学校での英語学習が早まるけれど…。<実践ビジネス英語>講師に聞く

ざっくり言うと
子どもたちへは「英語ができると世界が倍に」「興味を通して英語を勉強してみては」のメッセージを
ビジネス英語の上達はまず目標を明確に。「サンマ(時間・空間・仲間)」を使った勉強と、雑談力も必須です
2020/01/21 三宅民夫のマイあさ! 「三宅民夫の真剣勝負!」ゲスト:杉田敏さん(NHKラジオ<実践ビジネス英語>講師)

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2020/01/21

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【出演者】
三宅キャスター:三宅民夫キャスター
杉田さん:杉田敏さん(NHKラジオ<実践ビジネス英語>講師・昭和女子大学客員教授)
小倉キャスター:小倉実華キャスター


三宅キャスター: 今、日本の英語教育が大きく変わろうとしています。子どもや孫の英語教育、どうしたらいいのか、悩んでいるという方も少なくないと思います。そこできょうは、多くの人が知る英語の達人に伺います。
杉田さん: Hello, everybody! 杉田敏(すぎた さとし)です。
三宅キャスター: Wow! Good morning, Mr.Sugita.
NHKラジオの<実践ビジネス英語>講師で、昭和女子大学客員教授の杉田敏さんです。杉田さんは、この声でおなじみ、という方もいらっしゃるでしょう。NHKラジオの英語講座の講師を30年以上続けていらっしゃいます。

