「グレートヒマラヤトレイル」 誰も撮ったことのない絶景を求めて

23/12/30まで

石丸謙二郎の山カフェ

放送日:2023/12/23

#登山#ネイチャー#写真

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登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回は、NHKBSの冒険紀行番組「地球トラベラー グレートヒマラヤトレイル」で、誰も撮ったことのない絶景を求めて、ヒマラヤを撮影する旅を続けている、中島健郎さんと石井邦彦さんが登場! 旅でのエピソードについて伺いました。

【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
中島:中島健郎さん(登山家・カメラマン)
石井:石井邦彦さん(カメラマン)

「誰も見たことがない画(え)を撮る」

山本:
お二人のプロフィールをご紹介しましょう。
お迎えしたのは、奈良県出身、登山家でカメラマンの中島健郎さんと、北海道出身、ヒマラヤや登山番組で豊富な取材経験をお持ちのカメラマン、石井邦彦さんです。お二人は、2019年に始まったNHKBSの冒険紀行番組「地球トラベラー グレートヒマラヤトレイル」で、誰も撮ったことのない絶景を求めて、ヒマラヤを撮影する旅を続けています。

地球トラベラー

[BS][BSP4K]
誰も撮ったことがない光景を求め、2人のカメラマンが、容易に人を寄せ付けない大自然に命がけで…

詳しくはこちら

山本:
番組で紹介している「トレイル」とは、どんなものなのでしょう?

中島:
ロングトレイルは世界中にありますが、2011年に、ネパールで「グレートヒマラヤトレイル」という名前がつけられた、比較的新しいロングトレイルの一つです。ネパールを、東西に1,700キロ横断するトレイルなのですが、標高3,000メートル以上のところを歩くトレイルで、高いところでは6,200メートル近い峠もあって大変なのですが、すべてが登山道ではなく、現地の人たちの暮らしの道になっています。4,000メートルを越えるところにも村があって、人々が生活しています。そこを僕たちが歩かせていただいています。

石丸:
人が住んでいる村を、通らせてもらう。

中島:
そんな感じです。だから、トレイルとして整備されて作られていないので、子どもたちが遊んでいるような道もたくさんあります。ちょっと離れたローカルな道に入ると、何の標識もなく、どこが道なのか、まったく分からないところもまだまだたくさんありますね。

山本:
これまで5話放送してきましたが、例えばどんなところを切り取ってきたのですか?

中島:
今では有名なトレイルを選んできました。マカルー・エベレスト・カンチェンジュンガ・アンナプルナと。8,000メートル峰は、世界に14しかないですけれど、そのうちのネパールにあるピークをメインにして、その周辺を撮影してきました。

山本:
今回のトレイルの撮影は、どんなところを撮影したのですか?

石井:
「誰も見たことがない画(え)を撮る」という目的で撮影を続けているので、そういう画が撮れる場所を探して、実際に自分たちでトレイルから外れて、撮影ポイントまで登って、ドローンを使ったり、いろいろなことをしながら撮影していく感じです。

中島:
本来なら、エベレストやマカルーとかを見たら、登りたいんですよ(笑)。そこをあえて抑えて、「山をいかにすばらしく撮るか」。だから、全然関係ない山に登っています。その山が美しく見える場所に行く登山をするので、基本的に、人がわざわざ行かない場所なんですよね。

石丸:
それは石井さんが、「あそこに行こう」って言うわけですか?

石井:
そうですね。「マナスルを撮るために、川を挟んだ対岸の尾根のほうに行けば、もっと違う画が撮れるね」と、二人で相談しながら、現場で見つけたものに反応しつつ、僕一人では行けないようなところに、健郎に連れていってもらっています。

中島:
「わざわざそっち行く?」と思うのですが、そこに行かないと撮れないものがあって、僕のアイデアでは出てこない場所なんですよね。山を撮るなら近づきたいような気もしますが、あえて引いたりもしますし、山がきれいに輝く時間があって、その時間ではないと見えない景色があったりするので、勉強になりますね。
でも、結構強引に「あそこ行けないかな」って言うこともありますが(笑)。頑張ってルートを切り開くのは、おもしろいですね。

山本:
それぞれの経験値を持ち寄って、現場でロケの下見をしながら回すという……試行錯誤ですね。

中島:
そうなんですよ。

山本:
「よし!」という映像を撮れた瞬間はいかがですか?

