午前8時台を聴く
24/03/23まで
午前9時台を聴く
24/03/23まで
登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回のテーマは、「チャレンジ! 山テスト」。山に関するさまざまなジャンルの問題を用意しました。用意してくださったのは、日本山岳検定協会会長の嶌田聡さん。登山者を対象にした「山の知識検定(通称:ヤマケン)」を主催しています。テストに楽しく取り組んで、安全に山を登るための知識を得ましょう!
【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
嶌田:嶌田聡さん(日本山岳検定協会会長 日本大学工学部教授)
基礎知識から、登山が楽しくなる雑学を出題する「山の知識検定」
山本:
「山の知識検定」とは、どういう検定なのでしょうか?
嶌田:
山の遭難事故の防止や、自然保護につながる知識を学ぶことで、登山をより楽しいものにしようと、2011年に始めました。2019年まで毎年1回開催していましたが、新型コロナウイルスの影響でしばらく中断していました。再開の要望も多かったですし、コロナも落ち着いてきましたので、ことし6月、5年ぶりに再開することになりました。
石丸:
山の世界には、いろいろな検定があると思いますが、どんなものがありますか?
嶌田:
トレッキングやトレイルランニングなどの検定があったり、アウトドア一般の検定があります。登山で言いますと、山岳ガイドやレスキューなど、職業としての専門的な資格もあります。ただ、一般の登山者を対象にした検定はありませんでしたので、「山の知識検定」を作りました。
石丸:
これを取ったら、国家的な資格がもらえるわけではない?
嶌田:
「自分はここまでできました」という証しと言うのでしょうか? そういう意味での検定となっております。
石丸:
誰でも受けられるのですか?
嶌田:
年齢や経験は制限ありません。
石丸:
等級とかあるのですか?
嶌田:
3つのコースを用意しています。
1つ目が「ブロンズコース」と言いまして、初級コースですね。登山経験が3年たっていない方を対象にした、基礎的な知識を問います。2つ目は「シルバーコース」で、中級コースです。自分で登山の計画をしたり、自分で登山ができる方や、雪山も入ってきます。最後が「ゴールドコース」で、上級コース。リーダーとして行動できたり、他人を指導できるレベルの人を対象にした検定になります。
先ほど、「誰でも受験できます」と言いましたが、順番に受けていただきたいです。最初は、「ブロンズコース」から入っていただいて、ブロンズに合格したら「シルバーコース」と……ステップアップしていきます。
山本:
これまで、どれぐらいの方が受験して、合格率はどれぐらいなのでしょう?
嶌田:
最初の9年間で、3,601人が受験しています。その中で2,558人が合格していまして、合格率は「ブロンズコース」は、80%ぐらいありますが、「シルバーコース」になりますと、60%。「ゴールドコース」は、40%ぐらいになっています。
石丸:
「ゴールドコース」合格者って、何人います?
嶌田:
今は、88人います。
山本:
合格したら、バッジがもらえるそうで。
嶌田:
合格しますと、合格認定証とバッジを差し上げています。
石丸:
フクロウのデザインで、かわいらしいバッジだね。山バッジくらいの大きさで。
山本:
この検定には、どんな問題が出されるのでしょうか?
嶌田:
メインは、登山技術や安全管理に関するものなのですが、その他に、知っていればより登山が楽しめる知識や雑学もあります。具体的に言いますと、登山の装備、歩き方、地図、天気図の知識、けがや病気をした時の応急処置法など、登山者なら最低限の基礎は押さえておきたいことを出題しています。
石丸:
花の名前も出てきたりするのですか?
嶌田:
より楽しんでもらうということで、山で出会う動物や植物のことであるとか、歴史や山岳信仰などの雑学もあります。
石丸:
何問ぐらいあるのですか?
嶌田:
全部で50問を予定しています。基本的に4択問題です。一番難しい「ゴールド」は、少しだけ記述式の問題もあります。制限時間は75分です。
石丸:
何点以上取れたら合格なのかな?