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さて杉田さん、この4月から日本の英語教育が大きく変わります。英語学習はこれまで小学校5年生からだったんですが、小学校3年生からになります。また、小学校5年生からは教科として1週間に2コマの授業となって、成績もつけられるようになります。親としてはどうしたらいいのか。恐らく悩んでいらっしゃると思います。英語学習というのは、やっぱり早いほうがいいんでしょうか。
杉田さん: 英語学習が早ければ早いほどいいっていうのは、神話ではないかなと思っているんですよね。小さいころにはやはり、思考力の原点となるような母語、日本語、国語をしっかり学んでほしいと思うんですよね。そのほかにも日本人として知っておかなければならない一般的な常識、こういったものを先に学んだほうがいいと思うんです。ピアノでもバイオリンでも卓球でも水泳でも同じなんですけれど、学校の教科の時間にやっただけで日本代表になった人っていないんですよね。やはり興味と意欲がなければ、学校の授業があってもなくても、英語っていうのはものにならないと思うんです。
三宅キャスター: 私の手元に、4月から使われる小学校の、ある教科書のカリキュラムを持ってまいりました。1枚の紙なんですけれども、6年生までに覚える単語の目標が600から700語となっています。この表をご覧になって、どういうふうに思われますか。
杉田さん: われわれの時代は中学校1年生から英語が始まったわけで、そのときの「Lesson1」の文章っていうのは覚えていらっしゃる方も多いと思うんですけど、「I am a boy.」とか「This is a pen.」、そういうものが多くて、あんまり現実的ではないとか、実用的ではないと言われました。それに比べると、かなり普通の会話に近いような文例が載っていますね。これを作られた先生方は、ずいぶん苦労されてここまで来たと思うんですけれど、6年生のリストを見ると、比較的難しいかなという感じがします。4年生、5年生の積み重ねがないと、ここまで来れないんじゃないかなと。その間に英語嫌いになってしまわないように、というふうに思いますね。
三宅キャスター: 英語が嫌いにならないようにしないといけないよ、ということなんですね。国立教育政策研究所の調査で、小学6年生でおよそ1割が、英語の授業を「嫌い」「どちらかといえば嫌い」になっているというデータもあるんですが。
杉田さん: まぁ、そんなに多くないと思うんですね。初めて学んだ学科ですから、なかなか難しいのでもっと多いかなと思いましたね。
三宅キャスター: なるほど。みんな「早く」と焦っているかもしれないけど、ポイントは「いかに嫌いにならないようにするか」と。
杉田さん: 興味を持って学ぶことが大事だと思うんです。興味を持たせ続けるためには、親や先生はどうしたらいいかということを考えますね。
三宅キャスター: じゃあ、どうしたら好きになってくれるのか。どうすればいいですか?
杉田さん: やっぱり一方的に押しつけると、嫌いになってしまう可能性が大になると思うんですよね。そうじゃなくて、親も教師も、学習者に与えるメッセージとしては「英語ができると、世界が倍になるんだよ」ということだと思うんです。英語を勉強することによって、いろいろな知識を吸収することができる。「自立心を持って、自分がやらないとだめなんだよ」というのもメッセージだと思いますね。
三宅キャスター: 「楽しいんだよ」ということと、「自分でやってみたら」という感じですね。具体的にはどうしたらいいんですかね。
杉田さん: 英語以外に自分が何に最も興味を持っているのか。「君は何に一番興味を持ってる?」と言うと、小学生でも、将棋が好きだとか、相撲、柔道、生け花……、そういったものは大体、世界中に英語の本がたくさんありますよね。そういうものを通して英語を勉強する。だから英語や語学に興味が持てなければ、英語を話す人や英語を使ったドラマや映画とかを興味を持って聴いてみるとかですね。
私が中学校・高校のときには、英語で説教する教会に行きました。ミッションスクールだったので、「どうやって教会の牧師さんは説教しているんだろうか」ということに興味がありましたね。そういうふうに周辺から入っていって、英語を勉強すると。
三宅キャスター: ちなみに杉田さんは、何歳のころから英語を始めたんですか?
杉田さん: 私はふつうに中学校1年生ですね。
三宅キャスター: あっ、そんなに早いほうじゃない。
杉田さん: ええ。公立の中学校に入って「英語」という新しい教科が入ってきたので、そこから勉強し始めて。
三宅キャスター: 子どもたちの英語の上達の方法で、どんな方法があるのか。注目していらっしゃるやり方ってありますか?
杉田さん: 私は大学で時々教えたりしているんですけど、「Show and Tell」っていう科目を教えているんですね。「Show=見せる」、「Tell=しゃべる・話す」ということです。何か自宅から自分の“お宝”を持ってきて、それについてみんなの前で話をするということで、アメリカなんかだと小学生はみんなやっているんです。コミュニケーションやプレゼンテーションの基本なわけですね。そのお宝については、よく知っているはずですよね、自分でお宝だと思っているので。それをみんなに分かりやすく、相手によく分かるような言葉を使って話をするという訓練を、小学校のころからさせられるんですよね。
三宅キャスター: コミュニケーションの基本が「Show and Tell」にはあるんですか?
杉田さん: そうですね。コミュニケーションの基本は、どうやって自分の考え方を相手に伝えるかということなので、すごくいい方法だと思います。日本でも日本語で「Show and Tell」をやっている小学校や中学校はあるようですけど、これを英語でやるのもとてもいい訓練になると思います。
三宅キャスター: 教える側の小学校の先生たちも結構大変で、文部科学省の平成30年の調査によりますと、英検準1級レベル以上を取得した小学校の教師は1%しかいない。こういう中で先生たちは教えなければいけないので大変だと思うんですけれども、先生方へのアドバイスって、ありますか?
杉田さん: 私が「音楽を教えろ」とか「習字を教えろ」とか言われたら大変困るのと同じように、今まで英語を教えるということを考えてこなかった先生が「英語を教えろ」と言われると困ると思うんですね。しかも現在は帰国子女の子どもたちがクラスに1人ぐらいいるかも分かりませんね。
三宅キャスター: 子どものほうが上手だったりなんかして(笑)。