中島:
やっぱり、「おおお!」って思いますよね。

石井:
特に朝日・夕日の時間帯は、事前にどうなるかわからないので、すごい瞬間に出会えたときは、本当に興奮しますね。

石丸:
村の人たちとの交流もあるじゃないですか? あれも、おもしろいですよね。

石井:
これまでいろいろなところを歩いてきて、いろいろな人たちにたくさん出会ってきました。わざわざ、インドのほうから金物や容器などを持って、売りに来ている行商の人たちに会ったりとか、地元の人たちの刃物を直したりする鍛冶屋さんも、荷物を担いで移動していましたね。

山本:
子どもたちも、通学路として(このトレイルを)使っているそうですね。

石井:
通学路が本当に遠いんですよね。2時間~3時間も歩くと思います。「みんなよく歩くな」という印象ですね。

石丸:
あちらの方は、山に対しての信仰はかなりのものですか?

中島:
日常的なものですよね。日本で言う、“やおよろず神”みたいな、雨が少ない土地だったら、山にお祈りをささげたり、そういう形で常にそこにあるもの、“神様”ですよね。登山の前には、神様にお祈りをしてから山に入っています。

山本:
無事を祈る?

中島:
そうですね。登山の場合は、お祈りが結構長いんですよ。1時間~2時間ぐらい。

山本:
念入りに、登山の無事を祈るんでしょうね。

石丸:
村の方たちは、8,000メートル峰の名前は言えるんですかね?

中島:
だいたい言えるのですが、地図に載っている名前とは結構違ったりします。
メジャーなエベレストとかはわかるのですが、小さい丘とかは、正直別に気にしないですね(笑)。

石丸:
ヒマラヤで「丘」ってちょっとおもしろいですね。 丘はやっぱりあるのですか?

中島:
丘でも6,000メートルですから、普通ならピークなんですが、彼らにとってはそんな感じです(笑)。

山本:
お二人は、「グレートヒマラヤトレイル」に行く前から知り合いだったそうですね。

中島:
もともとは、タレントのイモトアヤコさんが海外で登山を挑戦する番組が、初めての出会いでした。石井さんは“カメラマン”で、僕は“山岳コーディネーター”でした。

山本:
お二人の、印象深い思い出はありますか?

中島:
山に来るカメラマンって、だいたい“へばっている”イメージがあったのですが、石井さんはすごく強かったんですよね。聞いたら、探検部出身で「さすがだな」という感じで、彼なら、安心して山の撮影をお願いできるなと思いましたね。

山本:
絶大な信頼が寄せられていたのですね。石井さん、いかがですか?

石井:
僕もカメラマンとして参加してるときに、健郎がいろいろなことをサポートしてくれていたのですが、そのおかげで、助けられてきた経験は何度もありますね。

山本:
8,000メートル峰を一緒に登ったご経験があると聞いたのですが……?

石井:
マナスルは、僕が初めて登った唯一の8,000メートル峰です。そのときは、無我夢中で撮影していたので、あまり記憶がないんです。健郎もそうですが、二人とも高所に強くないので、高度障害で、ほとんど各キャンプで、毎日おう吐している状況でした。

石丸:
意外ですよね。

中島:
本当に僕たち弱いんですよ。「生活の道」とか言いながら、4,000メートルで、結構ゲエゲエ吐いていたりするので、恥ずかしいです。子どもたちが走り回っているところで吐いているんですよ(笑)。こればっかりは体質なので。

石丸:
そんな方が、8,000メートル峰や未踏峰を登ったりされている……ある意味、僕らにちょっと勇気を。

中島:
そうですね。誰でもできるんじゃないかなと。

山本:
いやいや(笑)。

中島:
僕、富士山でも吐いたりするんですよ。本当に、高所は向いていないんです。でも行ってしまうのは……中毒性があるんですかね?

