではないことを示すデータはあるんですか?
大越キャスター: 内閣支持率の話を先ほどしましたけれども、「支持する理由」を見てみたいと思うんですよね。「政策に期待が持てるから」というのが10%、「支持する政党の内閣だから」が14%、「人柄が信用できるから」が4%、「実行力があるから」が19%。非常に肯定的な評価ですよね。ただ一番多かったのは、「ほかの内閣よりよさそうだから」というのが51%。「“よりマシ論”によってたつ支持」ということは言えると思います。
三宅キャスター: 圧倒的に多いんですねぇ。
大越キャスター: 実はどの内閣で行っても、この数字が一番よく出てくるものではあるんですけれども、「安倍一強」と言われるこの政治情勢の中でも、安倍政権に対する支持の比較的弱い支持の集積、そこがかなりを占めているというのは事実ですよね。ですからその緩やかな支持層の動向によっては、政権基盤が大きく揺らぐ可能性だって否定できないということになりますよね。
三宅キャスター: 政権としては緊張感を持ってことにあたらなければならないということですね。
大越キャスター: そうですね。政権の中枢にいる人にこんなことを言うのは“釈迦に説法”かもしれませんけれども、政権の緩みっていうものに対して、世の中は非常に敏感ですよね。1つ1つの不祥事、こんな事件や不祥事がありましたというのはひょっとしたら忘却されるのかもしれないけれども、いろんなことが積み重ねられていい加減に放置されたまま終わりましたという事実は、有権者の中では消えないと思うんですよね。ですから忘却を待つのではなくて、マイナスのことに対してはむしろ積極的に対応する。それはプラスに転じるかもしれない。そのことをやはり考えていただきたいなというふうに思いますよね。
三宅キャスター: みなさんからたくさんの声が届いています。
小倉キャスター: ご紹介します。
<大越さんのおっしゃるとおりです。オリンピック・パラリンピックも一大イベントですが……>
大越キャスター: 「……」というところが何を指されてるのか、ちょっと私には分からないんですが、安倍総理大臣の施政方針演説はことしのオリンピック・パラリンピックをまんべんなくまぶしてあるというか、冒頭のところでも「本年のオリンピック・パラリンピックもまた、日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする。そして、そこから、国民一丸となって、新しい時代へと、皆さん、共に踏み出していこうではありませんか」と呼びかけています。そのことにもちろん異存はないですよね。
ただ、オリンピック・パラリンピックという一大イベントに国民の結束を呼びかけるのであれば、政治への信頼ということが大前提にあると思いますよね。まとまって世界に誇るイベントを成功させたいというのであれば、足元にある問題にしっかり丁寧に対応していくべきではないかなと思います。それはオリンピック・パラリンピックがある年だからこそなおのこと、やっぱり私たちも、そこはきちんと見ていきたいなっていうふうに思いますよね。
小倉キャスター: 続いてご紹介します。
<「桜を見る会」などどうでもいい。もっと審議するべき大事なことがある。国家予算を使って毎日やることではない。全く税金のむだづかいだ、という意見もたくさんあります>
三宅キャスター: 政策論議をやってほしいということですね。
大越キャスター: やっていると思います。私たちマスコミはどうしても、新しいもの、変わったものに飛びつくので、これはマスコミ批判でもあると思うんですよね。なので、私もあえて先ほども申し上げたんですけれども、多少眠くなるけれども、ちゃんと聞いてみようと。40分の演説、これは新聞各紙も翌日に全文載せますし、NHKでも中継をずっとやっているわけで、面倒くさがらずにぜひ1度、首相官邸のホームページにも全文載っていますので、目を通していただきたい。

※首相官邸「第二百一回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説」全文はここから確認できます。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0120shiseihoushin.html


安倍総理大臣の掲げる政策っていうもの、目指すものが書かれていますので、われわれはそういうところもちゃんとテキストとしても見たいですよね。「それを見ろ」とわれわれが強制することはできませんけれども、そのうえで、その中の一部として、あるいはそうしたことを遂行していくうえでも大事なのが足元の問題ですよ、ということを見ていくことが大事だと思うんです。
マスコミは確かにスキャンダラスなことを取り上げたがります。それは否定しません。一方できのうの代表質問でも、野党側も政策に関わる質問のほうが圧倒的に多いんですよね。私たちがこういうことを言うのはマスコミである自分たちの存在を否定するかもしれませんけども、マスコミの言うことばかりに頼らずに、ぜひ原典をあたってほしい。それが今の時代はできますのでね。有権者の方には、可能であれば、ぜひそこもお願いしたいなというふうに思います。
三宅キャスター: 短い時間でサッと読めたりとかという必要性は分かりますけれど、やっぱり元のものをきちんと見るということも必要だという指摘ですね。
小倉キャスター: そうした努力をなさっている方からもお便りをいただきました。
<通常国会が始まりましたが、有権者と政治家の距離が遠のき、無力感が著しいです>
大越キャスター: 先ほど、「政治不信がちょっと高まっているんじゃないかというのは実はさほど根拠がなくて、居酒屋トークを聞いていれば分かりますよね」と言いましたら、ややお叱りの指摘もいただいたんですけれども。政治への関心が薄まっているというのは各種の世論調査で明らかですし、何より選挙の投票率を見れば、政治との距離が広がっているという今のご指摘は、数字で明らかになっている部分だとは思うんですよね。
そうなると何が起きるかというと、一例ですが、50%の投票率でその半分の支持を得て過半数を取ったと。それを中心に政権を運営していくということになると、100%の母数で見るとしょせんは2割台、25%です。ですから、私たちが投票権を放棄すればするほど、ごく一部の政治に深く関わりのある利害関係を持つ人たちの意向で政治が回っていくことになってしまう。するとますます国民から政治を遠ざけてしまう。そういう悪循環に陥ってしまうので、ここはあんまり「政治なんて、しょせん……」っていうふうになげやりにならないで、多少面倒くさいですけども、僕もすべてを理解しているわけではありませんが、自分たちからしっかりと、どんな政策を掲げて何の問題を抱えているのか、そこにアプローチしていく有権者側の姿勢というものは、やっぱり求められてるんじゃないかと思うんですよね。
三宅キャスター: 国会は本会議のあと、予算委員会に入っていきますよね。
大越キャスター: 本会議はどちらかというと一方通行ですけれども、予算委員会は丁々発止のやり取りがあります。ほかにも政策課題には大事な問題がありますよね。政府は中東に自衛隊の艦艇を派遣しています。これなんかも調査・研究という目的で、国会審議を通さずに内閣の決定で自衛隊を海外に派遣しています。これについては例えば自民党の中からも、「特別立法をして出すべきなんじゃないの?」という批判も上がっているんです。そういう大事な政策課題も含めて、スキャンダルの追及だけではなくて、予算委員会とかいろんな委員会の答弁者と質問者が近い場でやり取りしますので、ぜひこういうところにも関心を抱いてみていただければなというふうに思います。
三宅キャスター: みなさん、たくさんの声をありがとうございました。いろいろな意見があることが分かりました。ラジオではそういう意見を紹介しながら、みんなで政治に関心を持っていくということが大事なのではないかなと思いました。

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