「気象予報士、ヒマラヤの頂に立つ」 猪熊隆之さんがご来店

23/11/25まで

石丸謙二郎の山カフェ

放送日:2023/11/18

#登山#ネイチャー#気象

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登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回のテーマは「気象予報士、ヒマラヤの頂に立つ」。山専門の気象予報士の猪熊隆之さんがご来店。ご自身初の8,000メートル峰となる、ヒマラヤ山脈のマナスルに登頂! みずから現地の山に登り、どんなことがわかったのでしょうか?

【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
猪熊:猪熊隆之さん(山専門の気象予報士)

気象予報士、ヒマラヤの頂に立つ

山本:
山専門の気象予報士でいらっしゃる、猪熊隆之さんのプロフィールを改めてご紹介しましょう。1970年生まれで、新潟県のご出身です。大学時代から、ヒマラヤの7,000メートル峰など国内外の山で、登山に打ち込んできました。35歳のとき、ケガのため、登山家になる道を断念。山専門の気象予報士を志すことになりました。そして、登山家の竹内洋岳さんの「僕が行くときのヒマラヤの天気を予報してください」という言葉をきっかけに、海外の山の天気予報を始めました。現在は、全国330座以上の山頂の天気予報を配信する、山岳気象専門の会社を経営していらっしゃいます。
ことし9月、ガイド会社の公募登山隊に参加し、ご自身初めての8,000メートル峰となる、ヒマラヤ山脈のマナスルの登頂を果たしました。

石丸:
ようこそ、お帰りになられました。

猪熊:
ありがとうございます。

山本:
山岳家の花谷泰広さんからメッセージが届いております。

ヒマラヤキャンプでも、天気予報でも、お世話になっている猪熊さんご出演!マナスルでの予報&クライムのお話が聴けるようで楽しみです。お世話になったヒマラヤキャンプ隊は、あと3日ぐらいでカトマンズに戻ってきます。今回も大変お世話になりました!

猪熊:
花ちゃんから(笑)。
出発前にカトマンズで、登山隊のみんなと花ちゃんと一緒に食事をしました。すごくいい登山隊で、みんな若いし、楽しそうだし、一緒に行きたくなっちゃいました(笑)。

石丸:
連絡をとってお会いするわけですね?

猪熊:
そうですね。

石丸:
偶然会うのは、なかなかないのですね。イメージだと、町を歩いていたら、会うのだと思っていたけれど。

猪熊:
むしろ山のほうが会いますね。トレッキングルートが一緒とかで。

山本:
8,000メートル峰は初めての体験。改めていかがでしたか?

石丸:
ちょっと待って。今、何歳でしたっけ?

猪熊:
53歳ですね。

石丸:
それでもいけると!

猪熊:
いやいや、8,000メートル挑戦する人の中で、若いほうなんですよ。今回は最年長でしたが、めずらしいです。
8,000メートル峰自体は、若い頃に何度か挑戦していますが、天気や体調が悪くて、山頂まで行けなかったので、今回、初めて山頂に立つことができて、ほっとしています。あと、8,000メートルの空気を感じたかったんですよね。そこから見える景色や、雲の流れを感じることができたのは、大きな経験になりましたね。

石丸:
若いときは、山岳家として行っているから。

猪熊:
余裕が全然なかった。登ることに必死で。

石丸:
今は、気象予報士として、その山の予報をする目で見られるわけですね。

猪熊:
若い頃に登っていたときとは目的が違うし、山を見る目や空を見る目もだいぶ変わりましたので、おもしろい発見もいくつかありました。

石丸:
頂上からの眺めはいかがでしたか?

猪熊:
絶景なんですけれど、私は同じヒラヤマの8,000メートル峰で、「ダウラギリ」という山がすごく好きなのですが、そこで残念ながら先輩や友人が亡くなったりしていて、どうしてもダウラギリを見たかったんですね。

石丸:
距離的にはどれぐらいなのですか?

猪熊:
結構近いですよ。
あと、8,000メートルの山頂だと、360度景色が広がっているイメージがあったのですが……。

石丸:
違うのですか!

猪熊:
実は山頂の崩壊が年々進んでいて、本当の頂点には立てないんですよね。

石丸:
山頂は雪?

猪熊:
岩みたいになっています。岩の上に雪が不安定に乗っている感じで。

石丸:
その岩が崩壊するのですか?

猪熊:
崩壊する可能性がありますね。

石丸:
頂上に立つと危険。

猪熊:
頂上の1メートル下ぐらいのところですね。

石丸:
今回は、雲海をご覧になっているわけでしょう? 気象予報士的にはどうですか?