雪崩がテントの上を飛び越えた?! 今までで一番厳しい撮影に

山本:
そんなお二人が、2023年の春、標高8,163メートルのマナスルの撮影に臨みました。その様子が「グレートヒマラヤトレイル」第6話として、2024年1月1日にNHKBS夜7時半から放送となります。

石丸:
マナスルは、1956年に日本人が世界で初めて登頂したんですよね。特別な思いが込められた山ですが、今回はこれまでになく、大変な撮影だったみたいで?

中島:
今回は、なかなか思い通りにいかなかったんですよね。山の撮影になると、やっぱり“天気”ですよね。「限られたスケジュールの中で、いかに撮るか」ですが、そんなに余裕がないんですよ。ネパールの中西部は、「春は天気が悪い」とは聞いていましたが、ことしは、特に南西からの湿った風の影響が大きくて、いつもより天気が悪かったんです。雨と、高いところでは雪が連日降り続いて。

山本:
「大雪で閉じ込められた」というエピソードがあると聞きました。

中島:
一番天気のいい日に、6,000メートルの撮影ポイントに上がって、マナスルの山々を撮ろうとして行ったら、まさかの、“天気予報が外れた”んですね。今までにないぐらいの大雪になってしまって。

石丸:
えええ……どうなったんですか?

中島:
雪だけ、ならいいんですけれど、今まで聞いたことのない地響きがあって。「ゴゴゴゴゴ」って、地震かなと思うぐらいの……。よくよく考えたら、地震ではなく、雪崩がテントの上を飛び越えるという。

山本:
飛び越えたのですか?

中島:
その可能性もあったので、岩壁のちょっと隠れているスペースにテント張ったので、雪崩は避けられたのですが、実際に起こった経験はなかったので。

石丸:
もちろん、石井さんもそれは初めて?

石井:
遠くで雪崩を見ることはヒマラヤでもよくありますが、自分たちのテントの上を、雪崩が越えている感触は初めてで。めちゃくちゃ怖かったです。

石丸:
「ちょっと回してやろうか」なんていうのは……?

石井:
その間もないというか、「身を何とかしよう」という状態でしたね。

山本:
命がけでしたね。

石井:
ちょっとカメラまでたどり着かなかったです。

中島:
そもそも寝ているときだったので、「なになに、これは?!」みたいな感じで、なんとなくテントを押さえたくなる感じでしたね。

山本:
無事でよかったですね。

中島:
その日はまったく動けなかったです。

山本:
(お二人が)そんな大変な思いをされたマナスルですが、今回の番組では、日本人の女性がマナスルで成し遂げた偉業についても紹介されるとのことです。どんなことですか?

中島:
世界で8,000メートル峰に初めて登った女性が、日本人の女性隊だったんですよ。

石丸:
いつの話ですか?

中島:
1974年です。

石丸:
1974年というと、その次の年に、田部井淳子さんが、エベレストに女性が世界で初登頂されたわけですが、その前の年にマナスルに登っている! 知らなかった……。

山本:
当時の隊員の方にもお会いになったそうですが、いかがでしたか?

中島:
出発前にお会いさせていただいて、いろいろ現地の情報を聞いたのですが、克明に覚えていて。

山本:
何歳の方ですか?

中島:
今、80代ですね。生き生きしていて、「山頂の夕日がきれいだった」とか、すごくよく覚えていました。

山本:
そんなエピソードもあるマナスルに行かれたお二人の旅が紹介されます。改めて放送に向けて、一言ずつおすすめを聞かせいただけますか?

石井:
今回は、「今までで一番厳しい自然に直面した」と思うぐらい難しい撮影でしたが、厳しい自然に翻弄されていく様が、今回の見どころなのかなと思います。

中島:
ふだん見られない山の姿だったり、僕らだから撮れたものを、ぜひ皆さんにも見ていただければなと思います。頑張ってきたので、ぜひ見てください。


番組では、写真や番組へのメッセージの投稿をお待ちしております。また、最新の放送回は「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでお聴きいただけます。ぜひ、ご利用ください。

石丸謙二郎の山カフェ

ラジオ第1
毎週土曜 午前8時05分

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【放送】
2023/12/23 「石丸謙二郎の山カフェ」

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