杉田さん: そうなんですよね。そういうときにどうしたらいいかっていう。やはり先生はみずからを偽らないというか、正直に話す。「私は大学でシェイクスピア研究をしたので、そのことについては知識があるけれど、英語の発音に関しては、この子は帰国子女で小さいころからずっとニューヨークの小学校中学校にいたんだから英語の発音がずっといいんだよね。だからこの子に、教科書をちょっと読んでもらおうか。私よりはずっといいんだよ」というようなことを言って、決して自分をごまかさないということが大事じゃないかと思いますね。生徒は分かりますからね。先生が知識がないというのは許せるんだけど、ごまかす先生は許せないというふうに私は昔から思ってきました。
三宅キャスター: 今の話を聞いていると、英語の上手下手というよりは、先生の授業の進め方というか、人柄も含めて、そういうことが大事なんですかね。
杉田さん: そうですね。やっぱり人柄が大事だと思いますね。私を教えてくれた中学校の先生も、それから家庭教師の先生も、決して英語は上手ではなかったんですよね。
三宅キャスター: そうなんですか。
杉田さん: だけど教師としてはとても優秀な先生方で、死ぬまでおつきあいをしましたし、その先生たちが中学校の思い出に「私は立派な英語の教師ではなかったけれど、いつも立派な教師になりたいと思っていた」というようなことを書いていて、すばらしい先生に教わったなと思いましたね。英語が得意でない先生から英語を教わるということのメリットの1つは、「先生から英語を学んでいたんでは決してものにならないな」というふうに思って、「自分で勉強しなきゃ」と思ったという。それは大事だと思いますね。
三宅キャスター: やっぱり楽しく学べるかどうかというのがポイントなんですかね。
小倉キャスター: いくつかお便りをいただいております。
<「日本語もできないのに、英語はどうなの?」って、今でも思う>
杉田さん: 全く同感ですね。やはり小さいころには日本語をしっかり学ぶ。それから日本的な常識を身に付けるということが大事だと思いますね。
小倉キャスター: それから、
<話せない親に「英語は楽しいよ」とか言われても……>
杉田さん: 私の親もそうだったんですけど、「こういうふうになってはいけないな」という、一種の反面教師ですかね。でも周りに英語のできる人もいるでしょうし、英語ができるとこんなこともできるんだ、こんな活躍ができるんだと思わせるような人物もいると思うんですよね。
小倉キャスター: 60代の方から、先生に関するお便りも届いています。
<私も中学1年生から英語の授業を受けた世代です。中学1、2年は同じ女性の先生でした。すごく楽しかったことを覚えています。ただ中学3年生になり、あまり性格的に合わない先生になった。すると英語の興味は半減。どんな先生に出会えるかですね>
杉田さん: 先生が果たす役割は大きいと思いますけど、やはり自立心を持って、先生に頼るだけではなくて自分から道を切り開いていくと。自分から勉強していくということは大事じゃないですかね。
三宅キャスター: さて、ここからは、子どもたちだけでなく、どうして日本人はなかなか英語が上手にならないのか。さらに根本的なことを伺っていこうと思います。杉田さん、実はたいへんな方なんですよね。
小倉キャスター: 杉田さんは、日本ゼネラル・エレクトリック取締役副社長、電通バーソン・マーステラ取締役執行副社長などを務められてきて、ビジネスをものすごく知り尽くしていらっしゃるんですね。
三宅キャスター: ビジネスの最前線にもいらした方なんです。
中学のときから英語をみんな一生懸命にやっているんですが、日本のビジネスパーソンの英語のコミュニケーション能力は、どうして伸びないんですかね。何が根本原因だと思います?
杉田さん: よく聞かれるんですよね。「どうしたら英語がうまくなりますか」とビジネスマンから聞かれると、私は反対に質問するんです。
「今、あなたの英語力はどのくらいですか」
「どの程度うまくなりたいと思っているんですか」
「うまくなって、何をしたいと思っているんですか」
「学習の目的は何ですか」
「その学習の目的を達成するために、何を犠牲にするつもりがありますか。お金? 時間?」
そうすると、あまり考えずにただ「うまくなりたいな」という、漠然とした願望を持ってる人がすごく多いことに気が付いたんです。
三宅キャスター: 何となくやりたいな、程度では、だめ?
杉田さん: だめなんですよね。目的意識というのがやっぱり必要だと思いますね。
三宅キャスター: 目的意識というのは「何のために」ということ?
杉田さん: 例えば、留学をしたい、MBAを取りたい、転職をしたい、国連の職員になりたい。いろいろあると思うんですけど、そのためには勉強をしなきゃならない。「お金と時間をどれだけ犠牲にできますか」といったようなことを、逆にお聞きしますね。
小倉キャスター: 確かに「英語を学んだら何かしら役に立つだろう」と私は思っていましたが、全く逆だったということですよね。となると、社会人やビジネスマンが英語を効率的に上達するにはどうしたらいいんでしょうか。
杉田さん: 私はよく「サンマ」という話をするんですけど、“3つの間”なんですよね。「時間」「空間」「仲間」という3つの“間”を使った勉強をしましょうと。
時間を見つけなきゃならないですよね。いつもと同じように生きていたのではだめで、勉強する時間を作らなきゃいけない。それにはみんなと退社後行く赤ちょうちんの時間を減らすということも必要ですよね。そして場所をどうするか。会社の中で勉強ができるか、学校に行くか、あるいはラジオを聴くか、テレビ見るか。それから、仲間がいると非常にいいんですよね。一緒に英語の勉強ができるようなグループ。各地にいくつかありますから、参加して、みんなで一緒に勉強する。この「サンマ」ということが大事だと思いますね。
三宅キャスター: ずばり、コミュニケーションの能力で日本人に一番欠けているもの、日本人が必要としているものは何でしょうか。
杉田さん: 私は「雑談力」だと思うんですね。雑談というのはどこに話題が振られてくるか分かりませんから、どんな話題になっても答えられるような英語力。なかなかそれを身に付けるのは難しいんですけど、広い知識、コンテンツということが大事だと思いまね。
三宅キャスター: 雑談は苦手ですか、日本人?
杉田さん: うーん、苦手ですね(笑)。英語では「shop talk」と言うんですけど、仕事の話はできるけどユーモアのセンスがないとか、それ以外の話ができないとか、商談が終わって食事になったりしたときに何も話せないというと「この人の知的レベルはどうなんだろう」というふうに、相手に疑問を抱かせてしまうことがありますね。
三宅キャスター: 英語の能力が伸びない元には、そこのところが関係していますね。
杉田さん: そう思います。
三宅キャスター: 杉田さんの<実践ビジネス英語>の講座では、雑談力を伸ばすための工夫もさまざまされているということです。放送は、毎週水曜日から金曜日の朝9時15分からです。ありがとうございました。

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