ことしは「たつ年」 「竜(龍)にまつわる山々」に登ろう!

24/01/20まで

石丸謙二郎の山カフェ

放送日:2024/01/13

#登山#ネイチャー

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登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回のテーマは「えとの山」。山の伝承・信仰に詳しい、山岳ガイドの太田昭彦さんに、ことし登りたい“竜(龍)がつく山”、“竜(龍)にまつわる伝説”について伺います。

【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
太田:太田昭彦さん(山岳ガイド)

ダイヤモンド富士も見られる「竜ヶ岳」

石丸:
「えと登山」のおもしろさはどんな点でしょうか?

太田:
年明けに“えとの山”に登ると「ことしも新しい年が来た」と思って、気分がすごく盛り上がります。特に富士山(ふじさん)が見えたりすると、「ことしも安全登山をお願いします」とお願いすることがよくあるのですが、そうすると「ことしもいい登山ができそうだな」という気になって、テンションがあがります。

えとは、12年に1回めぐってくるカレンダーみたいなものなので、1周前の“えとの山”を思い出して、「ことしはどんな山に登ろうかな」と考えるので、そういう楽しみもあるかなと思います。

石丸:
「富士山が見られたら」ということですが、ことしのえとで言いますと……?

太田:
「たつ」なので、竜の山ということで、富士山がすぐ目の前に見える、山梨県と静岡県の県境に本栖湖があるのですが、その本栖湖のすぐ脇にそびえる、標高1,485メートルの竜ヶ岳(りゅうがたけ)に登りました。

石丸:
竜ヶ岳はよく登っています。本栖湖によく行くものですから(笑)。

太田:
実は1,000円札の裏側を見ていただくと、富士山の右側にそびえている山が竜ヶ岳なので、ちょっと見ていただくと「この山がそうなんだ」と、気がつく方がいらっしゃるかもしれないですね。

石丸:
げんこつのような形をしていますよね。

太田:
まさにその通りです。
竜ヶ岳の魅力は“展望”です。本栖湖から樹林帯へ上がっていくと、樹林の隙間から、ときどき本栖湖が見えるのですが、特に今の時期だと、葉っぱも落ちていて見やすいです。本栖湖の裏には、ちょっと雪をかぶった南アルプスも見えます。その樹林帯を抜けると、ぱっと視界が開けて、ドーンと富士山が見えます。

石丸:
頂上には、座って食べられるような(場所になる)芝生のようなものがあって。

太田:
山頂に行くと、目の前が富士山ですし、ことし登ったときは、とても天気がよくて、富士山のすそ野をずっと目でたどっていくと、最初「雲海かな?」と思ったのですが、駿河湾が見えました。
とても展望がよくて、えとの年に登る、富士山がきれいに見える山としては、とてもおすすめの山ですね。

石丸:
あそこは、よく滝雲が見えるんですよ。雨ヶ岳 (あまがだけ)のりょう線から乗り越えてくる雲が、滝雲になる。

山本:
お便りも来ています。

60代の男性・千葉県
私たちは夫婦で登っていますが、年末年始は本栖湖近くの竜ヶ岳、秋は鈴鹿の竜ヶ岳、夏は五竜岳、冬はそれを冬山から眺めます。特に、山梨の竜ヶ岳から見るダイヤモンド富士は圧巻です。2018年・2020年と2023年の12月30日に登りました。暗いうちから登り始め、頂上手前の見晴らしの良いりょう線で待ちます。今回は、ちょうど富士山頂上の真ん中から太陽が顔を出し、パッと神々しく輝き始めました。これだけでご利益1万倍の瞬間です。その後、反対側の白く輝く、南アルプスの眺望も楽しめます。ことしも安全登山を心がけ、山行を続けたいと思います。

山本:
まさに今、竜ヶ岳のお話がありましたが。

太田:
お手紙にあった通りに“ダイヤモンド富士”も有名で、お正月の前後に結構見られます。ただ、富士山の裏から出てくるので、わりと明るくなる時間が早いです。普通のご来光は、暗がりからちょっとずつ明るくなるので、なかなかダイヤモンドが出てこない。一瞬ちらっと出てきて……(あっという間に終わる)。

石丸:
富士山が高すぎるから(笑)。

太田:
出てくるまでがすごく寒いので、自分が行ったときは、スパッツをはいて、スープやコーヒーで体を温めたりして見ました。

石丸:
マイナス6、7度になりますからね。

太田:
先日行ったときも、朝方は気温が低かったのですが、日中が暖かかったので、登山道が凍っていた道がとけて、一部ドロドロで結構苦労しました。そこだけ気をつけていただくといいかなと。

「竜」がつく山が一番多い県はどこ?