嶌田:
80点を目安にしております。
石丸マスターと問題に挑戦!
山本:
ここでウオーミングアップをしましょう。マスター、準備はいいですか? 問題を嶌田さんにご用意いただきました。3択問題です。嶌田さん、出題をお願いいたします。
嶌田:
最初は、雑学の分野からいきましょう。
歩いている途中でリーダーが、「一本入れよう」と言いました。これが意味することは以下の3つのうちのどれでしょう?
A たばこでも吸いましょう
B 地図を確認しましょう
C 休憩をしましょう
石丸:
答えは……C!
嶌田:
正解です。
石丸:
歩荷さんが重い荷物を背負っているときに、いちいち下ろすのは大変だから、荷物の下に棒を一本立てて休憩するという。
嶌田:
おっしゃる通りです! よくご存じで。
「一本立てる」という言い方もしますね。
山本:
棒で荷物を支えることが、言葉の由来なのですね。
嶌田:
私は、大学の山岳部で登山を始めましたが、夏山合宿ですと、40~50キロぐらいの荷物を背負っていました。それを担ぐのは非常に大変で、大学のキャンパスでよく練習していました(笑)。それぐらい大変なんですよね。
石丸:
担ぎ始めが大変なんだよね。だから休むときは、斜めの床とかに立てかけるか、棒をリュックの下に支えて肩を楽にする。
山本:
ちゃんと由来があるのですね。
これは、どのコースくらいの質問になるのですか?
嶌田:
これは中級の「シルバーコース」ですかね。
山本:
今のところマスター、銀メダル獲得です! 肩慣らしは大丈夫ですね?
日本山岳検定協会 会長の嶌田聡さんが、「山カフェ」のためにオリジナル問題を用意してくださいました。「ブロンズコース」の問題から行ってみましょう。マスターと皆さん、一緒に考えてください。
石丸:
わかりました。皆さん、一緒に考えましょう。
山本:
それでは第1問。
上り坂では、効率よく登れるよう、歩幅は大きめにとり、後ろ足を強く蹴るように歩くとよい。
“○”でしょうか? “×”でしょうか?
石丸:
上り坂でしょう? これはね……“×”!
嶌田:
石丸さんの答えは……正解です!
上りでも下りでも、歩幅はなるべく小さくとり、重心を常に真ん中にすることで、次の一歩への前足への体重移動が楽になります。あと、後ろ足を強く蹴ると、ガレ場ですと落石を引き起こす危険もあります。できるだけゆっくりとした動きが大事になってきます。
石丸:
僕は、階段状になっているようなところは、2歩で行けるところを3歩で行こうと努力していますね。
嶌田:
それは、すごくいいことだと思います。
石丸:
なるべく「歩幅を小さく、歩数は多く」みたいな。そのほうが疲れないような気がして。
嶌田:
すごく若くて筋力があるような方なら別なのですが、高齢者の方も山歩きをされる方が非常に多いと思います。できるだけ負担のかからないように、ゆっくりゆっくり歩くほうがよろしいです。
山本:
嶌田先生のご専門が、「安全で効率的な登り方」ということですが、ふだんの研究でも、こういう実験をしていらっしゃるのですか?
嶌田:
そうですね。「足を地面につけるとき、どんなつき方がいいか?」を検証するために、足裏の荷重の強さを計測できるセンサーを、靴の中に仕掛けます。「強く踏んでいます」とか、「指先で強く蹴っています」というのが、分かります。
それで計測しますと、ベテランの方は、足をついた時の荷重の中心が、足の中部にいる時間帯が長いのです。接地してから離れるまでの長い間、足の真ん中に荷重の中心が来ている一方、初心者の方ですと、かかとにずっといて、ぱっと最後に離れるとか、ぽんっとつま先に移動して、つま先でじっと荷重をかけていたり、かかとから勢いよくつま先に移動するような方もいて、調べると「歩き方の特徴」がよく分かりますね。
石丸:
科学的な解析だ! 個人的に調べてもらいたいね。
山本:
さあ、続いて行きます。第2問!