猪熊:
雲海は、天気を予想する上で重要でして、雲海のてっぺんは、平らになっていることが多いじゃないですか。

石丸:
ほぼ平らですよね。

猪熊:
雲は「やる気のある雲」と、「やる気の全然ない雲」があるんです。「やる気がある雲」は、どんどんどんどんやる気を出して、上に成長していき、雷とか激しい雨とかになってくるのですが、「やる気のない雲」は、真っ平らになっています。“やる気がない”と、山の上の天気はいいんですよ。だから安心なのですが、雲海が崩れて、どんどん雲がモコモコ上に上がってくることがあります。そうなると天気が崩れていく兆候です。安全なところに逃げたほうがいい状況に変わってきます。
ですから、雲の形とか高さとかを見て、「崩れてくるな」と、判断することができます。

石丸:
今の話は、山頂から見た雲海ですよね? 上から下を見ている。ところが、その雲海の中にいるとわからないじゃないですか?

猪熊:
日本の場合は、山小屋にライブカメラがあったりして、ライブカメラで天気をチェックして、「上、晴れているな」と知ることができますが、ヒマラヤだと、それがわからないので、雲の形で、だいたい高さがわかります。低いところに浮かんでいる雲は、上は晴れているはずなので、例えば“層積雲(そうせきうん)”という雲があるのですが、それは低いところの雲なので、山の上は晴れていることがほとんどです。そういう雲の種類で判別したりしますね。

山の天気予報は、知恵や経験での判断が必要

石丸:
今は山専門の気象予報士をやられていますでしょう? データとかで出てくるじゃないですか? ああいうものを利用しているわけですよね?

猪熊:
利用もしています。今の天気予報は、気象庁が持っているスーパーコンピューターで計算したデータを使って、自動的に天気予報を配信しています。なので、気象予報士がいちいち考えて出している予報はちょっと特殊な予報で、皆さんが使っているお天気アプリとかは、自動計算で作られているものなのです。

山の場合は、コンピューターで表現されている地形は、実際の地形と全然違います。山の天気は、地形の影響をすごく受けるじゃないですか? だから、コンピューターの計算結果をそのまま使ってしまうと、予報精度が大きく落ちてしまいます。うちの場合は、山の地形を予報士が考えるのと、過去にずっと経験してきた天気があるので、コンピューターが外しやすい天気があって、コンピューターにもクセがあるんです。
「こういうときは外れるね」とか、「こういうときは、このまま出していいね」というのを、朝のミーティングで共有して修正しながら、そして、地形のことをイメージして、山の場合は「湿った空気がどこから入ってくるのか?」とか、「雲がどこでできるか?」によって、同じ北アルプスとかでも、燕岳(つばくろだけ)では晴れているのに、槍ヶ岳(やりがたけ)は曇っていることがあります。それをイメージしながら、日々出しています。

山本:
コンピューターでは補いきれないところを、人間の知恵や経験で判断をする。

猪熊:
そうですね。

石丸:
日本で何か所ぐらいの山の発表を?

猪熊:
今は330の山で。

石丸:
そんなに!

山本:
330座の何を発表していらっしゃるのですか?

猪熊:
天気、気温、風の強さ、風の向きとか、さらに、60の山に関しては「スペシャル予報」という、細かい気象予報士の解説とか、警戒事項といいまして、どういう気象のリスクがあるのか(発表しています)。

石丸:
低体温とか雷とか。秋は結構ありましたよね。

猪熊:
10月は多かったですね。そういったリスクについて、具体的にお伝えしています。

山本:
さまざまなデータや過去の経験を踏まえて、登山者に判断材料を提供するということになりますが、それを今回、ご自身がヒマラヤの現地に行って予報したと! ヒラヤマのお天気も、これまでは遠隔でいろいろ指示を出してきたのですか?

猪熊:
そうですね。

石丸:
じゃあ、パソコンを持って登っていたのですか?

猪熊:
今回パソコンは、ベースキャンプまでは持ち上げました。それより上に関しては違う方法で。

石丸:
その話は9時台で聞きたい!

山本:
念願がかなって、ご自身が直接登りながら予報。どんな発見があったのか9時台でお聞きいただきましょう。


番組では、写真や番組へのメッセージの投稿をお待ちしております。また、最新の放送回は「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでお聴きいただけます。ぜひ、ご利用ください。

石丸謙二郎の山カフェ

ラジオ第1
毎週土曜 午前8時05分

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【放送】
2023/11/18 「石丸謙二郎の山カフェ」

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