石丸:
“竜がつく山”は、全国にどれぐらいあるのですか?

太田:
『日本山名辞典』によると、頭に「たつ」とつく山は6座、「竜」とつく山が93座、「龍(りゅう)」とつく山は49座あります。その中でも特に多いのが、「竜王山(りゅうおうざん)※または龍王山」という山。この山がなんと62座もあります。

その中で、3分の1以上を竜王山が占める県があるのですが、それはどこだかわかりますか? ヒントは西のほう。

石丸:
四国じゃないかなと思うんだけれど……愛媛県かな?

太田:
正解は岡山県です。岡山県に22座あります。地元で調べた方もはっきりした答えは出なかったのですが、理由は、雨が少ない地域で晴れが多い場所のようで。

石丸:
“瀬戸内”気候ね。

太田:
「山で雨ごいを行ったから」という説もあるようです。

山本:
岡山の方から、そのことについて、お便りが来ています。

晴れの国・岡山は、キャッチコピー通り、降水量の少ない県です。竜(龍)がつく山をあっという間に複数見つけられます。明瞭なハイキングルート・登山道が整備され、地域の人から愛され、手入れをされている山もありますが、中には“やぶこぎ”で、やっとたどり着けるような山もあります。

山本:
それに関する資料と、地元に昨年末に載った新聞の記事も添えてくださいました。「1940年代ごろまで、食べ物を山頂にささげ、雨乞いを行った」という記事が新聞に載せられていますね。

太田:
なので、広島とか、マスターがおっしゃった四国あたりもそこそこありますね。

石丸:
全部“瀬戸内”気候だ。冬はちょっと雨が降るけれど、夏場は雨が少ない地域。

山本:
「水」と「竜」の結びつきは深いのですか?

太田:
結構結びつきが深いです。「竜神」と言いますが、竜神の恵みは、やっぱり「水」なんです。なので、「山に竜神が住む」と言われている場所は多くて、山から清らかな水が流れてくると、その水が大地を潤すじゃないですか? そうすると、ふもとに住んでいる私たちの生活が、その水で支えられています。

石丸:
川の形が、竜がうねる感じなのかな?

山本:
「ヤマタノオロチ」伝説も出雲にありますしね。

太田:
そうなんです。山の名前に「竜」とついていなくても、竜神伝説が伝わる山はいくつもあって、その一つが、自分もよく行く、秩父の武甲山(ぶこうさん)・標高1,304メートルの山です。マスターは登られたことはありますか?

石丸:
九州から東京に来て、一番最初に登った山が武甲山です! ザックの中に40キロぐらい本を詰めて、登った覚えがあります。鍛えようと思ったけれどバカだね(笑)。

山本:
トレーニング(笑)。

石丸:
ハードカバーの本を持って登ったけれど、捨てたいのよ。「捨ててやろう!」と思って出した最初の本が、『罪と罰』。これは捨てちゃダメだと思った(笑)。そんな、アホな話があります。

太田:
今度機会があったら、一緒に登りたいです。武甲山には「竜神が住む」という伝説があって、秩父市の神社に、武甲山の水が湧き出る「清龍の滝」という小さな滝がありまして、毎年4月に、秩父神社の方がその水をくみに来て、神社に持ち帰られて、その水に魂を入れて、「御田植祭」が行われています。

12月になると、今度は、その豊作をもたらした魂を入れた水を、武甲山の山の神にお返しする感謝のお祭りが、350年の伝統を誇る有名な「秩父夜祭」です。竜神の水が、秩父の田畑を潤して、また山に帰って、また潤すという循環が、毎年行われています。今回は、清龍の滝の水の音を録音してきたので、聴いてみていただけますか?