荷物をザックにパッキングする際は、使い勝手を考えて、使用頻度が低く、重たい装備は一番底に入れるのがよい。
“○”でしょうか? “×”でしょうか?
石丸:
重たい装備と言うと、水とか食料とか……。これは“×”でしょう!
嶌田:
石丸さんの答えは……正解です!
ザックの下のほうに重たいものを入れると、腰のちょっと離れたところにザックの荷重の中心がくるので、どうしても後ろに引かれてしまいます。首の下ぐらいに重たいものが密着するようにするといいですね。
石丸:
なるべく上のほうに。そして、背中から離れないところに重たいものを。
山本:
てっきり一番下だと思っていました。そのほうが安定するかなと思っていましたが違うのですね。
石丸:
そうすると、もっと重く感じちゃうのよね。
嶌田:
本当は、頭に乗せるのが本当は一番いいんでしょうけれどね(笑)。さすがに首を痛めたりしますので、背中の上のほうで。
山本:
続いて、第3問。今度は3択問題です。
頭痛や吐き気、めまいといった高山病の兆候が続いたとき、最良の手段と思われるものは次の3つのうちどれでしょう?
A 温かいウェアに着替えて、登山を再開する。
B いったん、標高を下げて、下の小屋で様子を見る。
C その場で少し横になって睡眠を取った後、登山を続ける。
石丸:
これはね……B!
嶌田:
正解です!
なぜ「下る」と、お考えになられましたか?
石丸:
高山病だから、少しでも空気が濃いところに行く。
あと、AとCの、「登山を再開する」と「睡眠を取る」は、いけないんじゃないかなと思って。
嶌田:
そうですね。高山病は高いところに行くからなるわけですから、低いところに戻れば、高山病から解放される。高山病の症状が出てきた時には、とにかく「高度を下げる」のが重要になります。
石丸:
「せっかく登ったのに」と思っちゃうけれどね。
嶌田:
不思議なことに、いったん下がって次の日また同じところに来ると、全然、苦にならないと言いますか、苦しかったところがスルッと行けてしまいます。いわゆる「高度順化」と言いますけれど、それは私もよく体験していますね。
石丸:
「高度順化」ができずに、また頭が痛かった場合は?
嶌田:
もう一回下がらないといけないですね。個人差があると思います。
山本:
ブロンズレベルの問題を3問お届けしました。皆さんはいかがでしたでしょうか? マスターは3問とも正解! 嶌田さん、いかがでしょうか?
嶌田:
すばらしいですね。2問以上正解した方であれば、ブロンズレベルはあるかなと思っていいと思います。
山本:
そもそも13年前、こういう検定を立ち上げようと思ったのはなぜですか?
嶌田:
大学の山岳部で登山を始めて、卒業後は「日本クライマーズクラブ」という山岳会に入って活動していました。いわゆる、“ガチな山岳会”と言うのですかね? そういうところにいましたので、登山について学ぶ機会が非常によくありました。
最近は、山岳会に入らずに個人で登山活動される方が非常に多くて、インターネットや書籍から学んでいます。登山をする方は、非常に真面目で、学習意欲の高い方が多いのですが、登山は学ぶ範囲が広いので、どうしても限界があります。そこで、「こういうところを学べばいいですよ」とか、「これぐらいやりましょう」というのを提示したり、モチベーションを上げるために、検定を作ろうということになりました。
山本:
たしかに、雑学も知ることができるし、安全に関わることも知ることができるいい機会ですよね。
番組では、番組へのメッセージ・写真投稿をお待ちしております。また、最新の放送回は「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでお楽しみいただけます。ぜひ、ご利用ください。
石丸謙二郎の山カフェ
ラジオ第1
毎週土曜 午前8時05分
詳しくはこちら
【放送】
2024/03/16 「石丸謙二郎の山カフェ」
午前8時台を聴く
24/03/23まで
午前9時台を聴く
24/03/23まで