♪清龍の滝の音

石丸:
うねるような水の音ですね。

太田:
小さな滝ですが、すごく清らかで「ありがたいな」という気持ちになりますね。

山本:
静岡市にお住まいの方から、「静岡県に竜爪山(りゅうそうざん)という山がありますよ」というつぶやきが来ています。

石丸:
お便りでも同じ山の名前がありました。

70代の女性・埼玉県
静岡県の竜爪山は、私が通っていた高校では、「必ず全員が登らなくてはならない」というのがありました。何しろ人数が多いので、登っているうちに暗くなり、道に迷って先生たちが必死に探していた思い出があります。

太田:
前回のたつ年に、自分も竜爪山に登りました。

山本:
12年前!

太田:
静岡県にある、標高1,051メートルの山です。文殊岳(もんじゅだけ)と薬師岳(やくしだけ)、2つのピークがある山なのですが、わりと初級者の方にも登りやすい山かなと思います。薬師岳はちょっと樹林に囲まれていて、あまり展望が利かないのですが、文殊岳はドーンと開けていて、富士山・南アルプス・静岡の市街・駿河湾などが見えて明るいので、お弁当を広げて楽しむのにいい山頂だと思います。

石丸:
竜爪山の「爪」って何ですか?

太田:
名前の由来は諸説ありますが、その一つに、「1匹の竜が、木の枝に爪を引っかけて落としてしまい、それを村の老人が拾って竜爪山になった」といういわれがあります。

山本:
おもしろい言い伝えですね。

太田:
竜爪山には動物もたくさんいて、ニホンカモシカ・イノシシ・ニホンザルも目撃されるようです。あとは山の中腹に、樹齢500年の杉の木があります。それから8月の上旬に、富士見峠というところに行くと、「キツネノカミソリ」という花が咲くんですよ。オレンジ色でちょっとニッコウキスゲにも似た、ヒガンバナ科の花です。めずらしい名前ですが、名前の由来は「花がきつね火に似ているから」。昔は正体不明の明かりのことを「きつね火」と言っていました。また、「葉っぱがカミソリのように見える」ということで、「キツネノカミソリ」と言われています。

山本:
きれいですね!

太田:
そうなんですよ。そんなオレンジ色の花が見られる場所もあります。
ただ、登山道の途中がちょっと一部崩れている話も情報としてありますので、8月上旬の花をみるために出かける前は、きちんと情報を確認してから行っていただきたいです。

山本:
太田さんがことし行きたい山は?

太田:
「ドラゴンロードを歩いて、山頂に行く竜の山」です。東海地方に鈴鹿山脈がありますが、その中で「セブンマウンテン」と言われている山々があり、中ほどに、標高1,099メートルの竜ヶ岳がありまして、そこに行ってみたいです。山頂まで続く、すごく開けた展望の登山道のことを「ドラゴンロード」と呼ぶのですが、5月ごろは「シロヤシオ」が白い花を咲かせて、それが羊の群れに見えるのです。

石丸:
以前、「山カフェ」でも紹介しましたが、山の中に羊が100匹ぐらい見える。

太田:
秋になると紅葉して、今度は赤い羊の群れになる。それも見てみたいなと。

山本:
その山についてお便りが来ていますよ。

50代の男性・岐阜県
竜のつく山といえば、三重県鈴鹿山脈の竜ヶ岳。標高は低いのですが、山頂近くはなだらかで高い木がなく、見通しは大変良好となっております。冬は雪もある程度降るので、手軽に行ける冬山と思いきや、周囲にあまり高い山がないせいか、冬型の気圧配置になると、強風になることが多く、なかなかあなどれませんが人気の山です。


番組では、番組へのメッセージ・写真投稿をお待ちしております。また、最新の放送回は「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでお楽しみいただけます。ぜひ、ご利用ください。

石丸謙二郎の山カフェ

ラジオ第1
毎週土曜 午前8時05分

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【放送】
2024/01/13 「石丸謙二郎の山カフェ」

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